第四章①
第四章
元々、朝のアルメンダリスとの取引のような他商会との交易品の商売は、もっと長くかかっていいものなのだ。それが、近年イスバニアやポルトギアの植民地からガレオン船の倉庫いっぱいに積んでくる金や銀などの貴金属、香辛料が大量に持ち込まれるにつれ、いち早くその儲けを得たい大商人や国王たちの手によって次第に交易品の売買が簡略化されることになった。
以前の様に同商会の間での多くの時間をかけて行う計量や目を覆うような契約書の類はほとんど必要なくなり、貿易は積み荷の出し入れと、契約内容を確認するための紙一枚に加え、自分の名前と所属する商会を書いた紙を渡すだけで済んだ。この方法に変わると、一回の商談にかける時間がぐっと短くなり、より多くの時間を別の商売や事業に費やすことができるようになった。
他商会との間でもこの方法の一部は適用され、昔と比べると他商会との取引も大きく簡略化されてきてはいる。本来、商売敵である他商会との取引でもこの方法が適用されたことから考えるに、いかに国王がその利益を懐に入れたいかがよく分かる。
勿論、簡単になったのを悪用して、損をしてもいないのに商会から賠償金を取ろうとする悪党も出てきた。しかし、それらへの対処は取引の際に交換する紙に押す商会の印に特殊な塗料を使うことで対処できた。
新しい法ができると、それを利用して悪事を働こうとする者がいる。別の誰かが大きな儲けを得たならば、それを盗みたい、あるいはその恩恵にあずかりたいと思う輩がいるのは当然のことだ。人より多く利益を得たい、富を得たいと思うのは人間の性だからだ。それをとがめるのは教会勢力しかいない。ただ、いずれにしても、ある程度は軽減できる対処法がある。
ただ一人を除いて。
「ネウさん、もう少し落ち着いて食べられては?」
「……ハグッ……んぐ……」
「ライサの言うとおりだ。もう少し落ち着いて食ったらどうだ? 早く食べても今お前の目の前にある肉が増えるとは限らないぞ」
誰か、この大飯ぐらいの吸血鬼の対処法を教えてくれないだろうか。
最近増えてきたため息を吐きながら、クラインはネウに向かって叱るように言ったが、本当に美味しそうに笑顔で肉を頬張るネウは聞く耳すら持ってくれない。まあ、肉はこんなに幸せそうに食べられたのだからさぞかし幸せだろう。だがクラインは幸せではない。
「折角儲けたお金が、ネウさんのおかげで消えてしまいそうですね」
「流石に、そこまでの金にはならないだろうがな」
昼にアルメンダリスとの取引を終えたクラインは、予測よりも儲かった金の一部を使ってネウに肉料理を食わせてやろうとこの酒場に案内した。ネウがガーボヴェルディの肉料理に興味を示していたのもそれを後押しした。
ごーるでんうぃーく




