第三章㊷
高校の桜が全部散って葉っぱになりました。
剣道も勉強も難しいです。
だが、常に自由を追い求め、何処の勢力にも属さない海賊たちは、貨幣の鋳造による重罪などみじんも気にせずに通貨を作ってしまう。
作り方はごく簡単で、奪ってきた銀貨や金貨を勝手に溶かしてもう一度、金塊や銀塊のような形に鋳造するだけだ。海賊たちはそうやって勝手に作った海賊通貨を、博打や装備を整えるための資金に使う。南方大陸やシンド、新大陸では、船を購入したり、停泊して休んだりする街で西方の貨幣が出回っていないことが良くある。つまりは金属のまま流通している地域が多くあるので、外洋で活動する海賊にとっては西方の通貨として使うよりも現地でも変わらない価値を持つ貴金属そのものとして使った方が都合がいいのだ。
通常であれば、この海賊通貨は持っているだけでも海賊と関わりがあると疑われてたちまち軍隊に生活品や交易品に至るまで、ありとあらゆる持ち物を押収させられたうえで牢獄にたたきこまれてしまう。
今更だが、それも「通常であれば」の話である。
別に、一時的に保管していても海賊占領下の街で使い切ってしまえば何ら問題は無い。
「海賊銀でお支払い願いますか?」
「ええ、いいですよ」
アルメンダリスはサルタナの袋をクラインに手渡し、先程サルタナの計算式をつづった紙にもう一度別の計算式をつづった。
ほどなくして、アルメンダリスはペンをもとの位置に戻して紙を懐にしまってから、難しそうな口調で口を開いた。
「海賊銀になりますと、五十五万六千五百枚になります。ですが……」
「いや、別に海賊相手に取引しようとしてるわけじゃないんです。この街で次の交易品を仕入れるのにも海賊銀が必要ですし、必需品を買うのにもそれでないといけないでしょう? だから、海賊銀が必要なんです」
クラインは淡々とリモーネ銀貨を海賊銀に換える理由をアルメンダリスに説明した。仮に、次の交易品をこの町で仕入れ、乗組員の給料を貴金属や装飾品などの代用品で支払い、生活品を取り揃えて食料を購入し、万が一、端数が出た場合はそこいらに居る乞食や教会を失った宣教師に恵んでやれば十分だと考えていた。
クラインの理由に納得したのか、アルメンダリスはほっと胸をなでおろしたように難しげな口調から不安を払拭した声で答えた。
「ああ、そうでしたか。なら、安全ですね。ですが、くれぐれも街の外に海賊通貨を持ち出さないようにしてくださいね。やはり昨今の情勢を見ても、海賊の取り締まりは一層強化されていますから」
「分かりました。お気遣い、感謝いたします」
クラインはアルメンダリスに向けニッコリと小さな笑みを向け、アルメンダリスが天秤のあった場所に羊皮紙を置いた。
「銀貨五十五万六千五百枚は当然ながら、証書で良いですよね?」




