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幻想見聞録  作者: 藤宮周水
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第三章㊳

「クラインさん、このサルタナはちなみにどこで仕入れになられました?」


「ポルトギア王国領、セウタのアルベルト商業同盟の支店です。それでこちらが、その証書になります」


 クラインはその質問を投げかけられると同時に、懐から羊皮紙とも似つかない黄みがかった証書を差し出した。


 アルメンダリスは差し出された証書を手に取って、紙面に書かれた文字の羅列をまじまじと見つめ始めた。


「確かに、アルベルト商業同盟を利用しているようですね」


「この時期にサルタナはどこに行っても高い値段で売られていましてね。なるべく安い値段で仕入れようと、同盟のセウタの支店を利用しました」


 そうクラインが苦笑しながら会話をつなぐと、アルメンダリスもわずかに唇の両端を引き、笑った。


「セウタでのうちの商会の売値は、高かったですか」


「わずかに、ですがね。しかし、商売ではそのわずかが命運を分けます」


「まさにその通りですね」


 アルメンダリスはクラインに大きくうなずいて見せた。


 古今東西、商人ならば誰しも駆け出しのころ、一度は自分の求める交易品を安く取り扱っている都市や村を探し続けているうちに国中を歩き回ってしまっていた、なんてことがあるはずだ。


 クラインもまだ船を手に入れていない駆け出しの商人だった時はそれを何回も繰り返していた。だが、それは愚策であるのは商売活動を始めて二か月もすればおのずとわかってくる。


 なぜなら、安値で取引している店を探して国中を奔走するよりも、そこそこの値段で取り扱っている都市の商会で値下げ交渉をする方がはるかに効率がいいからだ。国中探し回っても場合によっては一リモーネも安くならないこともあるが、話術にたけていれば一割も値を下げることができる。


 アルメンダリスがその話に反応したということは、自分も少なからずそのような経験をしたことがあるのだろう。尤も、アルメンダリスはクラインよりもはるかに長い間商人として生きているから、そんな苦労はもうとっくの昔のことになってしまっているのは明瞭だ。


「そうですか。物は安く仕入れて高く売る、それが商売の基本ですからねえ」


「ええ。ですから、このサルタナを高く買ってくれるとありがたいのです」


「こちらこそ、こんなにいい質のサルタナです。出来るだけ安値で買いたたかないと、やっていけません」


 細身で頬骨が出るほどげっそりしたアルメンダリスだが、その言動と風格は、多くの人間を相手に巧みな交渉術で応じる大商人のそれと何一つ変わらない。


今日昔のメンバーで食事会に行きました。

楽しかったです。

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