第三章㊱
言葉だけなら、殺伐とした言葉の羅列だが、両者の表情には何処か愉しげな笑みがたたえられている。
つまり、そんなやりとりがつまらないわけでは無いということだ。以前よりも、会話に楽しみが持てるようにはなった。小刻みな呼吸が聞こえるせいで、すぐ後ろでネウが笑っているのが分かった。
だが、常に楽しんでいられるわけでは無い。
クラインがネウに対して一番注意しなければならないのは、機嫌を取ることだ。ネウは、吸血鬼を目の当たりにしたときでもとっさの行動でありながらネウを恐れない行動をとった自分を見込んで、この前の夜にネウに食い殺されるはずだった自分を助けたのだ。大商人相手のご機嫌取りなら比較的簡単だが、ネウの場合は難しい。
ネウの機嫌が悪くなり、クラインにネウが失望してしまえば、クラインは次の日の朝日を拝むことはできない。
ネウのいつかの晩飯が自分になるのだけは、是が非でも避けたかった。
不機嫌なネウの機嫌を直せる方法があるとすれば、今日の儲けでネウの食事をいくらか多くせねばならないという事。
「あ」
「ひひっ」
クラインが小さな声を漏らすと、ネウが背後で爆発しそうなくらい大きな笑いを全力で抑えた、か細い笑い声を出した。
ネウが空腹を訴えて機嫌を悪くしたのが、クラインがこの思考に行きつくのを計算した上での作戦だったことに今更気が付いた。
後ろを振り返らずとも、ネウが作戦成功、と計算高い笑みを浮かべているのが分かった。
「こちらです」
クライン達よりも先に二階へ着いたアルメンダリスに案内され、クライン達は階段の踊り場を抜けたすぐ右の部屋に足を踏み入れた。
中は豪華、と言う言葉をそっくりそのまま絵にしたような煌びやかな部屋だった。しかし、大きさは普段の商談室と変わらず、ソファとテーブルで部屋の中が埋まるほど。
それにしても、ただの商談室であるのに、ここまでの装飾を施す必要があるのか。本来この部屋を使用する商人の階級の高さが身にしみて分かった。
壁にはソファの後ろに一枚ずつ、海を描いた風景画が金の額縁に収まり、床に敷いてある絨毯は見たこともないような刺繍がこれまた高価な金を織り込んだ糸で繕われていた。机は流石にどこかの貴族の応接室の様に大理石とまではいかなかったが、高価な原木を加工して作られた机であることは見て分かった。
外の貧相な外見とは打って変わって、葡萄畑の領主の館よりも贅沢だ。
ディズニー行ってきました!
ミスティックリズムはやっぱりイイデスネ!




