第三章㉟
ライサの支援があったが、クラインは後ろを振り返らずに、皮肉を叩いた。
「アルメンダリスは一見優しそうに見えても、あいつは抜け目がないわけじゃあないからな。商売の話になるといつどこに罠を仕掛けてくるか油断ならない相手だ」
ネウはやや顔を伏せがちにしながら何故かクラインが小声で言った言葉に対してあまり好意的ではない態度を取った。自分から話しかけてきたのに、その態度はなんだと問い詰めたくもなったが、そんなことで時間を食うわけにはいかない。
大事の前の小事と言うし、クラインはそれ以上会話をつづける気にはならなかった。ただ、一つ気がかりなことがその考えの一部を隠した。
何かネウの気に触れるような事でもしたのか。という可能性を危惧していた。もし、ネウが思ったよりも退屈だったから早く終わってほしいとでもネウが思っているのなら、より多く儲けられないとお前の食糧すらも買ってやれないと説明すれば、ネウの態度もいくらかは持ち直すだろう。
「……ふぅん」
「言いたいことがあるなら、言ってくれるか? 今俺にできることなら可能な限り善処しよう」
「善処、ねぇ」
ネウはさしてつまらなさそうにぽつりとつぶやいた。
もし万が一にでも、ネウがアルメンダリスの思考を読み取っていたのなら、それは間違いなくクラインにとって不利な事なのだろう。自分に分からない情報があるのなら、それを知りたいと思うのは自然なことだ。ましてやそれが自分の手に届く範囲にあったのならば、尚更である。
それを聞きださずして、夜の安眠が約束されるほどクラインは無感覚ではない。
クラインがそんな風に思案しているのにもかかわらず、ネウは相変わらずの雰囲気で吐く様に言い放った。
「……お腹、減った」
「我慢しろっ」
「あらあら」
いったいどんな内容なのかと心底危惧していただけに、この脱力感はネウへの怒声となって消え失せた。ライサは笑って済ませているが、クラインは笑って済ませそうにはない。
「この商談の結果次第で今日の食事の質が決まる。だから、ちゃんと終わるまで我慢しろ」
「むぅ」
流石に怒鳴ったのは言いすぎだったと、クラインはほぞを噛んだために、優しく、詳しい言葉に言い換えて訂正した。ネウは、後ろを振り返ったクラインを上目づかいに睨んだが、すぐに視線を逸らした。
「あんまりお腹が空けば、貴方を食べちゃうわよ」
「せめて、商談が終わってからにしてくれ」
今日から二日間、ディズニー行ってきます。




