第三章㉞
「海賊どもにこの町を占領されてから、めっきり客が来なくなってしまったのです。他の商会の支店や商館も次々に破壊されていきまして。残っているのは多額の金を払う事の出来た此処だけ。従業員も何人と殺されてしまいましてね……だから、別に使っていただいても、何の問題も起きないのですよ」
冗談っぽく口を歪ませて笑うアルメンダリスだったが、あながち内容は冗談で済むようなものではないことは確かだ。
「つまらないことをお聞きして、申し訳ないです」
「いやあ、別にお気になさらないでください。今日は、商売の話をしにこんなところまで足を運んでくださったのでしょう? さあ、本題へ移ろうじゃないですか。商人の本分は商談でしょう。同胞も、死を悔やむよりは儲けを、と考えていましょう」
クラインは過去の傷を蒸し返してしまったことを謝ったが、アルメンダリスは相変わらず、笑顔で接してくれた。それは勿論、アルメンダリスがこんなことで立ち止まるような人間ではないし、こんなところで相手を怒るのは商人として非常に大人気ないと考えるせいもあるが、その底辺にはクラインの配慮への感謝があったからなのだろう。
「それにしても、まさか、海賊に占領されているとは思いもしませんでした」
「本当にそうです。町の様子を見られましたか? 酷いものです」
あの、無残に破壊された城壁と廃墟同然の街並みを見れば、どんな略奪や破壊行為が行われたのかは一目瞭然だ。
「できれば夢であってほしいですな」
「元々、ポルトギアは軍事国家ではないですし、仕方ありませんよ。植民地を経営するより、国家間での貿易の方が儲かる国です。ですから、流入する金銀の量なら、他国の比ではありませんよ」
ポルトギア王国は探検航海で発見された国々との貿易によって繁栄している国であり、隣国のイスバニア帝国の様に植民地を広げられないのには大きな理由がある。それは、圧倒的に人口が少ないためである。人口が少なければ入植者も少数になってしまうし、経営も困難になる。よって、貿易で儲けるしか方法が無かったのだ。海賊たちも、それを知ったうえでポルトギアの数少ない植民地に攻撃を仕掛けている。
「だから海賊どものいいカモになっているんですよね……」
「そうなりますね。ですが、そんなことは軍隊か国王に任せ、我々は我々のできることをしましょう」
クラインの言葉に頷くと、アルメンダリスは三人に背を向けて二階への階段をゆっくり上がっていった。
続いてクラインも、アルメンダリスの後を追って階段を上がろうと一段目を踏んだ。その時。
「彼は貴方とは違って、優しいわね」
「それはそれは、ご迷惑をおかけしました。お嬢様」
「主人様も十分優しいですよ?」
「あら、そうなの」
ライサの支援があったが、クラインは後ろを振り返らずに、皮肉を叩いた。
卒業式終わりました!
高校も受かって、うれしいです!




