第五章⑫
ポルトギア・イスバニア両国が迷信に満ちた未知の海洋を切り開き航路を開拓して、帆船が世界中の海を行きかう大航海時代となった今、人々の生活が植民地からもたらされる物産によって豊かになるにつれて金や銀、宝石などのそういった贅沢品の需要も増えてきている。
そして新大陸の原住民などは大量の金を持っていることが多く、しかもその価値をあまり理解していないために、西方でただ同然で作られるガラス玉や布などと引き換えに、莫大な黄金を手に入れることができる。
これから南に向かうのに貴金属や宝石はあまりいい儲けにはならない。なぜなら普通の航海であれば、銅等の貨幣用の金属やマスケットなどの銃器、ガラス玉などを持って行くのが普通だからだ。
だが、それは単に利率の問題で、ただで海賊からふんだくった品物にはそれを売って得られる儲けしか出ない。
「……いや、皮算用も甚だしい。これからの儲けを考えると興奮するが、まずは此処から脱出することが先だな」
探検家たちが自分たちによってこれから発見されるであろう黄金郷や謎の帝国に妄想を抱くことが一種の楽しみであるように、商人もこれから自分が得られる利益を想像することが娯楽の一つとして確立している。
クラインの場合は考える暇さえあればこれからの金儲けの事ばかりを考えていた。
ところが最近はそんなことなど、一人になる機会でもなければそんなことは考えられないようになってしまっていた。
ライサやネウの事で、思考回路が埋まる。ライサに休みを与えようか、もう少しだけ働かせてから休憩させようか、とかネウにどうやって見つからずにこっそりとジャム漬けを食べるか、とかだ。
このわずかな間に、たくさんの事が起こったものだ。まだネウと出会ってから一月と経っていない。一気に大商人の仲間入りを果たすほどの儲けを得られるはずが、海賊に騙されて牢獄にぶち込まれる。
そしてここから、また大きく浮上するわけだ。製作時間一か月の演劇にしては上出来ではないだろうか。
「これが観客のいる演劇で、俺がその舞台で踊る役者なら、最大限楽しく踊ってやろうか。俺は一度舞台に上がったら幕が下りるまで踊り続けるぞ」
そう言い放ち、クラインは鉈の一太刀に扉を切りつけた。
ガッ、という木こりが木を切るような音がしたが扉は壊れず、鍵も閉まったままだった。しかし、切り付けた場所は木がささくれており、あと数回鉈で切り付ければ錠は外せそうだった。
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