第五章⑪
この島から出るのにどのみち海賊を討伐せねばならないのなら、依頼を受けて、成功した時に報酬が得られる方がいい。リスクが同じならば、受けない手は無い。
「しかし、いや……良いのですか?」
アルメンダリスは本当に忍びない、と情けない声でクラインに首領の討伐を受諾する旨を確認した。
「ですが、もし私たちが成功した場合、貴方にはこうしてほしいのです……」
そして、そこでクラインは聞こえるか聞こえないかの声で低く言った。上手く海賊から脱出できた場合に、海賊たちにもう一泡吹かせるための一つの布石だ。
「…………できますか?」
「勿論です。経済力で言うなら商業同盟には少なからず劣るとはいえ、私達はポルトギア王国軍ですから」
「助かります」
自信に満ち溢れたアルメンダリスの言葉を聞くと、クラインはほっと胸を撫で下ろした。
やはり、どんな時も、国家の保護は自分に絶大なる安心をもたらす。アルメンダリスが、自信を持って言ってくれたことも、それを後押しした。
クラインはアルメンダリスに布石の内容を伝えると、壁から離れた。
「あと、これも使ってください」
不意に上か、らもう会話は終わったとばかり思っていたアルメンダリスから再び声が掛かった。クラインは瞬時に声のする方を見上げると、そこから何かが投げ込まれたのが見えた。
「……なんでしょうか、これは」
「時が来れば役に立ちます」
去り際にアルメンダリスが牢の中に投げ入れたのは、一枚の羊皮紙を丸めたものだった。これは今のところ何に使うかはわからないが、アルメンダリスの言う通り、時が来れば役に立つ代物なのだろう。
「幸運をお祈りしていますよ」
「下手はしません」
アルメンダリスはそう言い残すと、カツカツと革靴を鳴らしでいずこへと去って行った。
クラインはしばしアルメンダリスのくれた鉈を眺め、これからの手順を頭の中で考えた。
まず、ドアを破った後は左へ進み、二人と合流する。そして、ネウの力を使って海賊を屈服させる。
いや、それだけじゃないな。こんな目にあったんだ。もっと賠償として色々とふんだくってもいいのかもしれない。海賊ならば、他の島や都市で略奪してきた金銀財宝をたんまりともっているだろう。それを何割かもらうのもいい手かもしれない。
もう三月ですね。




