第五章⑩
クラインだって海賊の罠にはまってこの町に来てしまったので、同じ海賊によって被害を受けた、という意味で、境遇は同じだったのかもしれない。ただ、その時にクラインはまだ騙されていると気付いておらず、まだ被害を受けてはいなかった。そこが大きな差だったのだろう。
「友人を、ましてや恩人をこうして半ば私の罪滅ぼしに、つまりこの町を奪還するためにクラインさんに協力を仰ごうというのは、自分の勝手が過ぎると、言い方は悪いですが、「利用」することになる……と、葛藤に苛まれました。ですが」
もう、クラインさん達に頼むしか方法が無かったのです、と。アルメンダリスは語った。
「分かりました。しかし、そう気に病むことはありません。私だって、海賊の名がした偽情報にまんまと釣られてこの島に来てしまいました。状況は同じです。ただ、私なら――貴方の、お力になれるでしょう」
クラインはアルメンダリスの様に向こうから襲いかかってきて、そこにいくらかのアルメンダリスの言う「失態」があったと考えても降ってわいた災難が降りかかって来たのではない。自ら首を突っ込み――いや、炎の中の栗を取ろうとし、その身を焦がしたのである。
そんな人間が何の力になれようか。そう、考えるかもしれない。ただ、何もできない、何もしない、できるはずがない、と。そんな風に現実に沿った、悲観的な言葉を与えるよりも――虚勢を張って、自信ありげに、自分の心に得体の知れない勇気を感じながら、こういってやる方が、よっぽど恰好が良い、のではないだろうか。
「では、私に何が出来るでしょうか」
「海賊を、打ち倒してほしいのです」
一瞬、クラインはアルメンダリスに、「助けてやるから危険な仕事を引き受けろ」と言われているのかと錯覚した。しかし、アルメンダリスが本当に悲痛な声で、絞るように声を出しているのに気付くと、その考えもいくらか薄れた。
「正直、全ては私の責任なのです。初めの侵攻の時も、もう少し早く首領が吸血鬼だという事に気が付けば……。私自身が、解決しなければならないのに、私はクラインさんに頼み込むことしかできない」
アルメンダリスは声を殺しつつ、クライン達に狩猟の討伐を頼んだわけを説明した。
「本当に、申し訳ありません。しかし」
「構いませんよ。貴方は私にチャンスを与えてくれました。その代償に吸血鬼の海賊の狩猟の討伐を依頼されるのなんか訳もありません」
クラインにしてみれば、これはもう一方的な話だ。何故なら、海賊を討伐するという事が即ちここから脱出する事なのだから。船も海賊に占拠されているという事は、どのみち海賊を討伐せねばこの島から出ることもかなわない。
段々と評価も増えてきて、本当にうれしいです。




