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幻想見聞録  作者: 藤宮周水
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第五章⑦


「ははは、確かにそうでしたね。私としたことが、とんだ妄言をしてしまいました」


「いえ、あなたにはそういった面があってもいいと私は思いますね」


 クラインが小さく笑いながら言うと、顔は見えないが、アルメンダリスもその言葉に応えて確かに笑っているのが分かった。


 上手く誤魔化しきれたか。若しくは既に気付いているのか。


 今はただ、気付いていてほしくないと心から願うばかりであった。

それにしても。


 アルメンダリスは何故この地下牢の存在や、その内部構造、海賊の情報まで知っているのか。


 クラインにはそれがどうも気がかりだった。まさか、アルメンダリスまで海賊の仲間なのではないか。そして、間違った道を教えて、こんどこそ絶望の中に唯一残った、希望という希望を奪おうというのか。


 クラインが聞くのも恐ろしかったが、聞かずにはいられない状況であったことは誰の目にも明らかで、誰であっても次の言葉は発していただろう。


「まさか、私を裏切ろうなんて考えていませんよね?」


「とんでもない。このご時世に、危険を冒してまで商品を運んでもらっただけでもクラインさんには感謝しているのに、そんなことができましょうか。商人の掟は数あれど、私はこれだけは必ず守ります。つまり、決して裏切ることは無い、と」


 アルメンダリスは大きく息を吸うと、クラインに自分の言うことを言い聞かせるかのように言い放った。


「「恩は恩で返す」これが私の信条であり、私そのものです。どうか、信用してください」


「……分かりました。何度か他人に裏切られたことがある手前、完全にとはいかないですが、貴方なら信用できます」


「ハハハ、それでも信用に足る人物として評価されるとは、光栄ですね」

 アルメンダリスは声の大きさを抑えて、くつくつと笑った。


「しかし、なぜ貴方はこの建物の内部構造をご存じなのでしょうか? この建物は、海賊たちが占拠していて、一般人は出入りできないはずです」


 今、クラインが一番アルメンダリスに訊きたかった事項だ。しばらくの沈黙の後、アルメンダリスの声が再び頭上から降って来た。


「……そうですね。この際だからクラインさんには申し上げておきましょう。実は私、ポルトギア王国兵でして」


 アルメンダリスはそう言うと、何かプレートのようなものを鉄格子の前に置き、日の光でプレートに描かれた図柄が反射してクラインに見えるように角度を調整した。


 太陽の光に照らし出された図形は、ポルトギア王家の象徴である十字に並べられた蒼い五つの盾、その周りを囲む金色の七つの城が描かれていた。それは紛れもなく、ポルトギア王国の象徴である。


すみません、一週間遅れてしまいました。


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