悪役令嬢の序列社会
国を滅ぼす悪役令嬢シリーズの1話目です。
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5話分をまとめた連載版も投稿しました。
「国を滅ぼす悪役令嬢」
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「今日も! アラン様と一緒に図書室にいたのよ!」
また始まった…。ジェーンはうんざりした。
ここは王立学園のサロン。
今日のお昼休みも、クラウディアの愚痴を聞くだけで終わりそうだ。
クラウディアは公爵令嬢であり、その婚約者は、王太子であるアランである。
婚約してから3年、クラスは違うけれど、休み時間にはお互いのクラスに
行き来して、それなりに親しくしていたと思う。
しかし最近、マチルダという転入生が来てから、アランは彼女に
つきっきりになってしまい、クラウディアは、自分の婚約者に
話すきっかけさえつかめない毎日を送っているのだ。
「聖女とはいえ、もとは平民なのに…! アラン様がわざわざ直々に、
お世話をする必要があるのかしら?」
「マチルダ様は、貴重な聖魔法の使い手だから…。陛下もおっしゃって
いたじゃない。『この国を見限ってほかの国に行かれたら困るから、
不自由がないよう丁重に取り計らうように』って。殿下はその言葉に
忠実に従っているんだと思いますわ」
きのうも言ったことだが。
「それにしたって…、こう毎日というのは、図々しくはないですかしら?
少しは遠慮してもよくはございません?」
「でしたら、わたくしがマチルダ様に『少しは遠慮なさい』と
忠告してまいりましょうか」
「それはダメですわ! わたくしとジェーン様が仲良しであることは
みなさまがご存じですもの! わたくしが頼んだと思われてしまうわ!
そして『マチルダ様をいじめている』という噂になって、
卒業パーティーの時に断罪されて国外追放になってしまいます!」
「その、卒業パーティーのくだりが、何度聞いても理解できませんが、
わかりましたわ、よけいなことは致しません」
「でもでもやっぱり腹がたつんですのよー!」
このように、何の解決策も進展もないまま、ジェーンの昼休みは今日も
つぶされたのであった。
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「ああああああもう、いいかげんにしてよーーーー! このやりとり
何度目!? 毎日毎日ぐずぐずぐずぐず! 自分からは何も行動を
起こす気がないのに、愚痴だけ垂れ流すのやめてよーー!」
お嬢様は今日もストレスMAXだ。
公爵家のクラウディア様が愚痴を垂れ流す相手なんて、侯爵家である
うちのジェーンお嬢様ぐらいしかいないのかもしれないけれど…
「お茶が熱い! 淹れ直して!」カップを壁に投げつけられた。
ガチャーンと音がしてカップが割れる。床はびしゃびしゃだ。
「申し訳ありません! ただちに…!」とぺこぺこと頭を下げ、
割れたカップを拾い床を拭く。
あああもう嫌だ嫌だ。毎日毎日、あのお嬢様の八つ当たり!
紅茶が熱いのはいいことじゃないの! ぬるかったら「ぬるい!」
って怒るくせに!どうしろっていうのよ!
いらいらしたので、廊下の掃除をしていた下男に「これも
片付けといて!」と割れたカップを投げつけ、窓枠にすっと
指をすべらせ、ほこりで汚れた指を見せつけ、「なにこれ?
これで掃除したつもり? 能無し!」と、ののしってやった。
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「お前は嫁いびりの姑かーーーー!」
またか…。マリアはため息をついた。
ここは、マリアが働いている酒場。
学園にほど近いので、職員たちが気軽に立ち寄っていく。
彼は今日も、生徒のお付きの侍女にいびられたらしい。
「いつもいつも俺を見下しやがってー! おまえだって、人に仕える
立場のくせに! しかもたかだか男爵じゃねーか! そんなん、
金さえありゃ俺だってなれるわー!」
「金がないからなれないけどな」
近くにいた顔なじみの客がそう言うと、店がどっとわいた。
「わかってるけど! わかってるけどむかつくんだよー!
マリアちゃんなら、俺の気持ちわかってくれるよねー?!」
わんわん泣き出した。ああうっとおしい。
まだ閉店時間にはちょっと早かったが、面倒だったので
「わかったわかった、さあもう店はおしまい。帰って帰って」と
客を追い出し、片付けをすませ、家に帰る。
帰ると、まっすぐにベッドに向かい、
「うるせーーーーーーーーんだよ! この酔っ払いが!!!
毎日毎日同じ話! そんなに嫌なら転職しろよ! だいたい、
ただの居酒屋の従業員になぐさめてもらおうとすんなよ!
ここはキャバクラじゃねーんだよ!!」
と叫んで、枕元のうさぎのぬいぐるみにボスボスとパンチする。
毎日パンチされているので、外側はぼろぼろで、中の綿もはみ出ている。
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ぬいぐるみのうさぎは、神に祈った。
「神様、ぼくは何もしていないのに、どうして毎日殴られるのでしょう。
どうかぼくを助けてください。もう殴られないように、原因を元から
断ってください」
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その純粋な祈りは神に届いた。
神はマリアのもとに現れ、「そなたはどうしてぬいぐるみを殴るのか?」
と尋ねた。
マリアは
「うちのお客さんが毎日毎日酔っぱらって管を巻くので、
ストレスがたまるからです」
と答えた。
そこで酔っ払いのもとに現れ理由を聞くと、
「同じ職場にいる侍女が毎日自分をののしるからです」
侍女「お仕えしてるジェーン様が毎日私に八つ当たりをするからです」
ジェーン「仲良しのクラウディアが、毎日同じことを愚痴るからです」
クラウディア「アラン様とマチルダ聖女の仲が良くて嫉妬するからです」
そしてとうとう、アラン王子と聖女マチルダの前に神が現れて尋ねた。
「どうして君たちは仲良しなのか?」
アラン「聖女の力は貴重だから、大事にしていただけです」
マチルダ「私が…こんな力を持っているせいでしょうか…?」
・・・・・
ということは、神のせい?
神が、特別な力をこの少女に与えたことが、原因?
原因を突き止めた神は、聖女の力を返してもらい、「私が原因の元であった。
悪かった」とうさぎのぬいぐるみに謝った。
聖女はもとの平民に戻り、クラウディアとアランは婚約者同士として
それなりに幸せになり、ジェーンも穏やかに過ごせるようになり、
侍女も、下男も、マリアも、八つ当たりの少ない日常に戻った。
しかし、本来ならば、聖女が救うはずだった、数年後の魔物大発生で、
この国は滅びるのであった。
ほんとは、「悪役令嬢のバタフライ効果」ってタイトルで、
もっと突拍子もない方向に変わる話を書きたかったのに、
全然変わらなかったのでこうなってしまいました。
続編として、滅びたあとに巻き戻りみたいな形で、いつか挑戦したいです。




