第9話 星の庭、伝説になる
戦いが終わったあと。
森には、静かな風が吹いていた。
巨大なボスだった 黒獣グラルガの体は、ゆっくりと光の粒になって消えていく。
キラキラとした光が空に舞い上がり、そして消えた。
《フィールドボス討伐》
《報酬を獲得しました》
ポン、ポン、ポン。
パーティ全員のウィンドウに報酬が表示される。
「お、ドロップきた」
ガルドが言う。
「装備素材ね」
セリアがアイテムを確認する。
「黒獣の牙、毛皮、魔石……」
そのとき、リリィが小さく声をあげた。
「わ、レア素材出てる!」
「マジ?」
全員が集まる。
リリィのウィンドウには、金色の枠のアイテムが表示されていた。
《星獣の核》
カイルが驚く。
「……それ、レアだぞ」
「えっ」
「ボス固有ドロップだ」
レオンが言う。
「武器進化素材」
「おぉ……」
ガルドが笑う。
「リリィ運いいな」
「えへへ」
リリィは照れる。
その横で、ユイは静かに庭を見ていた。
星花が、まだ輝いている。
夜の光を集めるように。
やわらかな青い光が、庭全体に広がっている。
「……きれい」
思わず呟く。
そのとき。
ピロン。
通知音が鳴った。
ユイの視界に、ウィンドウが開く。
《フレンド申請 127件》
「え?」
もう一つ。
《メッセージ 243件》
「えぇ!?」
思わず声が大きくなる。
レオンが笑った。
「来たか」
「な、何がですか!?」
カイルが自分のウィンドウを見せる。
そこには——
《掲示板トレンド》
1位
星の庭ヤバすぎ
2位
庭師のバフ強すぎ
3位
黒獣グラルガ瞬殺動画
「……」
ユイは固まった。
「え?」
ガルドが笑う。
「動画もう上がってる」
セリアも苦笑する。
「仕事早いわね」
カイルが動画を再生する。
そこには、さっきの戦いが映っていた。
ディンがボスを受け止め。
レオンが剣を振るい。
カイルの魔法が爆発する。
そして。
画面の端に。
星花の庭が輝いている。
動画コメントが流れる。
「このバフ何?」
「庭からバフ飛んでない?」
「庭師チート?」
「この庭どこ?」
「場所教えて」
「このパーティ誰?」
「守護騎士みたいで草」
ユイは顔が真っ赤になった。
「わ、私の庭が……」
ミレアが微笑む。
「有名になったわね」
ナイトが短く言う。
「なると思ってた」
そのとき。
森の入口の方から声が聞こえた。
「ここか?」
「星の庭って」
「動画の場所」
プレイヤーたちが集まり始めていた。
五人。
十人。
どんどん増えていく。
「うわ」
ガルドが笑う。
「観光地」
セリアがため息をつく。
「もう隠せないわね」
そのとき。
レオンが一歩前に出た。
プレイヤーたちが近づいてくる。
「すみません!」
「ここ星の庭ですか!?」
「動画の庭師って誰!?」
レオンが静かに答える。
「庭師は」
そして後ろを見る。
ユイ。
「この子だ」
全員の視線がユイに集まる。
「……」
ユイは固まった。
「え」
次の瞬間。
「うわあああ!」
「本物!?」
「庭師さん!?」
「バフください!」
「フレンドお願いします!」
大騒ぎになった。
ユイは完全にパニックだった。
「む、無理です無理です!」
レオンが笑う。
そして言った。
「落ち着け」
その声には、不思議な威圧感があった。
プレイヤーたちが少し静かになる。
レオンは言う。
「この庭は」
星花を見た。
そして。
ユイを見た。
「俺たちが守る」
ガルドが笑う。
「お、言った」
セリアが肩をすくめる。
「そうなるわよね」
ディンが盾を立てる。
ドン。
まるで門のように。
ナイトは木の影に消える。
バルクは槍を持つ。
ミレアはユイの隣に立つ。
リリィはスライムを抱く。
カイルは魔法陣を浮かべる。
アッシュは静かに剣を抜いた。
そして。
レオンが言った。
「星の庭」
「守護騎士」
「十人」
その言葉は。
数分後。
掲示板の新しいスレッドタイトルになる。
『星詠みの庭師と10人の守護騎士』
こうして。
星の庭は——
ゲーム内で最も有名な場所の一つになった。




