第7話 10人まで、あと一人
星花が三本、静かに光っている。
草原の中央に広がる、小さな庭。
そこには今――
八人のプレイヤーが集まっていた。
騎士レオン。
魔導士カイル。
双剣使いガルド。
弓使いセリア。
槍使いバルク。
ヒーラーのミレア。
暗殺者ナイト。
そして。
星詠みの庭師、ユイ。
ユイは改めて周りを見渡した。
(なんでこんなことになってるんだろう……)
昨日ログインしたばかりの初心者だったはずなのに。
気付けば、強そうなプレイヤーに囲まれている。
ガルドが笑う。
「いやー」
「いい場所見つけたよな!」
星花の光を浴びながら言う。
「バフ三つってヤバいぞ」
バルクも頷いた。
「戦闘前の準備場所として理想だ」
セリアは弓を整えながら言う。
「狩り効率も上がりそう」
ユイは少し遠慮がちに聞いた。
「あの……」
「なんだ?」
レオンが振り向く。
「皆さんって……そんなに強い人なんですか?」
その質問に、少し沈黙が流れた。
そして。
ガルドが吹き出した。
「レオン!」
「まだ言ってないのか?」
「別に言う必要ない」
レオンは肩をすくめる。
カイルが淡々と言った。
「ランキング」
「上位」
ユイは目を丸くする。
「ランキング!?」
ミレアが笑う。
「この人たち有名だよ?」
「えぇぇ……」
ユイは完全に固まった。
そのとき。
セリアが遠くを見た。
「来るわね」
「え?」
森の向こうから。
二人のプレイヤーが歩いてくる。
一人は――
大きな盾を背負った男。
重装鎧。
堂々とした体格。
もう一人は。
白いローブを着た女性だった。
「お、来た来た」
ガルドが手を振る。
「ディン!」
盾の男が近づいてきた。
「ガルドか」
落ち着いた声。
「騒がしいと思ったら」
星花を見る。
「これか」
《星花の祝福》
「……なるほど」
ディンはゆっくり頷いた。
「防御も上がるな」
そしてユイを見る。
「庭師か」
「は、はい」
「いい庭だ」
それは静かな称賛だった。
ガルドが言う。
「ディンはタンク!」
「盾役!」
そのとき。
「ほんとにすごい庭ね」
柔らかな声。
白いローブの女性が星花を見ていた。
長い金髪。
優しい目。
彼女は手をかざす。
淡い光が広がった。
「精霊の気配がする」
ユイが驚く。
「分かるんですか?」
「少しだけ」
女性は微笑んだ。
「召喚士のリリィです」
「よろしくね」
優しい挨拶だった。
その瞬間。
ガルドが叫ぶ。
「よし!」
「これで!」
指を折って数える。
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
「10!」
そして笑った。
「揃った!あいつ、まだ来ないけど」
ユイははっとする。
数える。
ユイ
レオン
カイル
ガルド
セリア
バルク
ミレア
ナイト
ディン
リリィ
本当に。
十人いる。
レオンが星花を見た。
「これで完成だな」
「完成?」
ユイが聞く。
レオンは少し笑った。
「この庭」
「俺たち十人で守る」
その言葉に、ガルドが拳を握る。
「いいね!あとで、自慢しよ」
バルクも頷く。
「面白くなりそうだ」
カイルが言った。
「ちょうどいい」
「何が?」
レオンが聞く。
カイルは森の奥を指差した。
「ボス」
「え?」
遠くの森から。
低い咆哮が響いた。
ゴォォォォ……
空気が震える。
ミレアが言う。
「なにあれ」
セリアが目を細めた。
「フィールドボスね」
巨大な影が森の奥で動いている。
レオンは大剣を肩に担いだ。
「いいタイミングだ」
そしてユイを見る。
「庭師」
「はい」
「初陣だ」
「えぇ!?」
レオンは笑った。
「安心しろ」
そして言う。
「守護騎士が九人いる」
星花が光る。
その庭から。
十人のプレイヤーが、初めての戦いへ向かう。
そして。
この戦いが。
星の庭の名を、ゲーム中に広めることになる。




