第6話 庭、拠点になる
星の庭は、さっきまで静かな草原だった。
けれど今は違う。
「すご……」
ユイは目の前の光景を見て、思わず呟いた。
星花が咲く小さな場所の周りに――
六人のプレイヤーが集まっている。
騎士のレオン。
魔導士のカイル。
双剣使いのガルド。
弓使いのセリア。
槍使いのバルク。
そして。
星詠みの庭師、ユイ。
気付けば、さっきまで何もなかった草原はちょっとした集会所のようになっていた。
ガルドが言う。
「ここいいな!」
双剣をくるくる回しながら笑う。
「バフあるし、景色いいし!」
バルクも頷いた。
「戦闘前の準備場所にちょうどいい」
セリアは星花を見ながら言う。
「遠距離職にも恩恵あるのがいいわね」
ユイは少し戸惑っていた。
「あの……」
レオンを見る。
「ほんとにここ、拠点にするんですか?」
レオンは軽く笑った。
「嫌か?」
「い、嫌というか……」
ユイは慌てて手を振る。
「こんなすごい人たちが集まる場所になるなんて思ってなくて……」
そのとき。
カイルが静かに言った。
「そのうちもっと来る」
「え?」
カイルは掲示板ウィンドウを開く。
【スレ】謎バフエリア発見
書き込み数は、すでに三桁を超えていた。
「広まってる」
レオンがため息をつく。
「やっぱりな」
そのとき。
遠くから声が聞こえた。
「おーい!」
森の方から、誰かが走ってくる。
小柄なプレイヤーだった。
ローブ姿。
杖を持っている。
「レオン!」
近づいてくると、女の子だと分かった。
「ミレアか」
レオンが言う。
「来たのか」
「だって掲示板すごいことになってるよ!」
ミレアは星花を見る。
「わぁ……!」
目を輝かせた。
「かわいい!」
しゃがみ込んで花を見つめる。
「これが噂の?」
《星花の祝福》
「バフ出た!」
ミレアは嬉しそうに笑った。
「すごい!」
そしてユイを見る。
「これ作ったのあなた?」
「えっと……はい」
「天才!」
「えぇ!?」
突然の称賛にユイは慌てる。
ミレアはぺこりと頭を下げた。
「ヒーラーのミレアです!」
「よろしく!」
元気な挨拶だった。
すると。
「騒がしいと思ったら」
また別の声。
森の奥から、背の高い男が歩いてきた。
黒い軽装。
腰には短剣。
「……ナイトか」
レオンが呟く。
その男は静かな目で周囲を見た。
「なるほど」
星花を見る。
「これが噂の」
そして一言。
「悪くない」
短い感想だった。
「ナイトは暗殺者」
カイルが説明する。
「ソロプレイヤー」
ナイトはユイを見る。
「庭師?」
「は、はい」
「面白い職業だな」
それだけ言った。
そのとき。
ガルドが指を折って数えた。
「えーっと」
「今……」
「八人?」
ユイは驚く。
「もうそんなに?」
自分を含めて。
ユイ
レオン
カイル
ガルド
セリア
バルク
ミレア
ナイト
本当に八人だ。
レオンが星花を見る。
「まだ種あるんだろ?」
「はい」
ユイはインベントリを開く。
星の種 ×1
「あと一つです」
「植えてみろ」
レオンが言う。
ユイは頷いた。
星の種を取り出す。
土にそっと置く。
《星の種を植えますか?》
「はい」
ぽん、と音がする。
光が広がった。
そして。
三本目の星花が咲いた。
きらきらと輝く光が広がる。
《星花の祝福》
《星花の祝福》
《星花の祝福》
三つのバフ。
ガルドが笑った。
「おお!」
バルクも頷く。
「これは強い」
カイルは静かに言った。
「確信した」
「何を?」
レオンが聞く。
カイルは星花を見て言った。
「この庭」
「たぶん」
「ゲームの名所になる」
「名所!?」
ユイは驚く。
でも。
そのとき。
遠くの草原から――
さらに二人のプレイヤーが歩いてくるのが見えた。
レオンが笑う。
「ほら」
「来た」
ユイはまだ知らない。
その二人が。
守護騎士になることを。
そして。
この小さな星の庭が――
ユイと、10人の仲間の拠点になることを。




