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戦えない庭師ですが、星の花のバフが強すぎて最強プレイヤー10人に守られることになりました 〜星詠みの庭師と10人の守護騎士〜  作者: あめとおと


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第3話 毒舌魔導士、庭に現る


 星の花が、静かに光っていた。


 草原の中央に植えられた、小さな一本の花。

 それなのに、その周囲には柔らかな光が満ちている。


 ユイはしゃがみ込み、そっと葉に触れた。


「やっぱり、かわいいなぁ……」


 ゲームの植物だというのに、不思議と愛着が湧く。


 星の粒のような光がふわりと舞い上がり、また消えていく。

 まるで夜空の欠片を育てているようだった。


 


「確かにこれは珍しい」


 後ろから声がする。


 振り向くと、レオンが腕を組んで花を見ていた。


 銀色の鎧を身にまとった騎士。

 背中の大剣が存在感を放っている。


 


「そんなに珍しいんですか?」


「少なくとも、俺は見たことがない」


 


 レオンは視界のウィンドウを確認するように軽く目を細めた。


 


「しかもこのバフ、地味に強い」


 


《星花の祝福》

《攻撃力・防御力・回復力 微上昇》


 


「初心者の支援効果にしては優秀すぎるな」


 


「えぇ……」


 ユイは戸惑う。


 自分としては、ただ花を植えただけだ。


 


「そのうち人が来るかもしれない」


「人?」


 


 レオンは肩をすくめる。


 


「こういうの、すぐ噂になる」


 


 その言葉を聞いた瞬間だった。


 


 空から声が落ちてきた。


 


「へぇ?」


 


 ユイはびくっとする。


 


「なにそれ」


 


 次の瞬間。


 


 ドンッ!!


 


 空き地の真ん中に、何かが着地した。


 


「うわぁ!?」


 


 土煙が上がる。


 ユイは思わず後ろへ下がった。


 


 煙が晴れる。


 


 そこに立っていたのは――


 


 黒いローブのプレイヤーだった。


 


 長い銀髪。

 鋭い目つき。

 細身の体。


 いかにも魔導士という格好だ。


 


「……レオン」


 


 その人物は、面倒くさそうな声で言った。


 


「お前またソロで狩りしてたのか」


 


 レオンがため息をつく。


 


「カイルか」


 


「カイル?」


 


 ユイが小さく呟くと、黒ローブのプレイヤーがこちらを見た。


 


「へぇ」


 


 興味深そうに目を細める。


 


「初心者?」


 


「は、はい……」


 


 するとカイルは、ユイの頭の上に表示された名前を確認した。


 


ユイ


 


「レベル1か」


 


 そして次に、星花を見る。


 


 ふわりと光が広がる。


 


《星花の祝福》


 


 カイルの眉がぴくりと動いた。


 


「……は?」


 


 そしてレオンを見る。


 


「これ、お前の?」


 


「違う」


 


 レオンは親指でユイを指す。


 


「この子のだ」


 


「……」


 


 カイルはもう一度、花を見た。


 


 そして。


 


「ちょっと待て」


 


 そう言って、ユイに近づく。


 


「君」


 


「は、はい!」


 


「これどうやって作った?」


 


「えっと……」


 


 ユイは慌てながら説明した。


 隠し職業を選んだこと。

 星の種を植えたこと。

 チュートリアルクエストだったこと。


 


 話を聞く間、カイルはずっと黙っていた。


 


 そして。


 


「……なるほど」


 


 深く息を吐く。


 


「つまり」


 


 指で星花を示す。


 


「これは量産できる?」


 


「り、量産?」


 


「何本でも植えられるのかって聞いてる」


 


「えっと……まだ分からないです」


 


 メニューを開く。


 


 インベントリには――


 


星の種 ×3


 


「あ」


 


「まだ三つあります」


 


 その瞬間。


 


 カイルとレオンの視線が同時に止まった。


 


「……」


「……」


 


「え?」


 


 ユイは戸惑う。


 


 沈黙が数秒続いたあと。


 


 カイルがぽつりと言った。


 


「レオン」


 


「なんだ」


 


「これ、拠点にしよう」


 


「同感だ」


 


「えぇ!?」


 


 ユイはびっくりする。


 


「きょ、拠点!?」


 


 カイルは真顔だった。


 


「このバフが重なるなら」


 


「重なる?」


 


「普通のゲームなら重なる」


 


 そして星花を見下ろす。


 


「つまり」


 


 冷静に言った。


 


「この庭、壊れる」


 


「壊れる!?」


 


「ゲームバランス的に」


 


 レオンが苦笑する。


 


「言い方」


 


 カイルは肩をすくめた。


 


「でも事実だろ」


 


 そしてユイを見る。


 


「君」


 


「はい……」


 


「星の種、植えてみて」


 


「今ですか?」


 


「今」


 


 


 ユイはおそるおそる、二つ目の種を取り出した。


 


 土に植える。


 


《星の種を植えますか?》


 


「はい」


 


 ぽん、と音がした。


 


 光が広がる。


 


 そして。


 


 二本目の星花が咲いた。


 


 


 ふわぁ……


 


 空気が少しだけ輝く。


 


 


《星花の祝福》

《星花の祝福》


 


 


 バフが二つ並んだ。


 


 


「……」


「……」


 


 


 レオンが小さく笑った。


 


 


「確定だな」


 


 


 カイルは額を押さえた。


 


 


「運営、絶対想定してない」


 


 


「えぇぇ……」


 


 


 ユイは完全に置いてけぼりだった。


 


 


 そしてカイルは言った。


 


 


「決めた」


 


 


 真面目な顔で。


 


 


「俺もここ使う」


 


 


「使う?」


 


 


「この庭」


 


 


 そして、軽く手を振る。


 


 


「魔導士カイル」


 


 


 簡単な自己紹介だった。


 


 


「レオンのギルドメンバー」


 


 


 つまり。


 


 


 ここに――


 


 


二人目の守護騎士が誕生した。


 


 


 小さな星の庭。


 


 そこには今。


 


 初心者の庭師と。


 騎士と。


 毒舌魔導士。


 


 


 そして。


 


 まだ知らない。


 


 


 この場所に。


 


 


あと8人のプレイヤーが集まることを。


 


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