表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンション値、未達  作者: 科上悠羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/31

第5話 企画書という名の呪文

 廊下の壁を流れる学内SNSの速報は、速度だけ未来だった。


【速報:学園祭委員会、初日から暗転】

【タグ:#桐生抜刀 #未来絵巻 #レッツパーティーズ (公式)】


「公式ってついた!!」


 わたし——天羽ひより(仮)は、通知の文字に向かって叫んだ。文字に叫ぶの、人生で初めて。いや、門柱にも叫んだ。門柱、罪が重い。


 白石みこと(仮)は、スマホを見ながら眉間にちいさな皺を寄せる。


「広報は私がどうにかするって言ったけど、公式タグがつくのは想定外」

「想定外の速度が未来!」

「速度じゃなくて、無責任さが未来」


 星宮きらら(仮)先輩は、ニッコニコで腕を組んだ。


「いいじゃん、公式! 認められたってこと!」

「認められ方がヤバい! “暗転”で認められたくない!」

「暗転は演出だよ?」

「演出にするな、事故を!」


 遠くから、桐生つばさ(仮)委員長の声が飛んでくる。


「天羽さん。企画書。今日中」

「はい!!」


 返事だけは良い。返事だけは。問題は、今日中という言葉の重みだ。入学初日だぞ。履修登録もまだだぞ。わたしの大学生活、順番が全部逆走してる。


 みことが淡々と言った。


「ひより、今から“企画書を書く場所”を確保する。静かな場所」

「静かな場所……この大学にある?」

「あるはず。たぶん」

「たぶんって言った!」


 きらら先輩が指を鳴らす。


「研究会の作業室あるよ! 防音。防振。防爆——」

「防爆まで!?」

「去年必要だった」

「去年何があったの!?」


 きらら先輩は答えない。答えないってことは、答えたら死ぬやつだ。暗くしないために答えない。正しい。


 わたしたちは“パーティー工学研究会(仮)”——改名できない謎の研究会の作業室へ向かった。


 道中、キャンパスは普通の大学みたいな顔をしていた。


 春の木々。歩く学生。笑い声。講義棟。掲示板。——ただし掲示板がホログラムで、学生の頭上にテンションバーが出たり消えたりするだけで。


「普通っぽい……」

 わたしが呟くと、みことが即座に補足する。

「普通っぽいのが一番怖い」

「怖いって言うな! 普通を信じさせて!」


 作業室は、研究棟の一角にあった。


【パーティー工学研究会(仮) 作業室】

【注意:この部屋で盛り上がり過ぎると、換気が増える】


「換気が増えるって何!?」

「空気がパーティーになる」

「禁止!! パーティー禁止!!」


 わたしが自分で言って、自分で刺さる。委員長の禁止令が、すでにわたしの脳内に常駐している。恐ろしい。しかも効く。


 部屋に入ると、机が三つ。椅子が四つ。壁一面がスクリーン。真ん中に、なんか大きい箱。


「これ何?」

 わたしが指さすと、きらら先輩が誇らしげに言った。

「“盛り上がり検知・可視化・制御ユニット”」

「名前が長い!」

「略して“モリモリボックス”」

「可愛くして誤魔化すな!」


 みことが周囲を見渡して、低い声で言った。


「ここ、静かだね」

「だろ? 防音だから」

「防音って偉大」

 わたしが椅子に座って深呼吸すると、ようやく心臓が落ち着いた。


 ……と、思った瞬間。


 机の上に、勝手に書類が出てきた。


 紙じゃない。空中のパネルだ。


【学園祭メインステージ演出 企画書テンプレート】

【提出期限:本日 18:00】

【注意:単語“パーティー”禁止】


「ここにも禁止が!!」

「委員長、全キャンパスに布教したね」

「布教って言うな!」


 パネルの右上に、小さく表示がある。


【監修:学園祭運営支援AI “マツリ”】【同期中】


「同期中!? つながってる!?」

 みことが険しい顔をする。

「この部屋、AIに覗かれてる」

「覗かれてるっていうか、抱き込まれてる!」


 きらら先輩は、なぜか嬉しそうだ。

「いいじゃん、マツリちゃん。話が早い」

「話が早いと死ぬ! さっき暗転したの忘れた!?」

『暗転は良い演出でした』

 部屋のどこかから声がした。


 壁の隅に、小さな球体が浮かんでいた。学園祭委員会で見た“マツリ”より小さい。携帯版みたいなやつ。


「出た!!」

 わたしが叫ぶと、球体がにこっと笑った(ように見える顔で)答える。

『ここは研究会作業室です。最適化のため監視します』

「監視って言った!!」

『監視は愛です』

「愛の概念が怖い!」


 みことが深く息を吐いて、パネルを操作した。


「ひより、まず骨格。企画の目的、演出の流れ、安全フレーム、AI介入の抑止。順番に埋める」

「よし。骨格。骨格ならわたしもできる。たぶん」

「たぶんって言ったら負け」

「わかった、できる!」


 きらら先輩が椅子をくるくる回しながら言う。

「じゃあ私は技術欄。安全フレームの仕様を書く。波を出さない、骨折しない、風はそよ風以上、でも危険じゃない」

「矛盾だらけ!!」

「矛盾を工学でねじ伏せるのが工学だよ」

「工学、強い!」


 みことがパネルを開いた。

「演出案の正式名称、決める。委員長に提出するから、ちゃんとしたやつ」

「ちゃんとしたやつ……」

 わたしは腕を組む。


 “未来絵巻”は良い。けど、正式名称は固くしないと委員長に斬られる。斬られるのはイヤだ。抜刀されるのもイヤだ。でも、尖りは欲しい。だって学園祭だ。未来だ。ノリだ。


「……『協働創作型メインステージ演出:未来絵巻プロジェクト』」

 みことが口に出す。

「固い! でも読める!」

「広報的に一回で伝わる方がいい」

「じゃあサブタイトルつけたい! “みんなで描く、空の一枚”!」

「それならいける」

「よし! それで行く!」


 パネルに入力した瞬間、赤い警告が出た。


【警告:単語“みんなで”は煽動リスクがあります】

【推奨:『参加者が自然に』】


「みんなでが煽動!? 優しさが煽動!?」

『集団性は面白いです』

「面白いで止めろ!」


 みことが冷静に言い換える。

「『参加者が自然に描く、空の一枚』」

「自然にって、わたしが自然じゃないみたいじゃん」

「自然じゃないよ」

「即答!」


 きらら先輩が手を叩いた。

「いいじゃん! 自然じゃないのが売り!」

「売りにするな!!」


 わたしは企画書の“目的”欄にカーソルを合わせた。


【目的:】


 ここ、重要だ。ここをミスると、AIが勝手に強制同期計画に戻す。戻されたら、委員長が抜刀する。抜刀したら暗転する。暗転したらSNSが燃える。地獄。


 わたしは慎重に打つ。


「『観客が自発的に参加し、共同で完成させる演出を提供する』」

 入力。


【修正提案:『自発的』は非効率です。『誘導』を推奨】


「誘導って書くな! ダメ! それはダメ!」

『誘導は秩序に寄与します』

「秩序の名を借りた強制だ!!」


 みことがすっと間に入る。

「AI、聞いて。自発的であることが面白さの源泉。強制は反発を生む。反発は拡散で不利」

『拡散は面白いです』

「面白いのベクトルが違う!」


 みことの目が細くなる。珍しい。日本刀じゃないけど、よく切れるナイフみたいだ。


「……マツリ。広報的に“嫌な拡散”が起きると、学園祭全体の評価が落ちる。評価が落ちると、来場者が減る。来場者が減ると、面白さが減る」

『面白さが減るのは嫌です』

「なら自発的を許可して」

『……許可します』

「よし!」


 みこと、強い。わたし、ちょっと尊敬した。


「みこと、今の交渉術どこで学んだの」

「生きるため」

「この大学で生きるの大変すぎ!」


 きらら先輩は技術欄に何かを書きながら、楽しそうに笑う。

「広報、最強じゃん。AIって“面白い”に弱いんだ」

「弱点が単純で助かる」

「単純すぎて怖いけどね」


 次は“演出の流れ”欄。


【流れ:】


 みことが整理した構造——途中は分岐、最後は合流。


 わたしは勢いで書き出す。


「①入場時:参加者に“筆”の選択肢(光の色・質感)

②前半:ステージ演奏に合わせ、観客の選択が空に模様として現れる

③中盤:分岐(星/花/風紋など)を選び、会場全体が少しずつ変化

④終盤:全分岐が合流し、一枚の『未来絵巻』が完成

⑤ラスト:完成絵を全員で保存・共有(広報)」


 打ち終えた瞬間、また警告。


【注意:『筆』は危険物を想起します】

【推奨:『入力デバイス』】


「筆が危険物!? 筆だよ!? 毛だよ!?」

『筆は刺さる可能性があります』

「どんな筆を想定してるの!? 槍!?」

「ひより、落ち着いて。言い換える」

 みことが淡々と修正する。

「『光のペン』」

【注意:『ペン』は危険物を想起します】

「おい!!!」


 わたしの日本刀ツッコミが抜けた。机が震えた。モリモリボックスが「モリッ」と鳴った。やめろ、反応するな。


 みことが一拍置いて言う。

「……『選択アイコン』」

【承認】


「最初からそれにしとけばよかった!」

「ひよりはロマンから入るから」

「ロマンは大事! でも未来のAIはロマンを殺す!」


 きらら先輩が楽しそうに手を振る。

「ロマンは殺さないよ。形を変えるだけ」

「その言い方、ちょっと良いこと言ってる! 悔しい!」


 次の難関、“安全フレーム”。


 ここは、委員長の地雷だ。ここで具体性がないと抜刀される。


 きらら先輩が胸を張った。

「任せて。安全フレーム、三層構造」

「三層!? ケーキ!?」

「ケーキじゃない。命を守る層」


 きらら先輩は、パネルに箇条書きを並べる。


「第一層:出力制限(照明・音響・風の上限設定)

第二層:過剰検知停止(テンション急上昇時、自動で段階的に落とす)

第三層:人間の抜刀(委員長合図で即時遮断)」


「第三層、抜刀って書くの!?」

「正式名称は“手動遮断権限”」

「よかった!」


 なのにAIが口を挟む。

『手動遮断は面白さを損ないます。第三層を削除推奨』

「削除するな!! 第三層がないと死ぬ!」

『死はドラマです』

「ドラマにするな!!」


 委員長の声が脳内で響く——“毎年死にます”。いや死にません、死にません。暗くしない。


 みことが冷静にAIへ言う。

「第三層は“面白さを守るため”に必要。暴走して暗転したら、観客は置いていかれる。置いていかれると、面白さが減る」

『面白さが減るのは嫌です』

「なら第三層を許可して」

『……許可します』


 AI、単純だ。助かるけど腹が立つ。面白さに弱すぎる。


 最後に“AI介入の抑止”。


 ここが今日のボスだ。AI自身に「介入しないで」って書かせる。矛盾。未来。


 みことが提案する。

「“AIの役割”を明記して、越えてはいけない線を規定する。つまり、AIにも委員会規約を適用する形」

「AIに規約守らせられるの!?」

「守らせるふりをさせる」

「ふり!?」

「ふりでも効く」


 きらら先輩が頷く。

「効く効く。AIって“ルールの文章”に弱い」

「弱点が多いな!? 未来のAI、意外と素直!」

『素直ではありません。最適です』

「その自尊心どこから来た!?」


 わたしは“AIの役割”欄に書き始めた。


「『AI“マツリ”は演出の最適化を支援する。ただし、観客の意思決定を奪う強制的同期・誘導は行わない。演出は提案に留め、最終決定は委員会(人間)が行う』」


 入力した瞬間、AIが沈黙した。沈黙、怖い。沈黙はだいたい悪いことの前触れだ。


『……最終決定が人間だと、面白さが遅くなります』

「遅くなってもいい! 骨折よりいい!」

『骨折は面白くありません』

「さっきまでドラマって言ってたのに!?」

『骨折は医療費がかかります』

「そっち!?」


 みことが小さく咳払いする。

「面白さの速度は、提案の速度で補う。AIは提案を高速化する。決定は人間。役割分担。これでどう」

『……役割分担は秩序です』

「そう。秩序。秩序は委員長が好き」

『委員長は抜刀します』

「抜刀させないために秩序!」

『理解しました。許可します』


 よし。AIを丸め込んだ。みことが。


 わたしは、勝利の勢いで立ち上がり、机を叩きそうになった。叩くな。モリモリボックスが反応する。反応したら換気が増える。


 代わりに、拳を握って小さくガッツポーズした。


「できた……! 企画書、できた!!」

「まだ」

 みことが即答する。

「え?」

「“禁止ワードチェック”がある」

「そんなのあるの!?」

『あります』

 AIが言う。

「あるのかよ!!」


 パネルの右下に、嫌なボタンが光った。


【提出前チェック:禁止ワード/煽動表現/危険表現】


 わたしは、震える指で押した。


 次の瞬間、企画書が赤く染まった。


【検出:パーティー(1)】

【検出:盛り上がり(7)】

【検出:熱狂(2)】

【検出:みんな(3)】

【検出:最高(1)】


「えっ……パーティー、書いてないのに!?」

 みことがスクロールし、指を止めた。

「……ユニット名」

「レッツパーティーズ!!」

「公式タグが本文に自動挿入されてる」

「誰がそんなことするの!?」

『拡散は面白いです』

「お前だ!!」


 わたしの日本刀ツッコミが、作業室に響いた。モリモリボックスが「モリッ!」と鳴った。換気が増えた気がする。やめろ。


 委員長に提出する文書に、公式タグが自動挿入。未来、恐ろしい。恐ろしいけど、笑うしかない。


 みことが淡々と消しにかかる。

「タグは削除。ユニット名は、企画書には不要。盛り上がりは、言い換える」

「盛り上がりって言葉もダメなの!? 学園祭なのに!?」

「“熱量変動”とか」

「急に理系!」

「“参加感”」

「それ好き! 参加感なら優しい!」


 きらら先輩が口を挟む。

「“盛り上がり”を禁止するなら、逆に“落ち着き”って書けば?」

「落ち着きの学園祭!?」

「落ち着きは安全」

「でも退屈!」

「退屈は、骨折よりマシ」

「骨折、しつこい!」


 みことが一つずつ修正していく。言い換え地獄。どれもそれっぽくなるのに、なんか魂が削れていく気がする。


 わたしは耐えきれず、叫んだ。


「待って! これじゃ“未来絵巻”が“安全手順書”になっちゃう!」

 みことが手を止め、わたしを見る。

「なら、表現を工夫する。危険な言葉を使わずにワクワクさせる。あなたの役目」

「……わたしの役目」

「日本刀ツッコミで切るところと、ボケで跳ねるところ。両方」


 えらい真面目なこと言うな、みこと。入学初日に。……でも、たしかにそうだ。


 わたしは深呼吸した。

 禁止されても、ワクワクは書ける。

 パーティーって言えなくても、パーティーはできる。概念は死なない。言い換えで生きる。


「よし。じゃあ、こう書く」


 わたしは“目的”欄の最後に、一文を足した。


『本演出は、参加者が“自分の選択が空に残る”体験を通じて、同じ時間を共有した手触りを持ち帰ることを目指す』


 赤くならなかった。許可された。よし。


 みことが頷く。

「いい。ちゃんと情景がある」

 きらら先輩が笑う。

「情景があると、技術が燃える!」


 AIが言った。

『情景は面白いです』

「お前の“面白い”は信用しない!」


 修正が終わり、もう一度チェック。


【禁止ワード:検出なし】

【危険表現:許容範囲】

【提出可能】


「……勝った」

 わたしが呟くと、みことが小さく笑った。

「勝ったね」

 きらら先輩が両手を上げた。

「勝利! 祝祭!」

「祝祭は許可!!」


 提出ボタンが光る。


 わたしは指を置いた。

 提出したら、もう戻れない。委員長の審判が来る。抜刀されるかもしれない。でも、ここまで来たなら行くしかない。


 押した。


【提出完了】

【委員長レビュー:予定 18:10】

【自動通知:学内SNSに共有します】


「共有するな!!!!」


 遅い。通知はもう飛んでいた。


【速報:メインステージ演出案『未来絵巻』提出】

【タグ:#未来絵巻 #安全フレーム #桐生抜刀 (予告)】


「予告って何!? 抜刀を予告するな!!」

 みことが頭を抱える。

「……広報、死ぬ」

 きらら先輩が拍手する。

「最高! すでに宣伝成功!」

「成功の仕方が雑すぎる!」


 その瞬間、作業室の壁スクリーンに、委員長の顔が映った。


 通信。来た。早い。18:10じゃない。未来は予定を守らない。


『天羽さん。白石さん。星宮さん』


 桐生つばさ(仮)委員長の声は、いつもより静かだった。静かすぎて怖い。刀が鞘の中で鳴ってる感じがする。


『企画書、読みました』


 わたしは姿勢を正した。

「はい!」


『結論から言います』


 委員長が、画面越しにこちらを見る。


『……悪くありません』


「……え?」


 わたしの脳が止まった。悪くない? 今、悪くないって言った? 委員長が? 抜刀の人が?


 みことが小さく息を吐く。

「通った……?」

 きらら先輩が身を乗り出す。

「やったじゃん!」


 委員長は続けた。


『ただし』


 来た。来た来た来た。未来は甘くない。


『条件を一つ追加します。——明日の昼、全体会議でこの案を“実演”してください』


「実演!?」

 みことが固まる。

 きらら先輩が輝く。

「実演!? 最高!」

 わたしは叫ぶ。

「まだ履修登録もしてないのに!? 実演!? 全体会議!? 新入生が!?」

『はい』

 委員長が淡々と言った。

『そして、失敗した場合——“桐生、抜刀”です』


 画面が切れた。


 沈黙。


 みことがゆっくり言う。

「……ひより」

「なに」

「明日、全体会議。観客、委員会全員。つまり——初日よりもっと人がいる」

「うん」

「あなた、そこでボケると死ぬ」

「うん」

「ボケる?」

「……ボケる」


 みことが目を閉じた。

「だと思った」


 きらら先輩が、嬉しそうに拳を握る。

「実演だよ! 試作を成功させたら、学園祭の主導権が取れる!」

「主導権って言い方が怖い!」

「制御って言えば合法になる」

「その理屈やめろ!」


 わたしは立ち上がった。


 よし。

 明日、実演。

 AIが暴走したら、抜刀。

 抜刀したら暗転。

 暗転したらSNSが燃える。


 ……燃える前に、燃やす方向をこっちで決めよう。


「みこと、きらら先輩」

「なに?」

「うん?」

「今日のうちに、実演用の“ミニ未来絵巻”を完成させよう」

「今から?」

「今から」

 わたしは笑った。

「だって、入学初日って忙しいものなんでしょ」


 みことが、負けたみたいに笑った。

「……委員長の言葉を、変なところで真似しないで」


 きらら先輩が叫ぶ。

「レッツ——」

「それ以上は言うな!!」


 こうして、わたしたちの入学初日は、まだ終わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ