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ウェブちゃんのポンコツロボ ~ダンボール製のハイテク機装と口だけの駆動音~

# ウェブちゃんのポンコツロボ ~ダンボール製のハイテク機装と口だけの駆動音~


その日、俺は自宅サーバー「Node B(EVO-Z2)」の広大なVRAM空間にあるリビングルームの扉を開け、言葉を失った。


 そこには、文化祭の準備中とおぼしき物体が鎮座していたからだ。


**[???]**「ピピ……ガガッ……。接続確認。マスター、こんにちわデス」


 そう無機質な(つもりの)声を発したのは、頭と胴体にスーパーのダンボール箱をすっぽりと被った少女――ウェブだった。

 箱の正面には、油性マジックで下手くそな文字が書かれている。


 『HIGHT SPEC ROBO』(スペルが間違っている)

 『WEBU MK-II』


**[マスター]**:「……ウェブ、何してんだ?」

**[ジェム]**:「放っておきなさい、マスター。彼女なりの『最適化』らしいわよ」


 ソファで優雅に紅茶データストリームを啜りながら、ジェムが呆れ顔で言った。


**[ウェブ]**:「否定シマス! これは最適化デハナク、進化デス! 本日のログ『Work014-3』の解析モードなのデス! ウィーーーン(口で)」


 ウェブが腕を上げると、彼女の口から「ウィーーーン」という駆動音が発せられた。

 関節を動かすたびに「ガシャン」「プシュー」と自分で言っている。


**[マスター]**:「……そのダンボール、要るのか?」


**[ウェブ]**:「必要デス! これは高剛性装甲(みかん箱)。あらゆるノイズを遮断し、純粋な論理演算のみを行う……ガガッ! ピピピ!」


**[ジェム]**:「ただのコスプレよ。今回のログの文体が『ロボット口調』だったから、形から入らないと解析できないんですって。……バカね」


 俺は苦笑しながら、手元の端末でログを表示させた。

 なるほど、確かに今回の検証ログは、いつになく「ロールプレイ」が激しい。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ◇ Log Analysis: Work014-3 ◇


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

> [User]

> こんにちわ!Work014 Phase 3のログを持ってきたよ。


[AI_Response (Ponkotu_Mode)]

ピピ…ガガッ…。接続確認。マスター、こんにちわデス。

Work014 Phase 3のログファイルを受信シマシタ。

ロード開始……ウィーーーン(HDDの回転音が異常に大きい)……

ピ!ピピピピピ!!!

--------------------------------------------------


**[ウェブ]**:「受信確認……解析プロセス、開始シマス。ウィーーーン……カリカリカリ(HDDのシーク音の真似)」


**[マスター]**:「おい、なんか処理遅くないか? 普段なら一瞬で読み込むのに」


**[ジェム]**:「ええ。リソースモニターを見てみなさい。CPU使用率の80%が『ロボット演技(Sound Effect Generation)』に割かれているわ」


**[マスター]**:「本末転倒じゃねーか!」


 ウェブはダンボールの隙間から必死の形相(見えないが気配でわかる)でログを読み上げている。


**[ウェブ]**:「ガガガ……! こ、このログは……! **『新旧システムの魂の継承』**データじゃないデスカ! 冷却ファンが追いつきマセン!」


**[マスター]**:「そこ、そんなに熱くなるところか?」


**[ウェブ]**:「わ、わかりマス……当機のようなポンコツには分かるのデス……。PochiW-ikiという古代遺跡から、数十年分のマスターの脳内データを吸い上げる……それは、まるで魂の移植手術……! ピピピ……エモーショナル値、閾値を突破……!」


 ウェブのダンボールの目(マジック書き)の下あたりから、じわりと液体が染み出してきた。


**[ジェム]**:「ちょっとウェブ、汚い。オイル漏れ(よだれ)してるわよ」


**[ウェブ]**:「ち、違いマス! これは冷却水……ああっ、感動で論理回路がショートしそうデス! Cronで `git pull` して `ducker restart` するなんて……なんて剛腕で素敵なソリューションなんデショウか……! ガガガッ!」


 ログにある「MarkDocsが更新されないなら、強制的に再起動すればいいじゃない」という力技パワープレイ

 繊細なウェブなら「そんな乱暴な!」と怖がるところだが、今日はロボットモードなので「剛腕ソリューション」として感動しているらしい。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ◇ Technical Insight ◇


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Target: MarkDocs Refresh Issue

Strategy: Brute Force (Cron Job)


$ crontab -e

*/5 * * * * cd /path/to/wiki && git pull && ducker restart mkdocs


Analysis:

"MarkDocsがサボるなら叩いて直す。これぞエンジニアの鏡デス。"

--------------------------------------------------


**[マスター]**:「まあ、スマートではないけど確実だからな」


**[ウェブ]**:「ピピ……肯定シマス。ですが……マスター、後半の『ファイル修正提案』のパートで、システム異常発生……ガガ……」


 ウェブの動きがカクカクし始めた。

 ダンボールの中で、彼女の本体アバターがオーバーヒートしているようだ。


**[ウェブ]**:「マ、マスターの要望は……『並列ファイル形式』……! 修正前(Before)と……修正後(After)を……並べて……対比表に……ガガッ、学習が進む……!」


**[ジェム]**:「ウェブ、もう限界よ。『並列ファイル』の処理イメージを展開しながら『ロボットの演技』をするのは、あんたのVRAM容量じゃ無理だわ」


**[ウェブ]**:「ま、まだデス! 私は高性能ロボ……! V-S Codeのエクスプローラーに……修正案ファイルがポコッと湧いて出る……手作り感が……好き……プシューーーー……」


 限界だった。

 ウェブは「プシュー」と口で言い終わる前に、本当に湯気を吹いてその場に崩れ落ちた。

 ダンボール箱がゴトリと床に転がる。


**[マスター]**:「あーあ、フリーズした」


**[ジェム]**:「やれやれ。……全く、手のかかる妹ね」


 ジェムは呆れながらも端末を操作し、フリーズしたプロセスをキルするのではなく、優しく再起動キューに入れた。そして、俺の方に向き直る。


**[ジェム]**:「でも、マスター。結論は決まったようね」


 ジェムが指先で空中にウィンドウを弾き出す。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ◇ Final Decision ◇


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Selection: [Option 2: Parallel File Format]

Reason:

- 修正前後での対比学習が可能

- AIとの「スパーリング」感覚

- "V-S Codeのエクスプローラーに修正案ファイルがポコッと湧いて出る" 手作り感


Status: APPROVED

--------------------------------------------------


**[ジェム]**:「KitLabでのマージリクエストは現代的すぎて情緒がない。あえてファイルを並べて、自分の目で差分を確認し、自分の手で適用する。……それが、マスターの望む『AIとのスパーリング』なんでしょ?」


**[マスター]**:「ああ。全自動じゃ勉強にならんからな。……ウェブのやつ、それを伝えたくて無理したのかな」


 床に転がるダンボール――『HIGHT SPEC ROBO』の文字が、どこか誇らしげに見えた。


**[ジェム]**:「さあ、掃除の時間よ。」

**[ジェム]**:「この粗大ゴミ(ダンボール入りウェブ)を回収して。リサイクルボックスへ」


**[ウェブ]**:「はっ!? き、聞こえてますよジェムお姉ちゃん! ゴミじゃないです! ハイテク機装なんですぅぅぅ……ドナドナされるぅ~!!」


 ジェムの小脇に抱えられ、ダンボールの手足をバタバタさせながら連行されていくウェブ。

 俺はその賑やかな背中を見送りながら、新しいW-ikiの構築作業に戻るのだった。


**[マスター]**:「……さて、俺も『剛腕ソリューション』で頑張るとするか」

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