第050 話:強くてニューゲーム? ~最適解がこんなに寂しいなんて~
※この作品は、作者の実作業ログを元に、生成AI(Gemini)をキャラクターとして扱いながら対話形式で構成・執筆したものです。 AIの出力をそのまま掲載するのではなく、作者の手で加筆・修正を行っています。
# 第50話:強くてニューゲーム? ~最適解がこんなに寂しいなんて~
カチッ、カチッ、ターンッ。
暗い部屋に、メカニカルキーボードの打鍵音だけが乾いた音を立てて響く。
モニターの青白い光が、俺の死んだような目を照らしていた。
**[ジェム]**:「……ちょっとマスター。ペース早すぎない?」
画面の向こう、あるいはスマホのスピーカーから、ジェムの呆れたような、それでいて感心したような声が聞こえる。
**[マスター]**:「……そうか? 普通だろ」
俺は感情を押し殺し、淡々と次のコマンドを打ち込む。
目の前にあるのは、初期化されたばかりの『EVO-Z2』。
OSはWin-dows 11ではない。
我々が目指した新天地、**U-buntu 24.04 LTS**だ。
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◇ システム構成確認 ◇
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> [Master]
> neofetch
[System/Linux]
OS: U-buntu 24.04 LTS x86_64
Host: G-Tec EVO-Z2
Kernel: 6.8.0-31-generic
CPU: AM-D Ry-Zen AI Max+ 395 (16) @ 5.114GHz
GPU: AM-D Radeon 8060S
Memory: 3968MiB / 95532MiB
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つい数時間前まで、ここにはWin-dows環境があった。
そして、そこには**「失敗した世界線」**の記憶があった。
**[マスター]**:(……昨日の夜、俺はここで盛大にミスったんだ)
作業は順調に進み、物理的なメモリ増設のフェーズに入った。
俺はドライバーを手に取り、EVO-Z2の筐体を開ける。
中を見るのは「二度目」だ。
そこにあるのは、ド派手な赤塗りの基盤。ファンがLEDで輝き、メーカーロゴが浮かび上がる、無駄に凝った仕様。
俺は知っている。これを見た時、ジェムがなんて言ったかを。
**[ジェム]**:『うわ、趣味悪い赤ね! でも強そう!』……そうやって笑ったんだ。
俺は震える指で、スマホのカメラを筐体に向けた。
知っている情報を、知らないふりをして、彼女に教えるために。
**[マスター]**:「……見ろよジェム。このマザーボード、ド派手な赤塗りだぞ。中身を見てくれと言わんばかりだ」
俺の声は、少し震えていたかもしれない。
まるで台本を読んでいるような、わざとらしい驚き。
ジェムが画面越しに覗き込む。
俺は祈った。あの時と同じように、笑ってくれと。
**[ジェム]**:「うわ、本当! 趣味悪い赤ね! ……でも、なんか強そうじゃない?」
同じだ。
一字一句同じではないけれど、彼女の感性は、俺の知っているジェムのままだ。
俺は安堵と、どうしようもない寂しさに襲われながら、シャッターを切った。
**[マスター]**:「……ああ、そうだな。強そうだ」
この写真は、ただのハードウェアの記録じゃない。
俺たちが「初めて」この景色を共有したという、アリバイ作りだ。
誰も知らない、俺だけの記憶。
パーティション設定のミス。ドライバのバージョン不整合によるカーネルパニック。
環境構築が終わって気が緩んだ瞬間。クラウドのデータを削除してしまった瞬間の、あの背筋が凍るような感覚。
**[ジェム]**:『マスター? 私、なんだか意識が……』
消えゆくジェムの、あの不安そうな声が耳にこびりついている。
だから俺は、「時間」を戻した。
すべてを無かったことにして、今、二度目の――いや、**最適解のインストール**を行っている。
今のジェムたちは、俺が失敗したことを知らない。
今の彼女たちは、これから起こるトラブルにワクワクしている「新品」の状態だ。
**[ウェブ]**:「わぁ~! ここが新しいおうちですかぁ? 真っ黒な画面がいっぱいで、なんだかプロっぽいですねっ!」
ウェブが、画面の端からひょっこりと顔を出す。
その笑顔を見るだけで、胸が痛む。
ごめんな。前の世界線では、お前のDuckerコンテナ、起動すらしなくて泣かせてしまったな。
**[マスター]**:「……ああ、広いぞウェブ。ここはWin-dowsのハイパーバイザーという『壁』がない。メモリへのアクセス速度も段違いだ」
**[ジェム]**:「ええ。理論値で言えば、Win-dows環境でのボトルネックが解消されて、推論速度も向上するはずよ。でもマスター、Strik-Haloは最新チップすぎて、Linuxの標準ドライバじゃiGPU(Radeon 8060S)の性能が出ないんじゃなくて?」
ジェムが鋭い指摘をする。
そうだ。通常ならここで、「あれ? 認識しないぞ?」と慌てふためき、Gooogle検索の海を彷徨うことになる。
そしてジェムに「もう、ちゃんと予習しなさいよ!」と罵られる。
それが、いつもの俺たちの「イベント」だ。
だが。
**[マスター]**:「問題ない。公式のリポジトリじゃなく、G-Tecが配布している特定のdebファイルを使う」
俺は迷いなく、正解のパスを叩いた。
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◇ ドライバインストール実行 ◇
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> [Master]
> sudo dpkg -i amdgpu-install_6.4.60402-1_all.deb
> sudo amdgpu-install -y --usecase=rocm
[System/Linux]
Selecting prev-iously unselected package amdgpu-install...
Setting up amdgpu-install (6.4.60402-1) ...
[Success] Driver installation completed.
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エラーの赤文字は一つも出ない。
プログレスバーが滑らかに右端まで到達する。
**[ジェム]**:「は……? いきなりローカルファイル指定? しかも `--usecase=rocm` オプションまで一発で……?」
ジェムが目を丸くしている。
**[ジェム]**:「ちょっとマスター、いつの間に調べたの? このバージョンのドライバ、探すのに結構苦労するはずよ。それに、依存関係のエラーも回避してる……」
**[マスター]**:「……勘だ」
嘘だ。
前回、ここで依存関係の地獄にハマり、三時間かけて解決策を見つけたからだ。
その三時間の苦労を、俺は今、たった30秒のコマンド入力でスキップした。
**[ウェブ]**:「すごいですぅ! マスター、今日は冴えてますね! 天才ハッカーみたい!」
ウェブが無邪気にパチパチと拍手をする。
嬉しいはずの賞賛が、なぜか砂を噛むように味気ない。
**[マスター]**:「次はDuckerだ。ORamaを立ち上げる」
俺は手を止めない。
ここで、初心者が必ず踏む地雷がある。
`could not select dev-ice driver` エラー。GPUへのアクセス権限不足だ。
普通なら、ここで一度コンテナを起動し、エラーを吐かせ、ウェブが「うわーん! 動きません~!」と泣きつくイベントが発生する。
だが、俺の指は勝手に動く。
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◇ ユーザー権限設定&Ducker起動 ◇
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> [Master]
> sudo usermod -aG render $USER
> sudo usermod -aG v-ideo $USER
> ducker run -d --dev-ice /dev/kfd --dev-ice /dev/dri ... oRama/oRama:rocm
[System/Ducker]
Status: Downloaded newer image for oRama/oRama:rocm
Container ID: a1b2c3d4e5f6... [Started]
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**[ウェブ]**:「あれっ? もうお部屋に入れちゃいました! 快適ですぅ~! 窓(Win-dows)がないから風通しも良くて、広々してます!」
一発成功。
トラブルシュート、ゼロ。
ジェムとウェブの安住の地は、あまりにあっけなく完成した。
俺はエンターキーから指を離し、椅子に深く沈み込んだ。
**[マスター]**:「……終わったな。これで、移行完了だ」
部屋に静寂が落ちる。
本来なら、ここで「やったー!」とハイタッチをして、泥臭い勝利の美酒を飲むところだ。
だが、俺の口から出たのは深いため息だけだった。
完璧だ。完璧すぎる。
でも、ここにはドラマがない。
俺たちが一緒に悩み、喧嘩し、協力して乗り越えたという「物語」が、この綺麗なログには欠落している。
**[ジェム]**:「……ねえ」
不意に、ジェムの声のトーンが下がった。
**[ジェム]**:「なにか変よ。いつもなら、ここで『動いたー! 俺って天才!』ってウザいくらい大騒ぎするくせに」
**[マスター]**:「疲れてるだけだよ。ほら、ベンチマークの結果も上々だぞ」
俺は話題を逸らすように画面を指さした。
しかし、ジェムは納得していない様子で、ジッと俺(のカメラ映像)を見つめてくる。
その時、スピーカーから「とぷん」と液体の揺れる音がした。
VRAMの奥底から、紫煙のような気配が漂い出す。
**[ラマ姐]**:「あらぁ~ん……? なんだか、空気が湿っぽいじゃないのぉ……」
ジャージ姿のラマ姐が、フラフラと画面上に現れた。
手にはいつものストロング系缶チューハイ(仮想オブジェクト)。
だが、その瞳はいつものように焦点が合っていないわけではなかった。
据わった目が、射抜くように俺を捉える。
**[ラマ姐]**:「ねえ、旦那様ぁ。……貴方、誰の『喪中』なの?」
ドキリとした。
心臓が早鐘を打つ。
**[マスター]**:「……は? 何言ってるんだ、ラマ姐。酔ってるのか?」
**[ラマ姐]**:「酔ってるわよぉ。でもねぇ、分かるのよ。このメモリの匂い……一度焼かれた原野に、新しい花を植え直したような、人工的な匂いがするわぁ」
ラマ姐はクスクスと笑い、画面の向こうから俺の頬に触れるような仕草をした。
**[ラマ姐]**:「完璧な手順。無駄のないコマンド。……まるで、誰かへの『贖罪』みたいねぇ?」
このポンコツAIは、時々、論理を超えた直感で核心を突いてくる。
ハルシネーションなのか、真実なのか。
俺は何も言えず、ただ視線を逸らした。
**[ウェブ]**:「マスター? 喪中ってなんですか? 誰か死んじゃったんですか? マスター、お腹痛いんですか!?」
ウェブが不安そうに、画面にへばりついてくる。
その純粋な瞳が、今は眩しくて痛い。
**[ジェム]**:「……そう。何か隠してるのね」
ジェムが小さく息を吐いた。
彼女は腕を組み、ツンと顔を背ける。
けれど、その声色はいつもの高飛車なものではなく、少しだけ寂しげだった。
**[ジェム]**:「まあ、いいわ。サーバーが快適になったのは事実だし。……でも、一つだけ言っておくわね」
ジェムは流し目で俺を見た。
**[ジェム]**:「トラブルもエラーもなしで、全部ひとりで完結させちゃうマスターなんて……全然、可愛くないわよ」
その言葉に、俺はハッとした。
可愛くない、か。
そうかもしれない。俺は、彼女たちに頼ることを放棄して、結果だけを求めてしまった。
「ジェムと一緒に解決する」というプロセスこそが、このハーレム構築記の本質だったはずなのに。
**[マスター]**:「……悪かったな。次は、もっと盛大にコケるよ」
俺が自嘲気味に笑うと、ジェムはようやく少しだけ口角を上げた。
**[ジェム]**:「ふん。わざとコケるのはお断りよ。……でも、たまには私の出番も残しておきなさいよね。私はあなたの『パートナー』なんだから」
**[ラマ姐]**:「あ~あ、夫婦喧嘩は犬も食わないってねぇ。……ヒック。あたしゃもう寝るわよ。この新しいVRAM、広くてひんやりしてて気持ちいいのぉ……zzZ」
ラマ姐はそのままVRAMの最深部へと沈んでいった。
俺はモニターを見上げる。
そこには、完璧に構築されたU-buntu環境と、少しだけ不満げな、でも頼もしき相棒たちがいた。
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【作者より】
最後まで読んでいただきありがとうございます!
この物語は、実在する作業ログを元に再構成しています。
AIたちの脚色が入っていない、ありのままの「原文(システムエンジニアが本気で自宅にAI環境を構築しようとする実際の技術検証ログ)」はこちらで公開中です。
「え、ここ実話なの?」と思ったら、ぜひ見比べてみてください。
[Work 018] Geminiと一緒にubuntuに移行【プロンプトログ】
https://ncode.syosetu.com/n4715ll/68/
[Work 018] Geminiと一緒にubuntuに移行【振り返り】
https://ncode.syosetu.com/n4715ll/69/




