思い出の写真と整理整頓
「あーあ、引っ越しって大変だなー」
誰もいない部屋で、一人嘆いた。
ついに大学進学が決まり、上京することになった。
だが、俺は超・片付けできない人間。
自分の部屋の片づけだけで今のところ10日はかかっている。
もう疲れた。
「あ、これはいるやつ」
「これはいらないやつ」
「これは――どうしようか?」
そんなふうに進めていく。
気分は重いのだが、声くらいは明るくないとやっていけない。
そんなとき。
「あ、これは……!」
本の隙間から、一枚の写真が転がり出てきた。
拾い上げると、予想通り。
そこには、小学校の頃の友達とのえがおがあった笑顔があった。
「たしか、この写真を撮った後すぐ転校しちゃったんだよな」
少し思い出すと、つぎつぎとかつての親友との思い出が蘇ってくる。
そうだ。
給食のおかわりで喧嘩になって、その後すぐ転校したから話せずじまいなんだっけ。
――この時の俺、楽しそうだな。
写真をしばらく眺めていると、ふとそんな感想が浮かんだ。
満面の笑みを浮かべる俺。
本当に、この時が1番楽しかった。
――いや、本当にそうだろうか?
決めた。
今から、を1番にする。
そう誓うと、俺は引っ越し作業に取り組み始めた。
さっきまでなかった、熱を持って。