表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空を見上げる理由  作者: 桜鬼
74/74

番外編 君と、風に溶けて

──空の果てまで、きみと一緒に。



ギルドの一角、いつもの丘の上。


夜明け前の空には、ほんのりと茜が差し始めていた。




「⋯⋯セラ、こっちだ」




呼びかけに応じて振り返ると、そこには銀の髪が夜風に揺れるシラノスがいた。


深い青の上着に身を包み、胸元には小さな紋章。

その姿は、まるで星の騎士のように静かで気高い。




「そんなに遠出でもするの?」




セラが問いかけると、シラノスはふっと微笑んだ。




「⋯⋯空を、飛ぶんだよ。君と、朝日を見に」


「⋯⋯っ」




言葉が胸の奥に優しく落ちた。




「⋯⋯つかまって」




差し出された手に、ためらいなく指を絡める。


そして――シラノスの背から、淡く輝く銀の翼が、ふわりと広がった。





大空を舞うその翼は、ひとつの風となって。


冷たい夜の空気と、まだ眠っている街を見下ろして、

ふたりだけの世界が始まっていた。




「わ⋯⋯っ、すごい⋯こんなに高く⋯⋯!」




セラがシラノスの背にぴたりとしがみつきながら、目を輝かせた。




「怖くない?」


「⋯⋯全然。だって、シラノスがいるから」


「⋯⋯そっか。なら、もっと高く行こうか」




銀の翼が一層輝きを増す。


雲の上へと滑るように昇っていくふたり。


手を離さず、胸の鼓動を感じながら、

この空間がずっと続いて欲しいと思った。




「ねぇ、シラノス」


「⋯⋯ん?」




雲海の上、太陽が昇り始める直前。

世界が金に染まりゆくその瞬間。


セラは、ゆっくりと彼の胸に手を当てて言った。




「今まで、ありがとう。⋯⋯あなたに会えて、本当に良かった」


「⋯⋯俺の方こそだよ」




静かな声。




「君がいたから、俺はこの世界を、こんなにも美しく思えた」




セラの頬に、彼の指が触れる。




「セラ。⋯⋯これからも、ずっと一緒に」


「うん」


「飛ぼう。どこまでも、君と」




そして。


――朝日が、世界を照らし始めた。


空が、光に包まれる。


雲の上で、ふたりはそっと唇を重ねた。


音もなく、風にとけるように。






ゆっくりと、地上へと降り立つふたり。


ギルドの仲間たちが小さく見える中、

誰より先に、ハイネが手を振っていた。




「セラーー!! 朝帰り!? 朝帰りニャの!?」


「う、うるさいっ!! そ、そういうんじゃないからっ!!」


「ふーん? 顔まっかですよ〜? ほっぺふにふにしてあげます♡」


「やめろーーっ!!」




横では、ヴェスパーとバルドが腕を組んで無言の圧。




「⋯⋯まぁ。仲良きことは良きことかとニャ」




リファの声に、シラノスが微笑んだ。




「⋯⋯みんながいて、君がいて。俺は幸せだよ」




セラがその手を取り、そっと指を絡める。




「私も、ずっと⋯⋯あなたの隣にいる」




風が吹いた。


その風の中に、ふたりの未来が透けて見えた気がした。



──こうして、世界は今日も続いていく。


ときに激しく、ときに優しく、

誰かが誰かを想いながら。


そしてその空には、今日もふたりの翼が、静かに寄り添っている。


──Fin.




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ