番外編 箱詰め密室ロックオン♡編 4
「⋯⋯で、どうして私たち、こんなところに閉じ込められてるのかしら?」
狭い石造りの空間。空気はひんやりと湿っていて、身体を動かせばすぐに誰かの腕や脚に触れる。
ハイネは腕を組んだまま、どこか飄々とした声音でヴェスパーを見上げた。
「さっきの古代ギミック、箱に“指定重量の生体”を入れろってやつだな。⋯⋯お前、軽すぎんだよ。ギリギリオーバーして俺まで落ちた。」
「文句ある? 軽いって褒め言葉よ?」
ハイネはしれっとウインクする。
その軽さとは裏腹に、身体はきっちりヴェスパーの胸に密着していた。
というか――この箱、狭すぎる。
「⋯⋯んで、ここ開くのは“次の満月が昇るまで”ってわけか」
「それって⋯⋯あと、五時間くらいかしら?」
「長ぇな」
ふたりの間に、重たい沈黙が落ちた。
身体の向きを変えようにも、腕も脚も動かせない。お互いの呼吸が肌に当たって、微妙に熱い。
「⋯⋯ハイネ、胸、当たってる」
「えぇ、知ってるわよ?」
「知ってて⋯⋯」
「だって避けられないんだもの。だったらもう楽しんだほうが得じゃない?」
この状況をまったく苦にしていないようなハイネの余裕に、ヴェスパーはこめかみをピクつかせる。
「⋯⋯まったく、お前ってやつは」
「それとも、意識しちゃった? やーん、可愛い♡」
「⋯⋯ハイネ」
その声が、少し低くなった。
さすがにからかいすぎたかと思い、ハイネはふっと目を逸らす――が。
次の瞬間、彼の腕がぐっと彼女の腰を引き寄せ、完全に密着した状態になる。
「お前がそういう態度取ると、抑えるの難しくなんだよ」
「⋯⋯っ」
さすがのハイネも、声が詰まった。
ヴェスパーの金の瞳は、どこか獣めいた光を帯びていた。
シラノスのことを「温厚な死神」とするなら、彼はまさに「野性の龍」。
普段は抑えていた鋭さが、じわじわと漏れ出している。
(あら、これ⋯⋯もしかして、本気で“食べられる”やつ⋯⋯?)
「⋯⋯でも、」
ハイネは喉を鳴らしながら、ふっと笑った。
「箱の中でそんなことされたら、私、壊れちゃうかも」
「⋯⋯誰がするって言ったよ」
「え?」
「ここを出たら――覚悟しとけよ」
その声音は低く、熱を孕んでいて、どこか甘やかだった。
まるで、満月を待つ獣のように。




