表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空を見上げる理由  作者: 桜鬼
68/74

番外編 箱詰め密室ロックオン♡編 2



「⋯⋯⋯っ、セラ。お願い、少しだけ⋯⋯動かないで」


 


その声音は、いつもの柔らかなものじゃなかった。

低く、乾いた喉から絞るような響き――


耳に触れた吐息が熱い。

シラノスの額には、薄く汗が滲んでいた。


 


(⋯⋯ヤバい。これはほんとに⋯⋯ヤバいやつ⋯⋯!)


 


セラはほとんど呼吸もできずに、その場で固まるしかなかった。

だってもう、密着なんてもんじゃない。


胸板に当たる。太ももが触れる。腕も、頬も。

一寸動けば、そこはもう、肌と肌が直接感じられる距離だった。


 


「っ⋯⋯ご、ごめ⋯⋯」


「⋯⋯謝らないで。悪いのは⋯⋯この箱のせい」


 


シラノスの瞳がわずかに震える。

彼自身が、ぎりぎりの場所に立っているのがわかる。


 


普段は優しくて、穏やかで――

だけど今の彼は違う。


押さえ込まれた獣のように、静かに、静かに、燃えている。


 


「セラ⋯⋯」




名前を呼ばれただけで、体が跳ねる。


 


「⋯⋯ほんとは、ずっと⋯⋯こうしたかった」


 


ふっと、肩に置かれた手。

その掌が、ゆっくりと頬に添えられる。


親指が肌をなぞるたび、セラは息を呑んだ。

心臓が、ドクン、と跳ねる。


 


「でも⋯⋯俺は、ずっと我慢してた。

触れたい、近づきたい、⋯⋯そう思うたびに。

セラを困らせたくなくて、怖がらせたくなくて⋯⋯」


 


その言葉が、真っ直ぐすぎて――苦しかった。

セラだって、同じだったから。


好きで、好きで、でも踏み出すのが怖くて。


 


「⋯⋯我慢してくれてたの、⋯⋯知ってたよ」


「⋯⋯うん。だろうな、とは思ってた。セラは鋭いし」


「⋯⋯ずるいのは、私の方。

気づいてたのに、何も言えなかった⋯⋯」


 


そう告げたセラの声は、ほんの少し震えていた。

だって今、目の前で――


シラノスの瞳が、獣の色に染まりかけている。


 


「この距離、⋯⋯理性なんて、保てるわけない」


「し、シラノス⋯⋯?」


「⋯⋯なのに、セラが可愛すぎるから、俺⋯⋯もう⋯⋯」


 


ゆっくりと、彼の顔が近づいてくる。

視線が絡まり、吐息が触れ――


唇と唇が、ほんの一寸、触れるか触れないかの距離で――


 


「⋯⋯っ!? 光った!?」


 


突然、頭上から淡い光が差し込んだ。

壁の一部がふっと消え、通路が現れる。


 


「⋯⋯解除、された⋯⋯?」


「え、ちょ⋯⋯まっ⋯⋯いま!? 今なの!?!?!?」


 


シラノスが、ものすごく冷静に一歩引いた。

そして、困ったような笑みでつぶやく。


 


「⋯⋯ギリギリで止まって、よかった、かな?」


「ギリギリって言わないでーーーーッ!!」


 


セラの悲鳴が箱の中に木霊した。


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ