番外編 箱詰め密室ロックオン♡編 2
「⋯⋯⋯っ、セラ。お願い、少しだけ⋯⋯動かないで」
その声音は、いつもの柔らかなものじゃなかった。
低く、乾いた喉から絞るような響き――
耳に触れた吐息が熱い。
シラノスの額には、薄く汗が滲んでいた。
(⋯⋯ヤバい。これはほんとに⋯⋯ヤバいやつ⋯⋯!)
セラはほとんど呼吸もできずに、その場で固まるしかなかった。
だってもう、密着なんてもんじゃない。
胸板に当たる。太ももが触れる。腕も、頬も。
一寸動けば、そこはもう、肌と肌が直接感じられる距離だった。
「っ⋯⋯ご、ごめ⋯⋯」
「⋯⋯謝らないで。悪いのは⋯⋯この箱のせい」
シラノスの瞳がわずかに震える。
彼自身が、ぎりぎりの場所に立っているのがわかる。
普段は優しくて、穏やかで――
だけど今の彼は違う。
押さえ込まれた獣のように、静かに、静かに、燃えている。
「セラ⋯⋯」
名前を呼ばれただけで、体が跳ねる。
「⋯⋯ほんとは、ずっと⋯⋯こうしたかった」
ふっと、肩に置かれた手。
その掌が、ゆっくりと頬に添えられる。
親指が肌をなぞるたび、セラは息を呑んだ。
心臓が、ドクン、と跳ねる。
「でも⋯⋯俺は、ずっと我慢してた。
触れたい、近づきたい、⋯⋯そう思うたびに。
セラを困らせたくなくて、怖がらせたくなくて⋯⋯」
その言葉が、真っ直ぐすぎて――苦しかった。
セラだって、同じだったから。
好きで、好きで、でも踏み出すのが怖くて。
「⋯⋯我慢してくれてたの、⋯⋯知ってたよ」
「⋯⋯うん。だろうな、とは思ってた。セラは鋭いし」
「⋯⋯ずるいのは、私の方。
気づいてたのに、何も言えなかった⋯⋯」
そう告げたセラの声は、ほんの少し震えていた。
だって今、目の前で――
シラノスの瞳が、獣の色に染まりかけている。
「この距離、⋯⋯理性なんて、保てるわけない」
「し、シラノス⋯⋯?」
「⋯⋯なのに、セラが可愛すぎるから、俺⋯⋯もう⋯⋯」
ゆっくりと、彼の顔が近づいてくる。
視線が絡まり、吐息が触れ――
唇と唇が、ほんの一寸、触れるか触れないかの距離で――
「⋯⋯っ!? 光った!?」
突然、頭上から淡い光が差し込んだ。
壁の一部がふっと消え、通路が現れる。
「⋯⋯解除、された⋯⋯?」
「え、ちょ⋯⋯まっ⋯⋯いま!? 今なの!?!?!?」
シラノスが、ものすごく冷静に一歩引いた。
そして、困ったような笑みでつぶやく。
「⋯⋯ギリギリで止まって、よかった、かな?」
「ギリギリって言わないでーーーーッ!!」
セラの悲鳴が箱の中に木霊した。




