姉という悪魔
瀬能「”おねショタ”っていう言葉ありますが、」
皇「なんの話だよ?」
瀬能「・・・・”おねショタ”知らないんですか? イシバさんが大臣時代、国会で、ネットリ説明したじゃないですか? ”まずぅ、おねショタとはぁなにかぁ~、と、言う定義をぉ~”」
皇「してねぇよ。誰が国会で質問するんだよ?」
瀬能「だから私が言いたいのは、姉という存在は悪魔そのものだ!って事ですよ。姉なんてこの世から消えてなくなればいいのにぃぃ!」
皇「・・・・・お前、上に兄弟いたのか?」
瀬能「え?ええ。まぁ。・・・・そういう設定はありますけど。」
皇「設定って何だよ?」
瀬能「姉って何なんですか?あれ? なんかいつも偉そうにしてるし、機嫌悪いし、お前、毎日、生理か!って話ですよ。」
皇「まぁ。言いたい事はわかるけど。・・・・そんなに世間の”姉”を敵に回さなくても。」
瀬能「あれですよね。親でもないのに、親と同じこと言ってくるし、上から目線で、偉そうな態度だし。
私、思うんですけど、あいつ等、」
皇「あいら等?」
瀬能「親と同じ事、言ってくるじゃないですか。同じ、兄弟なのに。ちょっと先に生まれただけなのに。偉そうに。
しかもですよ? 親はまだ、私を養ってくれているじゃないですか。お金をかけて、養育してくれている。
でも、姉は、養ってくれていません!!! 態度だけ横柄で、命令しかしない!!! 偉そうな態度を取るなら、まず、金を出せ!私を養育してから言えぇぇぇぇぇえええ!」
皇「まぁまぁまぁまぁ。まぁ、お前の言いたい事は分かる。ちょっと先に生まれただけで、な。」
瀬能「ちょっと先に生まれただけで、界王様ですよ。神様ですよ。
あいつ等は、殺生与奪の権利を持っているから、強気なんです。・・・・・悔しい、私は、悔しいです。あれは、親が悪いですよ、親が。」
皇「今度は親か?」
瀬能「自分達が楽したいから、姉に、下の兄弟の世話をまかせるじゃないですか。兄弟なんだから大して歳が離れていないですよ?こっちは生まれたばかりの赤ちゃん。どうする事も出来ません。
生かすも殺すも、姉次第ですよ。あの時、既に、私の人権は剥奪されたのです! 姉の気まぐれ一つで、白が黒になり、黒が白になる。
私達、下の兄弟は幾度となく、姉に、煮え湯を飲まされてきました。
お前のシュークリームは生涯、私がいただく!とか言って、私のシュークリーム、食べちゃうんですよ?どこにそんな権限あるんですか?国連で、姉の人権を剥奪すべきです!」
皇「・・・面倒見てもらったんだから、いいじゃねぇか?」
瀬能「面倒?面倒見てくれるわけないじゃないですか? 何も出来ない私。赤ちゃんの私。泣けばどうにかなる温かい家庭と違い、泣けば、ずっと泣かせておく。泣き疲れて泣くのをやめるまで放置。・・・・私は、生まれてすぐ悟りを開きました。この世の無常を。泣いても、喚いても、誰も助けてくれない。いるのは、無関心な姉だけ。赤ちゃんの私が隣で泣いているのに、お笑い番組見て、ケツをポリポリかきながら、かっこいい彼氏が欲しい~とか、妄想をのたまわっているんですよ?頭、おかしいですよ!」
皇「まぁ・・・なぁ?」
瀬能「それに。それにですよ、世話という名の下に、私の一切の恥部を、見られました。体中、ぜんぶです。あらゆる恥部を、撫でまわされるように見られました。
今時の捕虜に同じ事をしたら、軍事裁判で、国際的に大問題になりますよ。捕虜に人権があるのに、私達には人権が無い!」
皇「恥部恥部うるせぇなぁ」
瀬能「お尻の穴も、おしっこの穴も、全部みられました。・・・・・拷問で裸にされて、羞恥心を奪う、外道な行為があると聞きますが、まさにそれです。私はこの、姉に虐げられた屈辱を忘れません。私の体は自由に出来ても、私の自由なる精神を奪う事は、不可能なのです!」
皇「一応、・・・・・ツッコんでおくけど、オムツを交換するとなりゃぁ、陰部を綺麗にするのは当然だろ?」
瀬能「おねショタなんか、私からすれば、姉の通常運転ですよ、あんなの。日常茶飯事。あれですよね、世の中の年下の人間。全部、子分かなんかだと勘違いしていますよね、姉は?
姉は、博愛的だとか、母性本能があるとか、そう偽善的に語られていますが、間違っています。本質的に、姉は、常に、上位に立ちたがる。カーストのテッペン。女王様なんですよ。
もう、とにかく楽がしたい、思い通りにしたい、人をアゴでこき使いたい、浅ましいったらありゃしない。」
皇「でもあれだろ?母親も、姉ちゃんだから下の兄弟の世話を任すんだろ?兄貴じゃぁ、任せられないだろ?女だから任すんだ。・・・・男と女で差別しちゃダメだとは思うけど、姉ちゃんの方が下の兄弟の面倒見が良い気はするからな。母親だって、女だし。」
瀬能「・・・・そこが盲点なんですよ。確かに姉は、全年下の人間に対し絶対的な姉パワーを持っています。姉オーラと呼ぶべきか。それは、姉というジョブのアビリティだと考えられます。それが発動すると、全人類、妹と弟は、何故かあのオーラに逆らえなくなるのです。
あれは恐ろしい。全人類を支配する力を持っているのです。
博愛的で母性的。それは確かでしょう。ですが、さっきも話したように、姉は、それと引き換えに、私達、歳下の人間の、一切の権利を奪うのです。その瞬間、姉は神であり、悪魔と化すのです。姉は、事実上合衆国大統領よりも権力のある、地上の支配者。
誰も姉には逆らうことなど、許されません。」
皇「言い過ぎだろ?」
瀬能「甘いですよ。姉は絶対的指導者。姉が靴を舐めろと言えば、甘んじて舐めますし、まだ、靴を舐めろぐらいで許されるならば良い方です。
姉は、”木曜日なのにジャンプを読みたい”とか、無理難題を吹っかけてきます。木曜日ですよ?今週のじゃないですよ?当然、来週のジャンプです。頭、おかしいんですよ、姉は?」
皇「せめて、サンデーかマガジンだよな。ヤンマガか、ヤンジャンぐらいにしてもらわないと。」
瀬能「私達は一休さんじゃありませんよ?気の利いたおべっかで、姉を誤魔化せられれば運の字ですが、姉の気まぐれの前では、全てが無に返るのです。せめてその命題が金曜日ならば、なんとかなるんですが。地元の、よく分からない食品やら日用品を売っているお店に、一冊か二冊、ジャンプが入るんです。あれなんですかねぇ、あそこのおばちゃん、集英社の知られたら困る秘密でも握っているんでしょうか?」
皇「知らねぇよ」
瀬能「チューペットとかパピコとか、食べたくもないのに、自分が食べたいから、半分、食え!って渡されるし。
死ぬまで、縄跳び、させられましたし。」
皇「ああ、子供って、女の子って、縄跳びと一輪車、好きだよな。あと、変な、真ん中で曲がる、スケボーみたいなやつ。・・・・男の子でやってる子、見たことないけど、女の子はだいたいみんな、やってるよな? 伝染病か何かか?」
瀬能「姉の命令ですよ。姉の。・・・・あんなの、何が楽しいのか分かりませんよ。姉が、やれ!っていうから、仕方なく、やっているんですよ。接待縄跳びですよ。姉は、綾飛びを三重で出来るんで、それを行ったら、問答無用で拍手です。オリンピックのフィギアスケート並みに、拍手喝采ですよ!分かりますか?芸術点と技術点を述べながら、褒める。私達は、姉より凄い技。難易度の高い技をやってはいけない暗黙のルールもあります。
姉の機嫌を損ねてはいけないからです。」
皇「・・・・お前、大変だったんだな。」
瀬能「大変どころの騒ぎじゃないですよ、地獄ですよ、地獄。この世の地獄です。
その地獄は、一生、続くんです。
何歳になっても、実家に帰れば、お前のオムツを変えたのは誰だと思っているんだ?って言われるんですよ、例えば、婚約者の前でとかで。
ずぅぅぅぅっと、言いますからね。六十、七十のババアになっても言いますからね。こっちもババアなのに。
そもそも、お前、オムツ変えたんか?って話ですよ。一回か二回、オムツを変えたくらいで、ずぅぅぅぅぅぅっと、言ってきますからね。お前のケツ拭いたとか。ウンコが臭かったとか。
赤ちゃんだから当然でしょう?
・・・・あのねぇ、もう、なんにも怖くないんですよ。私は、姉の奴隷として育ってきたから。社会の大抵の事は、水に流せます。姉の理不尽な要求に比べれば、笑って許せる話ですよ。
よく、市営のプールにある、安全設計無視したウォータースライダーあるじゃないですか? 飛べ!って言われたら、飛ぶしかないんですよ。分かります?齢、四歳で、死の宣告を受けた、その気持ちが。
あれは悪魔です。狂気です。・・・・人間の皮をかぶっていますが、人間ではありません。」
皇「・・・・人間じゃぁ、ないのか」
瀬能「私はまだ女だからいいですけど、聞いた話だと、生理用品を買ってこいと命令された弟君の話を聞きました。思春期の男の子に、生理用品を買いに行かせるんですよ? わざとですからね、わざと。彼が恥ずかしさに苦しむ様子を楽しんでいるんです。どれだけサディストなんですか、姉っていう奴等は。」
皇「それは嫌だなぁ。」
瀬能「コンドーム買ってこいっていうのも、当然、あるそうです。」
皇「血のつながった兄弟のセックスを連想させるものを、買いに行かされるのは、脳が破壊されるな。」
瀬能「当然、弟君に対しても、オムツを変えた話もするし、性器を綺麗に拭いてあげた話もするんですよ。笑いながら。」
皇「・・・・・」
瀬能「たぶんですけど、あれは、生かしておいてはいけない生き物だと思います。世の為、人の為に。そして私の自由の為に。
シスター・オブ・ダイ!」
皇「・・・・・お前、ほんと、何かあったのか?」
瀬能「・・・・・実家に帰ったら、姉に捕まりまして。永遠に、子供の頃のつまんねぇ話を聞かされました。だいたい姉が活躍して、私が失敗する話ばかり。」
皇「・・・・そうか。」
※全編会話劇です