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8、まさかそんな!

 竜王様に会ったところまで戻ってみると、魔石が散乱していた。


 そういえば、敵の魔石を取り忘れたな。


 僕がさっき倒した敵から取り忘れた魔石は帰りに回収することにした。そもそも、僕は無事に帰れるのだろうか。いや、もちろん家に帰りたいのだが、竜王様が許してくれるのかは怪しいところだ。


「よくぞ、戻ってきた」


「ありがとうございます?」


 さっきとは雰囲気が違う。何かこう、ザ・竜王みたいな感じになっている。さっきまで家でゴロゴロしている猫みたいだったのに、虎みたいに勇ましくそびえ立っている。


 それに、右にいるのは僕が回復魔法をかけた子か。やっぱり、竜人だから体力の回復も早いのだろうな。うーん、やっぱり何か言われるのだろうか。面倒事をふっかけられないといいんだけどな。


 2人とも、元気になると魔力の質が全然違う。そこらにいる魔物の魔力は僕に当たって砕ける感じだけど、あの2人の魔力は僕の体を貫いている感じだ。だから、魔力を抑えているのだろうが、僕には体の中からジワジワと不快感が染み渡っている。


「さっきの威勢はどうした?怪我でもしたか?」


 ファイアーボールの威力から、この竜王様の力の片鱗は見た。まだまだ片鱗だったが、それでもスゴかった。正直、僕なら1撃耐えられればいい方だろう。


 それにしても、さっきとまるで口調が違う。


 僕を労っているのだろうが、ちょっと怖い。さっきまで唸っていた虎が牙をむき出すのではなく、背中を丸めて(じゃ)れ付いてきたら怖いだろう。それと同じだ。まあ、竜と虎を一緒にはできないが。


 あれ、どんな感じで話すんだっけ......。


「どうした、何かあったか?」


「あ、いえ、僕は無傷ですよ。それで、竜王様は大丈夫でしたか?」


「竜王様か......まあ、良い。先ほどの手助け、感謝する。おかげで、娘を助けることができた。」


 あの口調はこういうことか。別に感謝してもらうほどの事じゃないんだよな。


 勝手に達成したアチーブメント報酬で獲得した、スキル『ドラゴンズ・パワー(火)』でファイアーボールを一発撃っただけなんだよな。


 それに、このスキルを獲得できたのは、竜王様が僕を勝手に友人だと思ったからなんだよね。つまり、僕はただ洞窟を歩いていただけだった?


 こう思い返してみると、一歩間違えたら僕は殺されていた気がする。勝手に家に侵入して、警告も完全に無視して、その上に無許可で娘さんに回復魔法をかけたんだ。僕が竜王様だったら、確実に1発くらい魔法を撃っている。その1発で僕も......。


 今度からはフィリアさんの言う事を聞いておこう。


 うん、それがいい。まだ13歳だし、痛いのはイヤだし、痛いとか関係なく死にたくないし。よく考えてみると、この状況はマズいのでは。目の前には竜王様がいるし、洞窟の壁に音が反響しまくって洞窟からも圧力を掛けられている。


「いえ、僕の助けなんか無くても大丈夫だったかと」


「魔物どもはそうかもしれないが、娘の方は別だ。我らは回復魔法を使えないからな」


「そうでしたか」


 どうやって家に帰ろうか。考えれば考える程、頭の回転が遅くなっていく。深呼吸しようにも、体に上手く力が入らない。


 この感じ、おそらくさっきの魔法で魔力をほとんど消費したのだろう。いつもなら、弱い魔物が相手だから、魔力をここまで消費することは無いのだが。冒険者になるんだから、魔力残量を気にしながら戦わないとな。


 とりあえず、面倒事に巻き込まれる前に帰らなくては。それに、魔力が枯渇しかけていて、疲労が一気に回ってきた。


「それで褒美についてだが」


「いえ、僕は要りませんよ」


 遠慮がしたいわけじゃない。むしろ、貰えるものは全て貰いたいのだが、相手が竜王だと話は別だ。


 もし礼代わりに魔法を教える、なんて言われた日には僕の生活が滅茶苦茶になる。竜王と知り合いってだけでも敬遠されそうなのに、子弟関係になったら国から見張られかねない。


 そんなの絶対に御免だ。見た感じ、金銀財宝があるってわけでも無さそうだし、竜王の機嫌が良いうちに洞窟から離れてしまおう。


「それは置いといて。我の娘が冒険、つまりこの洞窟の外に行きたいと言っていてな。どう思う?」


「経験があるのに越したことは無いと思いますよ」


「そうであろう。いつになるかは分からないが、その時には少々助けて欲しいのだが」


 まあ、魔法を教えられるよりかは、まだ未定の街案内の方がマシだな。最悪、どこかに隠れれば逃げられそうだし。


 それに、その頃には僕のことなんて忘れているだろうし。


「その時になったら教えてください」


「では、礼と言っては何だが、我の娘を頼む」


「!?」


 家に帰るために、後ろを向こうとしていた足が止まった。正確に言うと、凍り付いた感じがする。


 今、なんて言った?


 僕の頭によぎった1つの可能性を頭の中から追い出しつつ、深呼吸することにした。こういう時は深呼吸をするのが一番なはず。


 我の娘を頼む、みたいな言葉が聞こえたのだが......。まあ、気のせいだ、気のせいに決まってる。だって、ついさっき出会ったんだぞ。それに、竜じゃなくて人間だぞ。無い無い、そんなこと絶対にありえない。


「もう一度言う、娘を頼む」


「......」


「何か不満があるのか?我の娘に言いたいことがあるなら聞いてやろう」


 だんだんと声が険しくなってきた。魔力の放出量も上がってきているし、僕への配慮が減ってきた。


 予想の斜め上を行くことが起きて、真っ白になりかけている僕の頭でも分かる。このままだと殺される。いや、そんなに生易しくない。このままだと森ごと消される。


 もう1つしか選択肢が無い。それも予想していた最悪よりも悪いのが。


「いえ、特に無いです」


「娘を頼めるな」


「っ......はい」


 その瞬間、パッと洞窟に満ち溢れていた魔力が消え去った。これで竜王様に殺されることは無くなったが、周りの人からは白い目で見られそうである。


 面倒事には巻き込まれたくなかったのだが、もはや面倒事じゃ済まない事に巻き込まれてしまった。お礼というより試練だ。


「私はレベッカ。では行きましょう」


 うわっ、見た目通り気が強いらしい。分かりやすく言うところのツンデレだ。上手く扱わないと、これからの生活が地獄になりそうだ。


 というか、彼女の荷物が見当たらない。アイテムボックスとかに入っているのだろう。逆にそうじゃないと困る。服1セットで生活ができるわけ無い。まあ、フィリアさんの魔法は一瞬で洗濯できるのだが。


 そもそも、彼女に人間の常識は通用するのか?万が一でも、父さんに喧嘩でも売ったら、僕もろとも怒られてしまう。人間の常識、少なくとも礼儀作法についてはしっかり言っておかなければ。まずは好印象を持たれることが重要だろう。

まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。


もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。


ぜひ他の作品も読んでみてください。

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