21、初依頼達成!
レベッカさんの後を追っていくと、確かに彼女の機嫌が悪いことが分かった。
いつもなら無視して素通りするような魔物にも逐一、魔法を放っている。
ゴブリンの偵察隊なんかに遭遇した時は最悪だ。レベッカがオーバーキルしたゴブリンの血みどろな遺体を見なければならない。おかげで、食欲は減ってたので、食料を温存できていて助かるのだが。
歩く、いや走ること数時間。レベッカさんの八つ当たりの標的になった可哀想なゴブリンをアイテムボックスに入れつつ、森の中を進んでいくと村が見えた。ただし、住んでいるのは人間では無い。
草むらに隠れたレベッカが魔法を詠唱し始めた。敵の中に突っ込んで行かないくらいの冷静さはまだ残っている。しかし、僕はレベッカが10秒を超える詠唱をしているのは見たことが無い。基本的に、詠唱が長いほど効果が高い魔法が放てる。
僕は諦めた。
レベッカが見えると言っても、スキル『千里眼』を使っての距離だから、300mくらいは離れている。森の中で道じゃないところを300m進むのは楽じゃない。
つまり、僕ができる最善の選択はこうだ。
「スキル『絶対防御』、『火属性耐性』」
このスキル『火属性耐性』は、『火炎に立ち向かいし者』というアチーブメントを達成してゲットした。ちなみに、達成条件は高ランクの火属性魔法を50回受け止めるだ。
まあ、僕の『絶対防御』を持ってすれば、そこまで難しいことでは無い。
......はずだったのだが、全てを僕の結界で止めていると、レベッカの不機嫌さがジワジワと滲み出てくるので、数発は気合で避けなくてはならない。おかげで、スキル『回避』が覚えられたので、お礼を言うのか文句を言うのかで悩む練習だった。
僕が防御の準備ができたのだが、レベッカの詠唱が終わらない。
彼女の周りにも敵の頭上にも、少しも魔法が見当たらない。
グラッと地面が揺れた。その瞬間、彼女は腕を地面に向かって下ろした。
ドッッガガァーーン
僕はスキル『音足』を使いながら走っている。僕に襲いかかっているのが振動なのか音なのか光なのか、もうわけが分からない。後ろは見ないほうが良いと、僕の本能が叫んでいる。
竜人のレベッカならまだしも、人間が耐えられるようなものでは無い。皮膚からピリピリ凄まじい魔力を感じる。
今日2回目の昼が来た。
別に月が吹き飛んだとかでは無い。ただ明るいのだ。
もう、わけが分からない。これは強力な魔法では無く、災害だ。レベッカの魔法を放たれた魔物は、自分に魔法が当たったと感じる前に消滅していそうだ。
本人曰く、ゴブリンキングがいた周囲は消し飛んでしまったから、土魔法で誤魔化したそうだ。ここから見える、さっき突然できた山に関係が無いと良いのだが。
この魔法を放った張本人は素知らぬ顔で、ご飯を食べている。
「ルイ、これ美味しくないわ」
つまり、それは早く街に帰りたいという意味なのだろう。
しかし、僕がさっき早く街に帰りたいと言ったとき、明らかに機嫌が悪くなった。
相変わらず何を考えているのか分からない。
「じゃあ、街に帰る?」
「え、いや......」
レベッカは僕と手に持っているパンを交互に見ている。僕を見る時は何か言いたげな表情、パンを見る時は溜め息を付きそうな表情だった。
珍しく悩んでいるようだったが、少しずつ落ちていた彼女の視線が僕の足元まで下がったとき、ゆっくりと口を開いた。
「また......」
「何か言った?」
息を鋭く吸うと、僕の少し横に目線を合わせた。
「また2人で、ここに来れる?」
「来れるよ」
「そう。なら、街に帰りましょう」
本当にころころと機嫌が変わる。今度は弾んだ声で、僕の方を見ながら言った。
「転移で一瞬で街に戻れないの?」
「できるよ」
「あら、本当にできたのね。やっぱり言ってみるものね」
カマをかけられたわけだが、まあ、いちいちそんな事を気にしているほど暇では無い。
それに、僕は早く美味しいご飯が食べたい。
他のパーティーのことも気になるが、そんな面倒なことが食欲に勝てるわけが無い。
「スキル『瞬間移動』」
目の前が光ったかと思うと、僕たちが2日前に出発したシルリアの街にいた。辺りはすでに暗くなりつつある。
暗くなる前に冒険者で依頼の達成報告をして、食事と宿代を貰わなければ。
あのひんやりとした金属の触り心地が懐かしい。
良い匂いにつられて道を外れそうになりながらも、やっとの思いで冒険者強化に着いた。
受付に座っているリーフィアさんを見ると、やっと帰ってきたという実感が湧いてきた。
他の冒険者が食べている串焼きを皿から盗みそうになる右手を抑えつつ、小走りで受付に駆け寄った。食べたいものが頭をよぎっている。
「依頼達成しました!」
「証拠を提示していただいても?」
証拠ならバッチリ回収してきた。しかし、ここで見せられるようなものでは無い。
なにせ、レベッカが大魔法をぶち込んだせいで、相当グロいことになっていると思う。僕は目をつぶってアイテムボックスに入れたから、まだ見ていない。
見る必要が無いなら、絶対に見たくなかった。
「さあ」
「......はい、どうぞ」
1歩、2歩、3歩くらい下がってから、受付の前にアイテムボックスから取り出したゴブリンウィッチを置いた。
僕はくるっと後ろを向いて査定待ちである。
後ろで何をしているのか気になるが、見ると必然的にゴブリンの無惨な姿が目に入ってしまう。
「証拠を確認しました。では、依頼完了と素材分で銀貨13枚です」
この世界の相場としては、1日の宿・食事代が銀貨3枚程度。
つまり、丸2日で銀貨13枚稼げたというのは十分だということだ。
中身以上にずっしりと感じる財布をアイテムボックスにしまって、目指すはリーフィアさんが教えてくれたおすすめの宿だ。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。
ぜひ他の作品も読んでみてください。




