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color~色の異世界冒険記 第9話 悪魔と石像

 辺りはすっかり日も落ち、懐中電灯の明かりを便りにやって来たのは、境内の奥にある洞窟であった。さっそく中へと入ると、ゴツゴツとした岩の間から風が差し込み、外よりも割と肌寒いのであった。


「皆さん、こちらをご覧下さい、これが何か分かりますか?」


 視線の先にあったのは、行方不明の少女とよく似た石の像だった。なんと精巧に作られた石像だろうか。不気味に照らされた表情は何かに驚き、そのまま時が止まったかのようである。


「とても良くできた像ですね。なんだか今にも動き出しそうなくらいです」


 怯えるどころか興味深そうに話す琉花に反して、友人達は背筋も凍るような思いであった。それぐらい、目の前にあるものがリアルだからであろう。


「そうなれば良いのですが…。まあ、私はそれを望んでいるのです」


「…いったいどういう事ですか?」


 伽耶が訳も分からず彼に問いかけたその時である。背後からゆっくりと忍びよる怪しげな足音に気付いた三人は、思わず後ろを振り向いた。


「へへへ、ご苦労だったな神主さんよ」


 目の前に現れたのは奇妙な姿をした化け物であった。


「いやあああ!!」


 琉花が叫び声をあげて紗央里に抱きついた。大きく尖った耳に、ぎょろりとした大きく丸い目、やせ細った体をしたその見た事もない化け物は、彼女達を眺めながら不敵な笑みを浮かべていた。どうやら今回ばかりは、琉花の好奇心が裏目に出たようである。


「あんたはいったい誰なの?」


 いつも強気な紗央里でさえも、恐怖のあまり声が裏返ってしまう。見たこともない化け物を前にしては、さすがの彼女もお手上げといった様子だ。


「俺の名はホーラー。悪魔の国からこの世界へと召喚された者だ。そこの女、お前が俺を呼び出したのさ。お陰でようやく手柄を立てられそうだ」


 悪魔が指差したのは伽耶であった。なんとなくそんな気がしていたが、いずれにせよ、意図的に奴を呼び出した訳ではない。


「はあ?知らないから。てか、私あんたなんか呼んでないし」


 きっと例の黒い本を落とした時に違いない。その時、偶然にも悪魔が呼び出されたのだろう。


「いや、そんなはずはねえな。だいたい、普通の人間には悪魔を召喚するなんて出来やしないし。なあ、お前が伝説の選ばれし者なんだろ?」


「だから、私は知りませんから!勝手に人の事選ばないで下さい。あと、指差すのもやめて下さい」


 伽耶が珍しくむきになって声を荒げる姿を、友人達はただ呆然と見ていた。もはや、事があまりにも現実離れしているので、思考が追いつかないようである。


「まあ、構わないさ。あんたがcolorに来られると、ちょっとまずい事になるらしいんでな。だから、とりあえずこの子には石になってもらった。仮に偶然であっても、お前が俺を呼び出したんだからな。神社の娘が居なくなれば、必ずここに来ると思ったのさ」


 なんという事であろうか。もはや信じるしかないのだろう。普通では考えられないないはずのことが、突如、彼女達の前に現実としてのしかかったのだから。


「とにかく朱莉さんを元に戻してほしいだけなの。お願いします」


 真面目な琉花はその奇妙な生き物に軽く頭を下げた。その姿を見た悪魔は、この国特有の礼儀作法にやや胸を打たれた様子であった。


「いやいや、そこまでせんでもいいが…。分かった、とりあえず今回の記憶は、俺が預かるとしよう。そうすれば綺麗さっぱり物事は収まるって話よ」


 悪魔は、三人の記憶を抜き取り、自分がそれを預かる代わりに、朱莉を元に戻すという条件を出した。


「それで娘を助けてもらえるのですか?分かりました…もちろん、皆さんは構いませんよね?」


 確かに、それは何も問題がないように思えるのだが、紗央里だけは違って、やや困惑した表情を浮かべながら、このように言った。


「じゃあ、もしそうなったら、どうして私達三人がこんなところにいるのか分からなくなるし…だいたいあんたがウチらの頭の中を覗くって事だよね。それってさ、十分セクハラってやつだと思うけど」


 それを聞いて悪魔は相当頭にきた様子で、ついにはこう言い放った。


「うるさい、何が言いたいんだ!それじゃあ俺が悪者みたいじゃねえか」


 いや、お前は十分悪者だから。だいたいお前は悪魔じゃねえか!そんな事を考えながら彼女達は一歩ずつ後退りをした。


「ホーラー様、どうか気を沈めて下さい。だいたい彼女達が何をしたと言うのでしょうか」


 神主が無神経にも水さすような事を言ったので、ホーラーの怒りは頂点まで達してしまったのであった。


「くそう、どいつもこいつも俺を悪者扱いしやがって。これでもくらえ!」


 ビビビビ…


 悪魔の手から紫色の光線が放たれる。三人はばらばらに散りそれを避けると、今度は伽耶に向かって再び光線が放たれた。


「危ない、気を付けろ!」


 神主の叫び声はただ虚しく響き渡り、もはや絶対絶滅の彼女であった。


 


 




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