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color~色の異世界冒険記 第7話 一郎の疑惑

 マジックショーを観るために占いの館へとやって来た三人。そこで占い師の女性に各々占ってもらうが、伽耶は異国の地に旅立つのだと言われ、唖然としてしまう。その後、ショーは紗央里の不安をよそに、大盛況で幕を閉じたのであった。

 

 マジックショーが終わり、占いの館をあとにした三人は、とりあえず最寄りの喫茶店に場所を移し、飲み物片手に話し込んでいた。


「面白かったわね紗央里、あなたのお父さん素敵じゃない。とても感動したわ」


 琉花は満足げな表情を浮かべて、ブロンズ色に染められた自分の髪を右手でかきあげた。その無造作なセミロングの髪が、彼女のトレードマークだ。


「まあ、今日はどうなるかと思ったけど、とりあえずセーフってところかな」


「ところでさ、紗央里はなんでそんなにお父さんがマジックやるのが嫌なの?」


 確かに紗央里の父が言うジョークはあまり笑えない。それでも、本人が楽しみでやっているマジックを、何故そんなにも嫌がるのだろうか。それは伽耶にとって長年の疑問だったのである。


「実はね、あの人は、お客に若い女がいると、やたらといじりだすの。それと、マジックで稼いだ金でキャバクラ通いをしてるんだよ」


「まあ、やだわ。呆れたおじさまね」


 さすがに、それを聞いた琉花は気持ちを察して、占いの話に話題を変えた。しかし、虚しくもそれは上手くいかず、今度は伽耶までもが憂鬱そうである。


「でも、三人で海外暮らしなんて、なんか楽しそうよね。いったいどこの国へ行く運命なのかしら」


「琉花はいいよね、だって英語も話せるし、前から海外暮らしがしたかったんだからさ」


「伽耶の言う通り!私達は琉花と違うんだからね」


 結局2人は黙り込んでしまったので、琉花はなんとかしようと、再び話題を変えたのだった。


「そういえば、行不明事件ってまだ解決していないんだよね」


「ああ、琉花も知ってたんだね。実は今結構大変なことになっていて…」


 実は、伽耶がテレビで見たあの事件は未だに解決しておらず、少女は依然として行方不明のままだった。朱莉(あかり)というその少女は、伽耶達が住む町にある神社の一人娘で、伽耶達も度々その神社を訪れていたこともあり、よく知っているのだった。


「そうか、店長が疑われているって訳か。確かに、最後の目撃情報って本屋の近くだからね。前からあの人が怪しいと思ってたんだ」


「もう、紗央里ったら。まだ、店長さんが犯人と決まったわけじゃないでしょ。証拠がないのに疑うなんて…そうだわ!確かめればいいのよ。とにかく今から神社へ向かいましょう。何か情報が掴めるかも知れないわ」


「まじか…まあいいけど、んじゃ、私の車で行くしかないな。ねえ、伽耶も行くよね」


「…うん、別にいいけど」


 町を抜けて直ぐに、辺りは田んぼ道となり、車は林道を目指して前へと進んでいた。外は変わらず天気が良く、紗央里が運転するワンボックスの軽自動車は視界も良好である。しかし、朝から琉花に振り回されていた彼女達は、やや困惑気味なのであった。

 あんな汚らしいオカルト本や怪しい妖精の本などを置いているから、余計に疑われるのだ。最初から普通の本屋で働けば良かった。だいたい、ここで働いているのもとりあえず紗央里の家が近いからではないか。

 もちろん、最初は美術関連の書籍が揃う書店だからと期待していたのだが、結局変なものばかり置いている店な訳だし、そのうち客足も遠のくだろう。伽耶が助手席で一人そんな事を考えていると、気付けば目的の神社へと続く裏山に差し掛かっていた。


「ところで琉花、どうして神社になんか行くわけ?とりあえず、最初は町で聞き込みをした方が良かったんじゃないの?」


「分かってないわね紗央里。朱莉さんがいなくなった時に、付近で怪しい人物を見かけた人は誰もいないらしいじゃないの。という事は、家出の可能性もあるわ」


 山の中腹にあるその神社は、自然の恵みに感謝する場所として、古くからこの地に根づいている。地域の憩いの場としても大切にされており、学生や地元の有志がボランティアに訪れては、定期的な清掃活動や観光客に向けたガイドなどを行なっているのだ。そして、伽耶と紗央里が最初に神社を訪れたのも、まだ2人が中学生の頃である。


「それでさ、伽耶の靴下に穴が開いていたわけ。それの臭いときたら…」


「やめてよ紗央里、そんなの覚えてないんだから」


「まあ、いったいどんな臭いがしたのかしら」


 伽耶達が思い出話しに花を咲かせていると、視線の先には白い文字で書かれた標識があり、そこを曲がったところにある駐車場に入り車を停めたのであった。


 その頃、山百合書店では店長の一郎が、電話口で何やら話し込んでいた。


「やあ、一郎さん久しぶりだね。実は晶子のことなんだけど…」


 電話の相手は、晶子の夫サブローであった。どうやら晶子が病院に行った日の夜、彼は急いでかけつけたのだが、自分の妻に話を聞いても、何も覚えてないの一点張りだったのだ。確かに晶子は鍵を見た後の記憶が全くなく、あのような恐ろしい状態であった事など分かるはずもないのである。そんなわけで、店側の対応に不信感を抱いたサブローは、とうとう電話してきたのだった。


「サブローさん、お久しぶりです。あれから晶子さんの様子はどうでしょうか?」


「まあ、晶子はとりあえず元気だよ。ところで話っていうのはこの間の件なんだけど、あなたから聞いたバイトさんの話がやっぱり気になって。その事が、どうしても引っかかるんだよね」


「何と言って良いか、確かにあの日は晶子さんが気を失ってしまったんです。でもそれは何というか、きっと凄く気が動転していたのかもしれません」


「なるほどね。とにかく、うちの晶子が店の部屋に勝手に入ったなんて、それは絶対あり得ないと思うがね」


 一郎はとりあえず納得してもらうために、地下へは伽耶が案内したが、彼女はとても混乱していた為、記憶が曖昧なのだと説明した。すると、自分の妻に責任が無いと分かったからか、サブローはとりあえず落ち着いたようで、その後どうにか電話をきったのであった。ようやくことが収まると、彼は安堵のため息をついたのであった。


 ※もしよろしければ評価の程よろしくお願い致します。






 





 

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