傷弓の鳥
暗闇に1人蹲っていた。
もう自分のせいで大好きな居場所を失いたくない。
大好きになることでしんどい思いをするなら好きになる前に離れよう。
でも、離れようと思った時にはもう思い入れがある。
ここにいたいと少しでも思ってしまったらもう自分から離れるのが辛い。
だから誰とももうか…
「…きて」
誰だ?どこに行くんだろう。
「…きて!おきて!
起きて!ヒイラギ!」
「ハッ!」
「大丈夫…?すごいうなされてたけど。」
「え、えっと…」
落ち着け。大丈夫、深呼吸。
昨日私は死んで、異世界に転生して、獣人の村に連れられてきた。
よし。
「うん、大丈夫だよ。起こしてくれてありがとう。」
「目が覚めてよかった~
全然起きないから心配したよ。」
「ごめんね。」
私はカルミアの頭を撫でた。
「朝ご飯できたから起きて!一緒に食べよ!」
「うん。わかったよ。」
そんなに寝てしまったのかな。
ベットを下りてカルミアについていった。
カルミアのお母さんが朝食の準備をしていた。
「おはようございます。すみません、大分寝ちゃってたみたいで…」
「いいのよ。昨日は遅かったし、疲れてたんでしょ。
ほら!冷めないうちに食べちゃって!」
「朝ご飯まで…ありがとうございます。
いただきます。」
「いただきまーす!」
朝ご飯を食べながら考える。
昨日私はどうやってここまで来た?
宴でみんなでワイワイしてるところまでは覚えてるんだけど、そこからの記憶が曖昧だ。
それに何だったんだろう。さっきの夢。
あんなの初めてみた。
違う。何だろうじゃない。夢では初めてだけどあれは私の…
「ヒイラギ!どうしたの?ボーッとして。」
「え、いや。何か頭が働かないっていうか。
昨日私ってどうやってここまで来たんですか?よく覚えてなくて…」
「ふふっ、ヒイラギ昨日酔っ払ってたもんね!」
カルミアに笑われる。
カルミアのお母さんにも笑われてた。
そんなに酔っ払ってたのか?
「昨日、私が離れた後に他の人達に結構飲まされたみたいでね。それで宴が終わる頃には潰れちゃってたのよ。私は片付けで手が離せなかったんだけど、フセルがこの家まで運んでくれたのよ。」
フセル?
「そうだよ!みんながあー潰れちゃったかーってなってたらフセルが来て運んでくれたんだよ!」
フセル?…フセル…フセル………
あ!昨日村の入り口で会った人の子供か!
そっか、その人が運んでくれたのか。
というか、私そんなに飲んだのか。
今まで潰れるほど飲んだことなかったのに。
「そうなんですね。お礼言わないと。」
「そうね!今日はヒイラギのお家を見に行くんでしょ。もしかしたらその時に会えるかもしれないわね。」
そうだった。今日はヒイラギの家に連れていってもらうんだった。
「朝ご飯食べたら行こ!」
「うん。案内よろしくね、カルミア。」
「うん!」
どんな家なんだろう。
あーそれにしても頭回らない。
気持ち悪くはないけど、頭痛すぎる。
二日酔いってこんな感じなのかな。
今日は1日動きが鈍い気がする。