表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/35

恩愛

しばらくするとカルミアが戻ってきた。

一緒にいるのはお母さんかな?


「ヒイラギー!お母さんがいいよって言ってくれたよ!」


カルミアの後ろでカルミアのお母さんがにこにこして立っている。


「本当に泊まらせていただいていいんですか?」

「ええ、ぜひ!狭い家だけど、よければ泊まっていって!その方がカルミアも喜ぶわ!」

「ありがとうございます。」


思っていたより歓迎ムードでちょっと驚いた。


「私は宴の片付けがあるから帰りが遅くなるけどカルミアと先に帰ってもらって大丈夫だから!」

「片付けなら私も…」

「ダメよ!いつもは皆で片付けをするけど今日はヒイラギも疲れているだろうし、村長もさっき早く休むように伝えるって言ってたし。だから気にしないで!」

「そうですか。わかりました。」


「あら!ヒイラギの料理もうほとんどないじゃない!カルミアちょっとフセルのお母さんに言って料理運んで来てくれる?」

「あ、いや、私もうお腹…」

「わかった!すぐ戻るからー!」


もうお腹いっぱいなんです…

みんなに勧められるがまま飲んだり食べたりしていたし、何よりここの料理どれを食べても美味しい。

明日の胃もたれが心配だ。


「ヒイラギ」

「はいっ!」


カルミアのお母さんに話し掛けられてびっくりした。

いい返事だね☆


「本当に戻ってきてくれてありがとう。」

「えっ」

「カルミアはあなたのことが大好きでね。時間ができた時はいつもヒイラギと一緒に過ごしてた。

だから…その…あなたがいなくなった時カルミアはずっと泣いてた。心配だったし、不安だった。このままずっとカルミアが泣き続ける毎日になるんじゃないかって。でも、もう大丈夫みたい。

だから戻ってきてくれてありがとう。」


私が何故あの場所にいたかは分からない。

でも、あそこにいてカルミアに見つけてもらえてこの村に来ることができて、よかったと思う。


「い、いえ。連れてきてくれたのはカルミアですから。」

「そう、ありがとう。

そういえばあなた達はどこであったの?

村の外で見つけたって言ってたけど。」

「えーっと、どこなんですかね。

広い原っぱの近くに大きな湖があってすごく静かな場所でした!」

「えっ…それって」


カルミアのお母さんの表情が曇る。

何か不味いこと言ったか?


「ヒイラギー!!ご飯持ってきたよーー!」

カルミアが戻ってきた。

さっき会ったフセルのお母さん?と他にも何人か引き連れて来た。大量の料理と共に。

そんなには食べられないなぁ。


「みんなありがとう!ごめんなさいね、持ってこさせちゃって。私はカルミアと少しお話ししたらすぐそっち手伝いに行くから。

カルミアはちょっとこっちにいらっしゃい。」


カルミアのお母さんが料理を運んでくれた人たちに声を掛けた。そして何故か呼ばれたカルミア。

フセルのお母さんも不思議そうな顔をしている。

だが、フセルのお母さん達はすぐにこの場を離れて行った。またやることがたくさんあるのだろう。


「カルミア、あなた湖の近くに行ったの?そこでヒイラギと会ったの?」

「あっ、え、えっと………うん……」


おっ?


「はぁ。ねぇ、カルミア。あの湖の近くには行っちゃダメってお母さん言ってるでしょ。」

「うん…」

「あそこはこの森の神様のいるところ。神域なの。カルミアも知ってるわよね?昔、あの湖の近くへ行った人が戻ってこなかったことを。だからあの湖へ近づいてはいけないって。

今日は戻ってこれたけど…もしかしたらもう2度と村へ帰って来られなかったかもしれないのよ…分かってるの!?」

「うっ、ごめんなさい…」


うぉ!びっくりした。カルミアのお母さん怒らせちゃった。

それにしてもあそこって神域なの。やばいじゃん。

もしかしたら、私神様の怒りに触れちゃってるかもしれない!

いや、でも、あそこにいたのは私のせいじゃないからセーフ?


「カルミアはヒイラギがいなくなってすごくすごく悲しかったんでしょ?お母さんも一緒。

カルミアがいなくなったらすごくすごく悲しい。

だから、もうあそこへは行かないって約束して。」

「ごめんなさい!!もうあそこへは行かない!約束する!」

「よし!」


笑い合ってる2人を見て、涙が出そうだった。

カルミアがヒイラギのことを大好きだったように、カルミアのお母さんもカルミアが大好きで大事なんだよな。

自分の娘なら尚更だ。だからあんなに怒ってる。

カルミアに悪いことをしてしまった。後で謝ろう。


「じゃあ私は向こう手伝ってくるからカルミアをよろしくね!」

「あっ、はい!」


カルミアのお母さんが向こうに行ってしまった。

私はすぐにカルミアに謝った。


「カルミア、私のせいで怒られちゃってごめんね。」

「なんでヒイラギが謝るの?悪いのはあそこに行った私だから。それにお母さんと約束したからもうあそこへは行かない!だからこの話はおしまい!」

「そっ、か。カルミアは強いね。私よりずっと強い。」

「?」


私は何か失敗したり、怒られた時はしばらく引きずるタイプだ。だから、怒られた後にすぐ切り替えられるカルミアはすごいと心の底から思った。強い子だと思った。


「そんなことよりご飯食べよ!冷めちゃうよ!」

「うん。ありがとう。

カルミアも一緒に食べよっか。」

「いいのー!?」

「一緒に食べた方が美味しいからね。」


「じゃあ俺達も混ぜてくれよ!」

「え」


気付けば近くに男の獣人達がいた。中には私に手合せを頼んできた人もいる。

まあ、たくさん料理もあることだし、それにこの雰囲気は断れない。


「もちろんです!どうぞ!」


それから色んな獣人達と話をしながら飲んだり食べたりした。

途中、村長がやってきてカルミアのお母さんが言っていた通り片付けはいいから早く休むように言われた。


こんなに色んな人と話すのは久しぶりだ。

楽しかった。

飲み会とか大勢でご飯を食べるということが苦手だったが、今日の宴はとても楽しかった。

いつもなら1人の方が楽だとか早くこの時間が過ぎてしまえばいいのにとか思うのに今はずっと続いて欲しい、終わって欲しくないと思う。

私の中で何が変化したのか分からないが、こんな風に思うのも悪くない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ