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嘘も方便

ということがあって今は1人情報を整理しているところだった。

自分がとんでもなく強かった、なんて急には受け入れられない。私は静かに暮らしたい。

でも、もうこれ以上考えても仕方がない気がしてきた。

今日は食べて!飲んで!寝よう!




寝よう…???

どこで寝るんだ…???


まさか野宿?

野宿なんてしたことない。


ここは酒の飲みすぎで潰れたフリを…!

そう思ってグラスを手に持った時、カルミアが話し掛けに来てくれた。

そういえばいつの間にかいなくなってたな。


「ねぇ、ヒイラギ…」

「ん?どうかしたの?」


話し掛けに来てくれたけど顔を上げてくれない。

何かあったのかな?


「記憶がないってほんと…?私のことも覚えてないの…?」


ハッ!忘れてた!

そうだ、さっき村長に前生きてた時の記憶がないって言ったんだった。

そっか、記憶がないってことはカルミアとの思い出も覚えてないってことになるのか…


「うん。そうなんだ。

だから前生きていた時にカルミアと私に何があったのか、どんな話をしたか全然思い出せないの。ごめんね。」


カルミアがひどく悲しそうな顔をする。

私はカルミアの手を握った。


「でもね、これからまたカルミアとの思い出をたくさん作っていきたいって思ってるよ。

さっきの湖のところで話したでしょ?あの時ね、カルミアはヒイラギが大好きだったんだなって思って嬉しくなった。私のことをこんなに好いてくれてる人がいるんだって。

だからありがとう。私を見つけてくれて。この村に連れてきてくれて。全部カルミアのおかげだよ。

私は失った記憶を取り戻すかもしれないし、ずっと思い出せないままかもしれない。それでもいいってカルミアが思ってくれるなら、カルミアが嫌って言うまでここにいるよ。」

「嫌になんてならないよ。前の記憶が戻ってくれた方がうれしいけど、ヒイラギがいてくれるならなんでもいい。だからもうどこにも行かないで…」


カルミアが抱き着いてくる。


悲しませたくないのにまた泣かせてしまった。

でも、きっと私はもう一度カルミアを泣かせてしまう。

ごめんね。


「ねぇ、カルミア。ちょっと聞いてもいい?」

「うぅ、なぁに??」


お願いだから泣かないでーーー!

泣き止んでーーー!

こんな状況で私今日寝るところが無いんだよね☆って言えないよぉ。


「え、えっと…ほら!泣き止んで。

あのねヒイラギ…じゃなくて私ってさこの村にいたんだよね?どこかにお家があるのかな?」

「ヒック、うん。あるよ。お家の中もそのままだと思うよ。」


よかった~

家あった~

これで野宿回避だ~


「でも、今日は帰らないで。私のお家で一緒に寝よ。ヒイラギのお家は明日行こうよ。」


おっと。一緒に寝るの?


「いや、でも、お家の人に迷惑が掛かるから...」

「いやだぁー!一緒に寝るのー!うわーーーーーん!」

「あぁ!ごめんごめん!寝よ!一緒に!ね!?」

「ほんと?」

「うん。ほんと。

でも、その前にお父さんかお母さんに私が泊まってもいいか聞いてきてくれる?聞けたらまたここに戻っておいで。それで泊まってもいいよって言われたら一緒に寝よう。」

「うん!わかった!すぐ戻るね!」


カルミアは走って行ってしまった。

どんどん小さくなる背中を眺めた。



私はどれくらいここにいられるだろうか。

ここはすごくいい村だ。

いい村、居心地がいいからこそ私はきっとここにはいられなくなる。

他人を信用できない私が集団生活を続けられるのだろうか。


でも、しばらくはこの村にいようと思う。

私はこの世界のことを知らなさすぎる。

まずはこの世界を知るところから始めよう。



この村に私がいられないと感じるまで私はヒイラギとして生きる。

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