前程万里?②
私が選んだのは持ち手の先に緑色の石が埋め込まれている短刀だった。
「これがいいです。」
「いいけどよ。さっきも言ったが、短刀は近接戦闘には向いてるが、短い分敵に近づかないといけなくなる。だから体術か剣術に自信がねーと扱うのは難しいぞ。」
「分かっています。今の私は体術も剣術も自信はありません。でも、だからこそ短刀を使ってそのどちらも鍛えられるようにしたいんです。」
「なるほどな。よし、じゃあこの剣を持っていきな。」
そう言ってルカが私が選んだ短刀を渡してくれた。
実際に持ってみると以外としっくりきた。
「え?いいんですか?」
「おう!もともとお前がまたここに来てくれた時に1振渡そうと思ってたんだ。この村に戻って来てくれてありがとな。」
「あ、いや。お礼を言われることなんて何もしてないです。」
戻って来るというか初めて来たんだし。
「まさかもう決めちまうなんてな。今日は見るだけのつもりだったが、よかったな。」
ずっと静かに見守っていたカエルムが話しかけてきた。
「さっき持ってみた時にこの短刀が1番惹かれたというかなんというか。
そういえばカエルムはどんな武器で戦うんですか?」
「俺はこいつが作った双剣だ。持った時に1番しっくりききてな。」
「へぇー。」
「ルカが作る武器はな、同じ種類でも扱うやつと武器の相性みたいなのがあってな。例えば、俺が使ってる双剣。ここにも何振りか双剣はあるが、双剣を使うからと言ってここの双剣全てを使いこなせるっていう訳じゃないんだ。言葉にするのは難しいが、感覚的なもので何となくこいつが求めてるのは俺じゃないって持った時に分かるんだよ。さっきお前はこの短剣に惹かれたと言っていたが、その感覚を大事にしろよ。」
「はい。」
そうなのか。きっとルカが心を込めて作ったからなんだろうな。
「ヒイラギ、これから頑張れよ!武器のことならいつでも言ってくれ!俺は基本ここにいるから!」
「何から何までありがとうございます。」
「ルカ!お前もたまには広場に来いよ!お前と手合わせしたがってるやつらがいるんだからな!」
「気が向いたらな!」
へぇー、ルカさんも戦うのか。
ちょっと見てみたいかも。
「よし!ヒイラギが使う剣も決まったことだし、行くか!」
「はい。」
「じゃあな。またいつでも来いよ!」
ルカさんにお礼を言ってからカエルムと一緒に外に出た。
「大丈夫だったか?」
「え?」
「あいつ武器のことになるとすげーから。」
「あぁ。マシンガントークで最初はビックリしましたけど、武器が大好きな人で、心を込めて作っているんだって思いましたし、剣の説明をしている時のルカさんが楽しそうで、なんだか私まで嬉しくなりました。」
「そうか。今日もらった短剣が壊れたり、切れなくなったらルカに頼むといい。手入れの仕方もあいつに教わりな。」
「はい。ありがとうございます。」
確かに。手入れの仕方は分からない。これはすぐにまた会いに行くことになりそうだ。
「あ、でも、実際に短刀を使った訓練は危ねーからまだ先だからな。」
「え?」
「そりゃそうだろ。武器ってのは相手を傷付けるもんだ。訓練中に事故で仲間に怪我をさせないように武器の扱いになれてからだ。これからしばらくは木製の短剣を使って訓練してもらう。」
私は思わず短剣を見た。
いきなり使うのかと思ってたけど、そうだよな。自分を守る道具で、人を傷付ける道具なんだよな。
もし、この短剣が私を選んでくれたなら君を使いこなせるようにならないとね。
「カエルム、これからまたよろしくお願いします!」
「おう!」
これからよろしくね。