表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/35

斧を研いで針にする

ノワールさんとの後、ブランさんと続きその後も全然解放してもらえず、結果的に休憩無しで20人以上と手合わせをした。最後の方は手合わせというより乱闘に近かった気がする。

そして今、広場にいた人達は手合わせ(乱闘)に参加しなかった人以外倒れていた。


「はぁ………はぁ……はぁ………もう………動けない……」

「おーい。ヒイラギー大丈夫かー?」

「はぁ…はぁ…この状態を見て大丈夫って思いますか?」

「ダメそうだな。」


すると近くに転がっていたノワールさんとブランさんが同時に


「「俺はまだまだ行ける…!な!ヒイラギ!」」


と言った。巻き込まないでほしい。今動けないって言ったばかりだ。


「お前ら2人揃って転がってるくせに何言ってんだよ。」

「私はもう動けないのでお2人でどうぞ。」

「どっちにしたって今日はもう終わりだ!日も暮れ始めてる。続きは明日な!」

「「えー。」」

「よしっ!」


やっと解放されるー!

カエルムの一声でパラパラと他の人達も帰り始めた。


「あ、そうだ。カエルム、明日から朝の特訓はやるんですか?もうバレちゃったし、秘密にすることもないですし。」

「あー、どうすっかな。ヒイラギ、お前はどうしたい?俺は別に続けても構わんぞ。」

「じゃあ引き続きよろしくお願いします。」

「おう!じゃあまた明日な!」


私はカエルムにお辞儀をして反対方向に歩き出した。

たくさん手合わせして、乱闘して、もう疲れた。

家に着くと倒れるように寝てしまった。



「ん……」


目が覚めると明るかったが、まだ夜だった。太陽が登ってくる気配がないからまだ真夜中だろう。

明るいのは今夜が満月だからだ。この世界にも月は存在していて日ごとに満ち欠けする。違うのは大きさと明るさ。前の世界より大きい気がするし、明るさは段違いだ。三日月や半月の時でもそれなりに明るいが、満月の時は家の明かりがなくても過ごせるほどだ。でも、眩しい明るさじゃなくて淡くて、ぼんやりと形が掴めない、周りを柔らかく包み込むような光だった。


床で寝ていたせいで体が痛い。

こんな風に寝てしまったのはカエルムの特訓が始まったばかりの頃以来だ。


「今夜は明るいなぁ。よし。」


結構長い時間寝てしまったみたいで全然眠くない。

今日は満月で明るいし、屋根裏で本でも読もうか。

私はそのまま屋根裏に上がり、これから読む本を選んだ。


「ただ月を眺めるのもいいけど、そのまま寝ちゃって朝寝坊するのはちょっとなぁ。

どの本にしようかなまだ読んでない本もいっぱいあるけど、やっぱりあの小説読もうかな。」


文字が読めるようになってからカルミアによく絵本を読んであげるようになったが、私自身も本を読むようになった。読むのは絵本じゃなく、ヒイラギさんの本棚にあった分厚い本だ。

ヒイラギさんの本棚には剣や武術、魔法の指南書や薬草の図鑑みたいなものがたくさんあった。全部に興味が湧いたが、剣や武術はカエルムに教えてもらっているし、魔法は自分が魔法を使えるかどうかも分からない、薬草の図鑑なんて見てもよく分からないと思ったため、読もうと思わなかったが、その中に1つだけ小説を見つけた。

この世界にも絵本ではない、文字だけの小説があるのだと嬉しくなった。

私が1番最初に読んだ本はこの小説だった。

『親愛なる君へ』というタイトルで、仲の良い男女が一緒に冒険をしていたが、ある日突然男が女の前から消えてしまい、消えてしまった男を女が探すというものだった。

登場人物の感情の細かい機微まで描かれていて色んな人に感情移入しながら読んだ。物語は悲しい結末を迎えるが、それでも読んだ後は心が洗われるようなスッキリとした気持ちになった。だから私はこの小説を何回も読んだ。

たまに武術の本や薬草の図鑑を読んだりしたが、魔法の本は魔法が使えないのが分かっていたから読む気になれなかった。


「あ、あったあった。」


お気に入りの小説だから絵本の近くの棚の同じ場所にいつもしまっている。だからタイトルを確認しなくても分かる。

その小説をもって窓際に座った。


「眠くならないといいけどな。」


今更ながら小説を読み始めたら眠くなるんじゃないかと思った。


「ん?あれ?」


本を開くと『親愛なる君へ』ではなかった。

表紙を見るとそこには『親愛なる君へ』ではなく


「『まほう』?」


表紙には『まほう』とだけ書かれているだけだった。

違う本を持ってきたのかと本棚を見たが、いつも置いてある場所にも、他の本棚にも無かった。


「え?」


私のお気に入りの小説がぁーー!!消えたーーー!

というか『まほう』って魔法だよね?

魔法の使い方とかかな?


ページをめくると最初に「魔法が使えるようになるには」という文字が目に入った。


「え、魔法って使えるようになるの?生まれ持った才能とか特性とかじゃないの?」


本にはこう書かれていた。

"魔法を使えるようになるには条件があり、条件をクリアするには早くても7日間はかかる。


その1、朝日を最も近くで

その2、一晩炎の隣に

その3、一晩水の中へ

その4、一晩森と共に

その5、一晩地に寄り添い

その6、陽の傾きを見届け

その7、一晩1番明るい月と共に


これを順番通り連日行い、1日でも途切れてしまえばまた最初から始めなければならない。

全てやり遂げることができれば魔力の芽生えが与えられる。"


早くて7日か。

それにしてもよく分からない条件だな。

朝日を最も近くでって言われても太陽に近付ける訳じゃないし、2の炎と3の水はそのままの意味だろうけど、4の森と共にって森の中に一晩中立ってればいいのかな?それに5の地に寄り添いって地面に寝転べばいいのかな?

6の陽の傾きって夕日のことだと思うけど夕日が傾き始める昼過ぎからなのか日が落ちる直前を見届ければいいのか分かんない。

最後の7の1番明るい月って満月のこと?

っていうか一晩って一晩中寝ずにってこと??


「もう挫けそう…

あ、でも次のページに他にも何か書いてあるかも。

ん?」


ページを捲っても捲っても白紙だった。


「うわーまじか。」


こんなにページがあるのに白紙?

魔法が使えるようになったら後は他の本を読めってこと?


「んー、わからん。まぁ時間はあるわけだし、ちょっと試すくらいはいいかも。」


それにしても寝れないのはしんどいかもな。

もう寝よっかな読みたかった小説もどっか行っちゃったし。

とりあえず明日っていうか今日か、カエルムさんか誰かにこの辺りで朝日が近くで見られる場所が無いか聞いてみよ。

あれ、朝日を見に行くってことは特訓できないじゃん。

どうしよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ