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子の心親知らず

ドーーーン


砂煙が舞い上がる。

2人の姿が隠される。

やがて煙か晴れてそこにいたのはノワール1人だけだった。

ノワールの拳が落ちた所はクレーターのようになっていた。


そして今度はヒイラギが上から襲いかかる。

が、躱されてしまい、ヒイラギの拳もまた地面に落ちた。


「流石だな!ヒイラギ!!」

「手加減って知らないんですか!」

「そんなもんしてどーする!」


2人の攻防が続いた。

フセルよりもスピードがあり、パンチ等の攻撃の威力も凄まじく、ノワールからのパンチをガードする腕が痺れるほどだった。


「なぁ、カエルム。何でノワールを選んだんだ?」

「どうしたよ。兄弟に1番取られちまって悔しいのか?」

「悔しくない訳じゃないが、そういうことじゃない。単純な興味だ。何か理由があるんだろ?」

「やっぱ悔しいんじゃねーか!ハハッ。

俺達戦士はそれぞれ個性というか1つだけ他の誰にも負けない能力があるだろ?お前がスピードだったら誰にも負けないみたいにな。

ノワールはパワー、単純に力が強い。勿論、馬鹿力だけあっても駄目だけどな!

パワーがあるってことはそれだけでも武器になる。

今のあいつはノワールを相手にして互角以上にやりあえてる。あいつは隙をつくのが上手いし、急所も確実に狙うからな。だから分かりにくいが、あいつは1つ1つの攻撃のパワーが弱い。ノワールの一撃と同じくらいのダメージをヒイラギが与えるには何回も攻撃しないといけない。一撃で形勢逆転されることもある。

それだけパワーがあるかないかってのは戦いで重要なんだ。それをあいつに気付いて欲しかったからノワールを選んだ。

それからもう1つ相手より圧倒的にパワーが弱い時どう戦うか、それをあいつには考えてほしいもんだな。」

「ふーん。ちゃんと考えてたんだな。」

「お前…俺が適当に選んだとでも思ってたのか?」

「あぁ。」

「あぁって。」

「フッ、冗談だ。何か考えがあると思ってたが、そこまで考えていたとは思わなくてな。ちょっと驚いたぜ。」

「俺だって色々考えてんだよ!まぁ、今の全部昔俺が言われたことなんだけどな!」

「へぇ~。そいつ強かったんだな。」

「あぁ。強かった。

ってのんびり話してっけどノワールの次お前とやってもらうからな!」

「おいおい、スパルタだな。俺はいいが、むしろありがたいが、ヒイラギは大丈夫なのかよ。」

「ちょっと休めば大丈夫だろ?」

「お前なぁ…(ヒイラギ…お前大変なんだな。)」


ドーン


またクレーターができた。


「はぁ…はぁ…おい!どうした!かかってこいよ!」

「言われなくても!」


ドガガガガガッ


2人の連撃が始まった。


お互いがお互いの攻撃避けたり、受け流したりしているが、ノワールが少しずつ圧され始めた。


「クソッ!フンッ!」


ノワールの拳がヒイラギを狙う。

ヒイラギは間一髪で避けた。避けた反動で体が流れてしまい、隙ができた。そこにすかさずノワールは攻撃してくる。ガードしようとしたが間に合わずノワールの蹴りをもろに食らってしまい、飛ばされた。


「うっ!」


ノワールは追撃をしようとしたが、ヒイラギに避けられた。


「はぁ…はぁ…はぁ…」

「どうした!スタミナ切れか!?」

「五月蝿いですよ!ノワールさんだってさっき息切れてたじゃないですか!」


また連撃が始まった。


ドガガガガガッ


やはり体力がなくなってきたのか、ノワールの攻撃が効いているのか、先程までヒイラギが優勢だったのが今は互角、いや、ノワールが優勢になっている。ノワールの攻撃ばかりがヒイラギに襲いかかり、ヒイラギは攻撃できていなかった。


「ハハッ、ヒイラギ楽しかったぜ!俺が勝ってもまた手合わせしような!」


そしてノワールがヒイラギめがけて拳を突き出した。先程のパンチより速く、今までで1番力を込めているのが分かった。

ノワールも手合わせを見ている他の人達もこれで決まるとそう思った。


しかし、ノワールの拳の先には誰もおらず、ヒイラギはノワールの後ろにいた。


「なっ」


途端にノワールを襲った衝撃。


ドスッ


ズザザザーッ


ノワールはヒイラギの蹴りを避けることもガードすることもできず、食らってしまい飛ばされた。


そして、地面に倒れた。


「フッ。ハハハハッ!!参った参った。俺の負けだー!」

「大丈夫ですか?」

「蹴り倒した本人が何言ってんだよ。」

「だって…」


ノワールはヒイラギの手を取り、立ち上がった。

2人ともボロボロだ。

カエルムがヒイラギ達のところへ歩いてきた。


「2人ともいい勝負だったな!お互い色々見えることがあったんじゃないか?」

「はい。」

「まぁな。次は勝つからな!」

「次も勝ちます!」


「なあ!次俺とやろうぜ!」

「俺だ!俺がやる!」

「えっ?」

「お前らちょっと待てって!流石にすぐは無理だろ。

ちょっと休憩してからにしてやれ。な!ヒイラギ。」

「そうですね、すぐには無理です。」

「ほらな!それに次の相手はブランだ。」

「次はブランかよー。」

「ちぇー、またお預けかぁ。」

「まぁまぁ、そう言うなって!ブランの後、誰とやるかはヒイラギに任せるから!」

「よっしゃ!」

「ヒイラギ!ブランの後は俺だからな!」

「私が戦える状態だったらですよ。」


とりあえず、休憩ということになり、ヒイラギは広場の隅に座った。


「どうだったヒイラギ。」

「あ、カエルム。貴方は私を殺したいんですか?」

「ハハッ!そんな訳ねーだろ!強くなってほしいだけだ!」

「冗談です。いい勉強になりました。私に足りないものがたくさんあることを実感しました。」

「ほぅ。何が足りないんだ?」

「パワーですね。ノワールの一撃を受けた時に思いました。どれだけ相手を見て隙を狙って攻撃できたとしても純粋な力の強さには叶わないって。

同じように急所や隙を狙って攻撃した時、力が強いのと弱いのじゃ当たり前だけど、一撃で与えるダメージも違う。弱い力だと相手に反撃される隙を与えるかもしれない。

カエルムは強くなったって言ってくれたけどやっぱり私はまだまだ弱い。」

「そうか。パワーの重要さに気付けたんだ。俺以外の奴と手合わせするのも大事だって分かっただろ?」

「はい。だからこれからもっと鍛えて筋力をつけます。あと、脚力もつけて足技を磨きます!!」

「足技?何でだ?」

「腕よりも足の力の方が強いからです。それに今日隙をついたとはいえ、ノワールさんに攻撃が通りました。腕は勿論鍛えますが、脚力も鍛えておけばパワーだけでは敵わない相手にも通用するんじゃないかと思って。」

「ほう。お前も色々考えてんだな。」

「何も考えてないと思ってたんですか。」

「ハハッ!そんなことねーよ。」


風が吹いた。


「強くなれそうか?」

「どうですかね。でも、強くなりたいです。」

「そうか。よし!じゃあ次ブランとだな!」

「え、もうですか。もう少し休ませてくれてもいいんじゃないですか?」

「何言ってんだよ、もう休んだろ?」

「……」


そういえばこういう人だったと思ったヒイラギだった。

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