平安無事
カエルムと別れた後、風邪をひかないように濡れてしまった服から着替えてカルミアの元へ向かった。
今日はカルミアと遊ぶ約束をしていたのだ。
それにしても少し前までは特訓の後は倒れるように昼まで寝てたのに今では寝無くても問題なく動ける。
私も日々成長しているのかもしれない。
今日は何して遊ぶんだろう。
文字が読めるようになってからよく絵本を読んであげるようになったし、最近は鬼ごっこだったりかくれんぼだったり外でもよく遊んでいる。それから畑のお世話もよく一緒に行っている。
でも、カルミアと会う度思うことがある。
子供はよく動く。無限に体力があるのかと問いたいくらいずっと元気。
私がどれだけ疲れて息を切らしていてもカルミアはピンピンしてる。獣人だから余計に体力があるのかもしれない。カエルムも息を切らしているところを見たことがない。
絶対カエルムの息切れ姿を拝んでやる!
そんなことを考えてる内にカルミアの家に着いた。
ドアをノックしようとしたら勢いよくドアが開いておもいっきり顔面を強打した。
ゴンッ
「いっ…!」
めっちゃ痛い。
「え!ヒイラギ!?ごめんなさい!大丈夫!?」
「うん、大丈夫だよ…カルミアおはよう…」
「ほんとにごめんなさい…」
「ドアを開ける時は気を付けなさいっていつも言ってるでしょー!ヒイラギごめんなさいね。」
「いえ、大丈夫です。それより今から何処行くんですか?」
「あ!あのね!畑の野菜が大きくなったから今日はみんなで収穫することになったって言いにヒイラギの家に行こうとしてたの!行くでしょ?」
「そうなんだ!もちろん、行くよ!」
この村の野菜はほんとに美味しい。
しかも、成長スピードが速すぎて、収穫してもすぐまた新しく実がなってすぐに大きくなる。
初めてその話を聞いた時は異世界感あるなーって思った。
この前畑の手入れをしに行った時はまだ実がなってなくて葉っぱと茎ばっかりだったのにもう育ったんだ。
カルミアの家からそんなに遠くはないのですぐ着いた。
すでに作業している人が何人かいる。
畑に近付くと見覚えのある野菜、トマトやきゅうりもあった。
「おはよう!あら、ヒイラギも来てくれたのね!助かるわー。」
畑にいたフセルのお母さんが私達に気付いてくれた。
「おはよう!」
「おはようございます。あまり力になれないかもしれませんが、何かやることはありますか?」
「そんなことないわよ、いつも助かってるわ!じゃあ、向こうの畑の水やりをした後、大きくなってる実の収穫をしてくれる?広いからゆっくりで大丈夫よ!」
「分かりました!ありがとうございます!」
「カルミアもヒイラギと一緒に行ってきなさい。」
「はーい!ヒイラギ行こ!」
「うん!じゃあ私はあっちから水やりするからカルミアはここからは始めてくれる?」
「うん!」
本当に広い畑で水やりだけで時間がかかってしまった。収穫をしようとした時にはお昼近くになっていて、ご飯を食べてからまた再開しようということになった。
この村のお母さん達が作るご飯はすごく美味しいから密かに私の楽しみになっている。
美味しいご飯を食べて、収穫を再開して、気付いたら夕方になっていた。
今日はどの野菜もいつもよりたくさん採れたみたいでみんなで抱えて、村に戻った。
広場まで行くと村長の男衆が集まっていた。
「おっ!ヒイラギ!」
「あ、カエルム。みんなで集まってどうしたんですか?」
「今日コイツらと一緒に狩りに行ってな。見てみろ!でかい魔物を仕留めたんだ!そっちも大量じゃねーか!」
「でしょー。みんなで収穫したんですよ。
魔物を仕留めたってことは」
「もちろん!今日は」
「「宴だー!」」
その後みんなで準備をして宴が始まった。
仕留められた魔物は名前は知らないけど美味しいやつで1度食べたことがあるがこんなに大きいのは初めて見た。
野菜と肉が大量で、いつもよりボリュームのある宴となった。それにお酒も大量で、カエルムは泥酔状態だ。
あんなんで明日の特訓大丈夫なんだろうか。
「おい。」
「はい!」
びっくりしたー。
振り返ると男の人が立っていた。というか私を睨んでいる。誰だろう。
名前が思い浮かばないってことは話したこと無い人かな。
「あんた、さっきも仲良さそうに話してたけどカエルムさんになんか用か?」
「い、いえ。何でもないです。あんなに酔っぱらって明日動けるのかと思っただけで…」
「何であんたがそんなこと気にする?」
「深い意味は無いですよ。いつも元気に動き回ってるから大丈夫なのかな、と思っただけです。」
「そうか。」
「そうです。」
そこまで答えると踵を返して歩いて行ってしまった。
「ヒイラギーフセルと何話してたのー?」
「今の人、フセルって言うんだ。ん?フセル?あれ、もしかして私がこの村に初めて来た時にカルミアの家に運んでくれた人!?」
「そうだよー」
「やばい、お礼まだ言ってない。」
「やば…??フセル優しいから大丈夫だよ!」
「ソッカー。」
優しいやつは初手で人を睨んだりしないよ!たぶん!
でも、私が覚えてないだけでヒイラギさんと何かあったのかも知れないし。
まぁ、ごちゃごちゃ考えても仕方ない!と顔を上げると満天の星空があった。月も出ていてすごく綺麗だった。
「わぁ…」
「きれいだね!」
「うん。すごく綺麗。」
こんなにゆっくり星を見るのは久しぶりな気がする。
元いた世界じゃ、働き初めてからは見上げても星は見えないし、そもそもあまり上を見上げなかった。
流れ星は流れてないけど、今みたいな穏やかな時間がずっと続いてくれればいいのにと心のそこから願った。
「まだまだご飯たくさんあるよ!食べよ!」
「うん!」