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疲労困憊

ドンドンドンドン!!!


「えっ」

飛び上がった。


ドンドンドンドン!!!!

「ヒイラギー!!起きろー!!!!行くぞー!!」


この声はカエルム?

あ。

やっぱり起きれなかったか。


「ごめんなさい!すぐに行きます!!」


私はベッドから飛び上がって着替えた。

そうだった。今日からカエルムに特訓してもらう約束だった。

ふと窓の外に目を向けるとまだ朝日が昇りきっておらず、薄暗かった。

いくらなんでも早すぎやしないか?

これじゃあ起きれなくても無理はない。


着替えてすぐに外に出た。

いつもなら着替えて、顔洗って、メイクして等々色々あるが、この世界のメイク道具を私は持っていないし、持っていても私はメイクはしたくない。それにカエルムを待たせたくなかった。


「すみません!お待たせしました!」


焦っていたからか寝起きとは思えないくらい大きな声が出た。


「おう!おはよう!やっと来たか!」

「おはようございます。すみません、お待たせしてしまって…」

「気にすんなって!じゃあ行こうぜ!」

「今日からよろしくお願いします!」


カエルムに連れられて森の中を進んでいった。


「今から行くところはな、俺がまだ弱かった時に1人で特訓してた場所だ。今でもたまに行ってる。静かな場所でな。あんまり村の奴らも来ないから秘密の特訓にはちょうどいいんだ。」

「へぇ~、そうなんですね。」


正直、朝からあんなバカでかい声を出していたらその内気付かれそうだと思ったが、言わないことにした。


「とりあえず、しばらくは俺とひたすら手合わせをしてもらおうと思う。」

「分かりました…」


いきなりか~また吹っ飛ばされるのは嫌だな。


「安心しろよ!そんな顔しなくても昨日みたいに吹っ飛ばしたりしねぇよ。それじゃあ受け身の練習にしかならねぇからな。」


良かった。というか顔に出てたか。


「今日はひたすらやりあって何が足りていないかを見る。そんで明日からは手合わせとあんたに足りていないところを鍛えていく。吹っ飛ばすのはあんたが戦えるようになってからだな!ハハッ!!」


鍛えてもらえるのは助かるが、

吹っ飛ばさないでほしいし、笑い事じゃない。


カエルムは底抜けに明るい。

裏表もなさそうで自然と周りに人が集まってきそうな感じもする。

だから完全に信用できない。したくても何処かで疑ってしまう。優しい人ってことはちゃんと分かってるのに自分の性格を恨むよ。


「着いたぞ!ここだ!」


カエルムの声で我に返る。

木々で狭かった森の中にちょっとした空間が現れた。

昨日の広場よりは狭いが、1人、2人動き回れるくらいの広さはある。

すぐ近くには川が流れていた。


「良い所ですね。」

「だろ?朝は特に気持ちが良いんだ。よし、やるか!」

「あ、はい!」

「とりあえず俺があんたに攻撃するからそれを避けるか受けるかしてくれ。余裕があったらやり返しても良いからな。まあ殴り合いみたいなもんだな。」


いきなりか。


「じゃあ始めるか。」


ドンッ!


私の返事を待たずに私は殴られた。

昨日みたいに木は折れなかったが、私の体は後ろになあった木に叩きつけられた。

吹っ飛ばさないって言ったじゃないか。

昨日より距離が近かったからか腕のガードが間に合わなかったせいでもろに食らってしまった。

いや、ガードできていても飛ばされていたと思う。


「うぅ……」

「おいおいどうした!昨日より速くも強くもねーぞ!」


何とか立ち上がったが、すぐに次の攻撃が来た。

左から、右から、下から、上から。衝撃が次々と襲ってくる。

ただ殴られるだけならカエルムの手だけに注意していれば良いが、当たり前に足を使ってくるから何度も地面に倒れた。


そんな感じでやり返す暇なんて一切与えられず、あっという間に私の体は泥だらけの傷だらけ。今日は防具を着けていないから色んな所に傷ができた。


そんなサンドバック状態で立っていられる訳もなく、私は開始数分で倒れた。

スタミナ切れと体の痛さに耐えられなくなったのだ。


「はぁ…はぁ…はぁ…」

「何だよ、もうバテちまったのか?こりゃ体力作りもやっとかねーとな。殴る、蹴る以前の問題だ。どんだけ早く動けて拳が重くても当たる前にバテちまったら意味ねーからな。」


体力か。

そりゃそうだろ。私は持久力系の運動が1番嫌いだったんだ!!体力なんてあるわけ無いだろ!!!


なんて悪態をついても仕方ないのでこれからは体力作りに励もうと思った。


「それから、あんた今ほとんど目瞑ってただろ。あれじゃ避けれるもんも避けれねーよ。」

「うっ」


痛いところを突かれた。

カエルムに殴られる瞬間、怖くて目を瞑ってしまっていた。さっきのサンドバックの時の視界は真っ暗だ。浴びるように殴られていたからずっと目を瞑っていたに等しい。


「怖かったか?」

「はい。カエルムの拳が届く瞬間、怖くて思わず目を瞑ってしまいました…」

「そうか。ま、怖いのは当たり前だな!

だがな、どんなに怖くても目を逸らしちゃいけねぇ。自分の目でしっかり見て向き合うんだ。しっかり相手を見ることができればあんたが今より少しは強くなれたってことだ。」

「はい!」

「よし!じゃあまずは体力作りだな!体力はこの森の中駆け回ってたら自然とついてくるだろ!今日はひたすら俺の後ろに着いてこい!」


随分アバウトだな。

というか今から走るのか。


「あれ?」


気付けばカエルムの姿が遠くにあった。

やばいやばい。置いていかれる!


私は急いで後を追った。

カエルムのスピードは速すぎてどれだけ走っても全然距離が縮まらなかった。


どれだけの時間走っていたのか分からない。

フラフラになりながらカエルムの後追っていたら川原に着いていて、太陽が昇っていて外に出た時の薄暗さは全く無くなっていた。


「今日はここまでにするか!」

「はぁ…はぁ……はぁ…」


私は川原に倒れた。もう1歩も動けない。

息が苦しい。こんなに私は息切れしているのにカエルムは涼しい顔をしていた。


「おいおい、大丈夫かよ。明日は今日と同じくらい走った後に殴り合いだぞ?」


怖いこと言ってくれるじゃないか。

ていうか殴り合い??


「殴り合いって言っても俺のやったことをそのまま真似してやればいいんだけどな!」


ちょっとホッとした。今日みたいにタコ殴りにはならなさそうだ。

でも、これだけ走った後にか。

正直、しんどい。


バシャッ!


「ッ!」


急に水がかかってきて飛び起きた。カエルムの仕業だった。


「アッハハハハハ!そんな驚くことねーだろ!

こっち来いよ。朝の川の水は冷たくて気持ちいいぞ!」


冷たさは今顔面でダイレクトに感じた。だからびっくりしたんじゃないか。

川はそんなに透き通っていて綺麗で、手を入れるとさっきよりも冷たく感じた。

水を掬って顔を洗うとさっぱりして生き返った気分になった。


「はぁー。きもちー。」

「だろ?この川は俺のお気に入りだ。特訓終わりのここの水が気持ち良くてな!」


確かにこれは来てしまう。というかクセになる。なんだろう。


「ぼちぼち戻るか!」

「はい。」


まだ立つのがやっとな状態だったが、置いていかれると家に帰れなくなりそうだったのでカエルムの後を追った。

私の家の前でカエルムと別れた。


「じゃあな。また明日今日と同じくらいに来るから明日は起きてろよ!」

「頑張ります…

ありがとうございました!明日もよろしくお願いします!」

「おう!じゃあな。」


家に入ると急に力が抜け、倒れた。

ベッドまで行く気力も体力もなくそのまま床で寝てしまった。


あぁ、眠い。朝早くからあんなハードな運動これから頑張れる気がしない。

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