インタールード『予兆』
「……どうなってるんだ、これは」
白衣を纏う痩身の男は、メガネの縁に指を当てて、モニターを前にして言葉をこぼした。彼の驚愕の理由は、モニターに映された光景に他ならない。モニターに映し出されているのは、世界が終わりゆく光景。アスファルトが捲り上がり、文明が風で破壊され、生物は超規模の津波に飲み込まれていく。これ以上になくわかりやすい終焉をモニターは描いていた。
「……予測装置に狂いはない。これが……あの結界が引き起こすのか?」
魔術組織『レグルス』が誇る技術のひとつ、予測演算装置『三十六景』。この装置は未来——具体的には、1週間先のことまでの出来事は確実に的中させる。トリスメギトスの額を汗が伝う。この予測装置によると、モニターに映る終焉が1週間以内には確実に引き起こされる。
「…………『猟犬』。もはや、貴方に託すしかありませんね」
▼▽
『猟犬』が任務遂行のために動き始めた日の、その夜。
爆心地近郊・結界付近であった。西洋風の鎧を着込んだ男が、結界の遙か上を睨んでいた。結界の上部には怪しげな『光』がある。
「神父のパクリってわけか。癪に障るな」
鎧の男はそんな感想を抱いた。男はその『光』から視線を切ると、結界の境界に沿うように歩き始める。ある程度進んだところで、鎧の男は足を止めた。
「……奇縁だな。今だけは呪うよ」
鎧の男は心からの呪いを吐き出す。男の前に立つのは、陰陽師のような装いをした少年だ。シワのない、スベスベとした白い肌。背丈は鎧の男より少し低いくらいか。少年は、男の吐いた呪いを受け止めて、一息置いて言葉を紡ぎ始める。
「僕も同じだよ。まさか、二千の時を経て君に出会うとはね——兜を外したらどうだい?」
西洋風の鎧を纏う男は、少年の言葉に一瞬戸惑った様子をみせる。しかし、鎧の男は少年の言う通り、兜を外す。そこにあったのは——
「やあ、久しぶりだね。物部……宿儺くん」




