出会いは、髪の毛でした
主人公、小谷 千尋
20代後半になる、傷心旅行中。
潮風が、冷たい浜辺を歩きながら昔のこと考えた。
私は誰かを救う物語が好きで、よく読んでいた。
『いつか、私も誰かを救うヒーローになりたい!』
小さい頃は、そんな大きな夢も持っていた。
20代後半に差し掛かってきた今の私には、眩しい。
昔好きだった物語の主人公たちよりも、
随分年上になってしまった。
『物語の主人公は、凄いな』
『私もこれぐらい勇気があったら…』
けれど私は、重みを背負うのは難しかったみたい。
<あんたのせいで>
<お前がそう言ったから>
<ガキのくせに>
<これだから…>
『逃げる。私をどうか許してください』
そう静かに呟いて、私は終わりを迎えた。
『ストップ』
後ろ髪を引かれる。
いや、これは髪の毛を掴まれてる。
『ここでそんな事しないでくれますか』
髪の毛が抜けるぐらい強く引っ張られる。
痛い痛い痛い痛い。
『髪の毛抜けるでしょうが!!』
私は、髪の毛を引っ張る見知らぬ人の方に目を向けた。
そこに居たのは、中学生ぐらいの男の子
『髪の毛ぐらいで、怒れるなら変な行動しないでくれませんか』
『海を汚さないでもらいますか』
私を見据えて強く言葉を投げかけてくる
私は、腰が抜けてしまった。
髪の毛が抜ける痛みよりも、海に身投げする方が痛くて恐ろしいはずなのに…自身がやろうとしたことを理解したからだろう。今更、震えが止まらない。
『あの…言い過ぎました。』
『そんな怯えた顔されても困ります』
『…あれ?僕の声、ちゃん届いてます?』
『………。大人呼んできます。そこで座っててください』
私は、呼吸が浅くなり意識を手放した。
あそこまで取り乱すとは思わなかった