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1 出会うはずのなかった私たち

私は水の上に立っている。

目の前には空色のドアがある。

私はそれを開けなければならない。

何故かはわからない。

でも、開けなければならない。


パァン

銃声が薄暗い部屋の中で響き渡る。

ハッと我に返った。私の手には血まみれのナイフ、

横には心臓を一突きにされた男。

既に絶命しているようだ。

「そうだ…。お仕事の途中だ…。」

夢のことを考えているとついぼーっとしてしまう。

遠くから男の怒号が聞こえた。

「てめえッやりやがったな!!!」

どうやら目の前の男の味方らしい。

私にとっては邪魔なものなので申し訳ないが死んでもらうしかない。

無防備に走ってきた男の心臓をナイフで突き刺す。

男のうめき声が聞こえた。

間髪入れずにナイフを90°回すと男はその場に崩れ落ちた。

腰に銃を携帯しているところから察するに先程の銃声はこの男の仕業らしい。

とりあえず銃は貰っておく。

もらえる武器はもらっておくのはこの業界のお決まりだ。

「…もらい…ます…ね…」

一応言っておかねばなんとなく罪悪感が残る。

銃弾はあと2発あるようだ。

ようやく奥への道が開けた。

一番奥の部屋に入ると、太った男が怯えた様子でこちらを見つめていた。

年齢は50代後半ぐらい。

今回の獲物で間違いないようだ。

「や…やめてくれぇ…!金なら渡す!!他に何がほしい!?」

「お金なんていらない…。あなたを殺せばたんともらえるから…。だから…私は…あなたの命が…ほしい。」

狙いを定め、先程の男からもらった銃の引き金を引く。

即死だったようだ。

お巡りさんが来ないうちにさっさとこの場を去る。

建物を出るときに一礼を忘れずに。



しばらくブラブラしていると日が上ってきた。

世間は朝を迎えたようだ。

でも私は人目につかないうちに家えと帰る。

夜に仕事をしたぶん日中は寝るのだ。

でもここから家はかなり距離がある。

最低でも2時間は歩かないといけない。

「はぁ…」

ついため息が漏れてしまう。


とぼとぼとしかたなく歩いていると

「いっちにっ、いっちにっ、」

という掛け声のような声が聞こえてきた。

何事かと思って横に目を向けると、どうやらそばの中学校から聞こえてきたようだ。

百合山学園という中高一貫の女子校のようだ。

掛け声はそこの陸上部の人たちが発しているようだ。

やることもないので彼女たちを観察することにした。





「おいそこっ!!ペースが落ちてるっ!!」

朝一番、元気いっぱいの部長の怒鳴り声が聞こえる。

一年のときはいちいち驚いていたものの、一年たった今ではもはやBGMと化している。

私は少し遅れてスタートしたものの、前方にいたはずの集団は既に100メートルほど後ろにいるようだ。

白いラインを超えると、顧問の成瀬先生と和田部長が歩み寄ってきた。

「さすが桜庭だな。次のインターハイも期待しているぞ」

「相変わらずぶっちぎりの1位か、さすが陸上部のエースだな」

と、口々に褒めてくださる。

ありがとうございます、と受け流しながらもついつい後ろのゴールした同輩たちのことが気になってしまう。

「桜庭さん、すごいねっ!」

「同い年とかしんじらんなーい!」

口先だけの褒め言葉を並べたあとは、さっさと離れていき、私の悪口を言い始める。

「何で桜庭さんばっかり褒められんの」

「調子乗ってんじゃねーよ」

「しーっ、聞こえちゃうよ」

いや聞こえてるわ、というツッコミはあくまで心のなかにしまっておく。

お察しのとおり、私はぼっちだ。

小学校の頃はこうではなかった。

でも、公立から私立の百合山学園に入学してひとりぼっちになってしまった私は、陸上部に入ってから皆に追いつけるように、とたくさん練習をした。

その結果がこの有様なのだから、もうどうしょうもない。

朝練は他の人が登校してくるのより早く終わる。

クラスにも友達はいないので、いつもはブラブラして過ごすのだが、今日は違った。

門の外に立っている女の子がなんとも言えぬ不思議な子で、声をかけてみたくなったのだ。

百合山学園は自由が売りの学校なので、誰でもいつでも学校見学ができる。

年齢的に見ても、ジャストな年のようだ。

たまにそういう人が来るため、とりあえず声だけでも掛けてみようと一歩門に近づいた。

この一歩が私の人生を変えるなんて、誰が予想できたのだろう…

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