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信頼と期待

「妃殿下のご家族は、フェーブル帝国にいる」

「フェーブル帝国?」

「フェーブル帝国?」


 リュックに告げられ、レイモンドと顔を見合わせた。


「それってどこの国なの」って一瞬思ったけれど、すぐに思い出した。


 このベシエール王国にやって来る前にいた国だということを。わたしは、フェーブル帝国の皇帝からこのベシエール王国の王太子に戦利品のひとつとして贈られたのだった。


「どこで情報を入手したかはわからないが、フェーブル帝国がわが国となんらかの交渉をする為に連れ去った可能性が高い。レイ、どうするかだけど。潜入して奪い返す? それとも、堂々と連れに行く? もしくは、交渉を仕掛けてくるのを待つ?」

「くそっ! タイミングが微妙だな。アルフォンスか宰相が情報をまわしたかもしれん。それならば、近いうちに向こうからなんらか仕掛けてくる」


 レイモンドは舌打ちした。そして、地下室で起こったこと、それから偽王太子が死んだことを説明した。


「師匠、どう思われますか?」


 それから、宰相になるラザールに助言を求めた。


「殿下の推測通りですな。フェーブル帝国から使者がやって来たら、連中が何をたくらんでいるか会って探ってみましょう。元宰相のふりをしてね。もしも元宰相の入れ知恵なら、この件でも彼を叩くことが出来るでしょう。それは別にして、フェーブル帝国の愚策に付き合うのもバカバカしいかぎり。妃殿下のご家族のことも心配です。だいいち、妃殿下もいてもたってもいられないでしょう。ご家族を、一刻も早くフェーブル帝国からお連れすべきです」

「レイ、ぼくも父上の意見に賛成だ。あとは、きみの判断だ。それと、陛下への事後報告もね」

「おまえが行ってくれるのか、リュック?」

「もちろん。こういうことは、ぼくしか出来ないだろう?」

「頼めるか?」

「了解。妃殿下、そんな顔をしないで下さい。かならずやご家族を無事にお連れします。いましばらくレイの相手をしてお待ち下さい」

「リュック、ありがとう。だけど、充分気をつけて」


 仔犬ちゃんって、ほんとうに頼りになるわよね。


 リュックは、レイモンドとわたしに可愛らしい笑みを見せてくれた。それからロッテの手を握ってラザールに一礼し、慌ただしく控えの間を出て行った。


 彼がやって来て出て行くまで、ほんとうにわずかな時間しか経っていない。

 出来る男は、何事も迅速なのね。


 それはともかく、家族に会えるのよ。


 奪還の実行部隊のリュック。そして、政治的な対応をしてくれるラザール。この親子なら、かならずや家族を救いだしてくれる。


 そう確信した。


「あら、忘れていたわ。エリカ。あなたのご要望通りあなたの侍女を捜しだし、契約をし直しておいたわ。彼女、王宮ここでのお給金を田舎の家族に仕送りをしていたの。王宮ここから放りだされたあと、王都で違う職を捜していたけど見つからなかったみたい。だから、田舎に帰ろうとしていたようね。あなたの申し出を伝えたら、『王太子妃殿下がそこまでおっしゃるのでしたら、戻って専属の侍女になってもいい』みたいな憎まれ口を叩いたらしいわ。だけど、感謝しているはずよ。エリカ。あなたって思いやりがあるのね」

「ロッテ、骨を折っていただいて感謝します。いいえ。思いやりがあるのではありません。これから、レリアをいびり倒すつもりなのですから」


 わたしの侍女だったレリアは、王宮をクビになった。だけど、呼び戻してもらった。


 もっと仕返しをしてやりたいから。それから、ケンカ相手が欲しかったから。


 呼び戻してよかったのよね、きっと。


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