表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/80

ヤッたかと問われましても……

「というより、そんなことはどうでもいいの。わたしとヤッて楽しむですって?」


 ノッポと太っちょから、偽王太子の方へ体ごと振り向いた。彼は、鉄格子の向こうで舌なめずりしている。

 まるでそれで気色悪い感じを強調するかのように。


「わたしとヤル為にわざわざこんなことを? ヤリたいだけなら、やさしいレディとすればいいじゃない、この王都に、いくらでもいるでしょう? わたしより美しくて従順なレディがね」


 ド正論すぎるでしょう?


「おまえでなければダメだ。ダメなんだよ。おれのタネをおまえに与えてやる。将来、その子が国王になる」

「はああああああ? あなた、すごい自信ね。たった一回ヤッタだけでできる・・・って思っているの? ドンピシャ的に授かるとでも? 大当たり―ってことに? タイミングバッチリよねって感じで? だとすれば、生命の神秘もビックリだわ。それとも、子どものときにきかされた『鳥さんが赤ん坊を運んでくるの』をまだ信じているわけ? だとすれば、夢みる純真少年もビックリするに違いないわ」


 ほんとうにいろいろな意味で驚きだわ。


 自分でもちょっと違うかもしれないって思いつつ、控えめに指摘してしまった。


「うるさいうるさいうるさいっ!」


 鉄格子の向こうで、偽王太子は三歳児みたいに地団駄を踏んでいる。


「おれはうまいんだよ。たった一度で充分。おまえに種を植え付けさえすれば、かならずや育つ」


 あのねぇ。雑草ではないのだから、そう簡単に育つわけではないの。


 そう言い返したかったけど、彼の狂気に満ちた瞳を見て諦めた。


 ダメだわ。こいつ、ヤルことしかない。


「レイモンドとは何十回ヤッた?」


 どう対処するか考えていると、偽王太子がものすごく個人的なことを尋ねてきた。それって、微妙すぎる質問だわ。


「まあ、何十回、何百回ヤッたところで、子は出来ないがな。あいつは下手糞すぎる。だから、おまえはぜったいに物足りない」


 ちょっ……。


 いまの、いろいろツッコみたいんですけど。


 グッとグーッとガマンしなければならない。


 でも、確認したくて仕方がないわね。


「おあいにくさまね」


 また腰に手をあて、「ふふふん」と鼻を鳴らしてから続ける。


「レイモンド、いえ、王太子殿下はすごいわよ。精力的で高度なスキルを持っていて、最高だわ。アレっていうのは、本性が出るでしょう? そもそもの人間性が強調されるのよ。彼は、間違いなくこの大陸で、いえ、この世界で一番の男性よ。だからこそ、あっちの方でもすごいというわけ。毎晩、激しくヤッているわ。それこそ、一晩中眠る間もなくね。いつもやさしく教えてくれるし、恍惚感、それから満足感を与えてくれる。フツーでもそうだけど、あっちの方でもしあわせすぎて怖いくらいよ」


 いまのわたしって、うっとりした表情になっているに違いないわね。


「へー、さすがは『氷竜の貴公子』だ。あっちの方も貴公子ってわけだ」

「さすがは将軍。剣や戦いだけでなく、あっちの方もすごいのか」


 ノッポと太っちょが感心している。


 まぁ、嘘はついていないわよね。うん。ヤル内容を曖昧にしているだけ。


 まったくの嘘だったり誇張だったり、ということはなかったわよね?


 うん。やはり大丈夫。誤解されるような言い方はしていない、はず。


「ふんっ! だったら、おれの方がずっと上手だ。上手に出来るっ!」


 偽王太子は、拳で自分の胸を叩いて宣言した。


 嫌よね、オスって。くだらないことを主張して。それに、ムダに競争心があって。


 まるで五歳児だわ。いいえ。それ以下ね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ