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真実

 レイが、いえ、本物の王太子が事情を語ってくれた。


 わたしが王太子と思い込んでいた男は、レイの同腹の兄でアルフォンス・ロランというらしい。


 どうやら、彼は性格やその他もろもろに難があるらしい。だから、もともと王太子候補から外されていた。


 そして、レイが王太子になった。


 が、彼は優秀な、というよりはこの王国でも最高最強の将軍。わたしがこの王国にやってくるきっかけとなった戦争だけでなく、すべての戦争の指揮をとり、みずから剣をとって戦う将軍。その為、王都にいることがほとんどない。


 今回も、わたしの祖国から敗軍を駆逐するのと戦後処理の為、わたしの祖国に駐留し続けていたらしい。


 その隙に、アルフォンスが反旗を翻した。


 アルフォンスは、まず「頭てっぺん禿げ」の宰相マチアス・バルリエをはじめとした閣僚や、軍部の一部を唆した。そして、国王を罠にハメて一時的に退かせて監視下に置いた。当然、玉璽も入手した。その上で、王太子をレイからアルフォンスにかえると偽りを発表した。


 そうして、王太子になりかわった。


 そんなことになれば、レイがだまっているわけがない。


 偽王太子は、暗殺者ギルドで雇った殺し屋たちをレイのいる前線へと放った。そして、レイの下にいる宰相派の将校たちに密使を送ってレイの部下たちを騙して束縛してしまった。


 レイは、駐留している自軍から命からがら逃れたという。


 彼は事情がわからないまま父の身を案じ、王都に密かに戻ってきた。有事の際に隠れ家として準備をしていたこのレンガ造りの屋敷で、やはりレイのことを案じて監禁場所からうまく抜けだしてきた父に再会出来た。


 そこでレイは、アルフォンスとわたしの婚儀の件をきいた。偽王太子は、戦後のドタバタに紛れてわたしを敗戦したフェーブル帝国から戦利品として贈らせ、とっとと婚儀をしてしまったのである。


 レイは、その時点でだれが味方か敵かもわからなかった。だから、彼は変装して単身その婚儀に潜入することにした。

 が、殺し屋たちに察知され、王宮内を彷徨うことになってしまった。


 あのバラ園の小屋で会ったのが、そのときだったのである。


 タキシード姿で一晩中王宮の森や庭園を彷徨っていたというのも、嘘じゃなかったわけ。


 ちなみに、タキシードは宮殿の自室に忍び込んで得たらしい。


 偶然、レイはバラ園でわたしと出会い、すぐにわたしの正体を悟った。


 それはともかく、彼にはやらねばならないことが山積みである。父親の無事を確認したし、つぎは自分の部下たちを救う為に駐留地に戻ることにした。


 そして、密かに行われているアルフォンスとその一派のクーデターを阻止しなければならない。


 この件が他国へ漏れるようなことにでもなれば、すぐにでも他国に攻め入られてしまう。いくらベシエール王国軍が強いといっても、複数の国々が同時に攻めてくれば対処のしようがない。

 

 なにせ最強の将軍であるレイが不在なのだから。


 だからこそ、秘密裏に対処しなければならない。


 ありがたいことに、最強の将軍の腹心や親衛隊の部下たちもまた最強である。それぞれの才覚や腕で駐留地から逃走し、王都に向かった。


 彼らと再会を果たしたレイは、すべてを取り戻す為に王宮に舞い戻ってきた。


「エリカ、きみには謝ってばかりだけど、さらに謝らないといけないんだ」


 レイは、さらに説明してくれた。


 正直、そっちの説明の方が衝撃的だった。


 今回、ベシエール王国がわたしの祖国を統治しようとしていたフェーブル帝国を追い払ったのは、わたしを奪い、わたしに祖国を返す為だったという。


「すまない。もっとはやい段階で対処したかったんだが、わが軍も常に敵国がいてね。なかなか準備が整わなかったんだ」

「ちょっと待ってよ。どうして?なぜ、ベシエール王国が亡国のドワイヤン公国に関与したがるの?そこの落ちぶれ公女に用があるわけ?」


 きかなくってもわかっている。


 他の国々同様、ドワイヤン公国が有するあらゆる資源や土壌や人材などを欲しているから。

 元公女であるわたしを前面に押し出せば、そこにいる民衆を操りやすくなるから。


「エリカ、きみのことが好きだからだ」

「はいいいい?」


 予想も夢想も出来ないとんでもない彼の答えに、お間抜けな反応しか出来なかった。


「きみは覚えていないだろうけど、おれたちは子どもの頃に会っている。まだドワイヤン公国が存在していた頃、きみはご両親、つまり公主夫妻に連れられてこの王国を訪れたことがあったんだ。そのとき、兄とおれはきみに会ったんだ」


 どれだけ思い出そうとしても、そんなことまったく思い出せない。


 レイに会ったことはもちろんのこと、このベシエール王国を訪れたことすら。


 ここに来たのは、はじめてのはずだったのに……。




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