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イヤな侍女にぶちまませ

「何をそんなところに突っ立っているの?」


 名も知らぬ侍女を睨みつけつつ、出来るだけ意地悪で居丈高な感じになるよう問いを叩きつけた。とはいえ、心臓はバクバクしている。


 彼女の顔に、一瞬驚きの色が浮かんですぐに消えた。


 うわぁ……。


 鷹みたいな目だけが光ってる。口角は、意地悪そうにつり上がっている。


 彼女、わたしを虐げる気満々ね。


「わたしの問いがきこえなかったの?あなた、名は?」


 もしかして、耳がきこえないの?


 何の反応もないから、そう考えざるを得ない。


「昨日、名乗りました。覚えていらっしゃらないんですか?」


 彼女はやっと口を開いた。冷笑を添えつつ、わたしに記憶力がないことをストレートに指摘してきた。


「覚えるも何も、そもそも声が小さくて聞こえなかったから分からないの。まぁいいわ、名無しさん。それでいいかしら?そこをどいてちょうだい。お腹が減っているから、食料の調達に行くところなの。頼んだところで、あたたかい朝食を運んでくる気なんて、これっぽっちもないでしょうから」


 顔の前に手を上げ、人差し指で親指の先端部分を弾いて「これっぽっちも」を示してやった。


 いいわよ、わたし。この調子よ。


 心臓がバクバクしているのを感じつつ、自分で自分を励ました。


 が、名も知らぬ侍女は、そんなわたしの努力をあざ笑うかのように冷笑を浮かべて突っ立ったままである。


「もう一度言うわ。そこをどきなさい」


 さらに頑張った。両目をひん剥き、低い声で恫喝した。


 彼女がわずかに怯んだ。


 やったわ。がんばった甲斐があった。


 その隙に彼女の横をすり抜け、廊下を颯爽と歩きはじめた。


 彼女の右肩にわたしの左肩がぶつかったけど、わざと謝らなかった。


 だって、わたしは悪女よ。王太子の悪妻よ。


 侍女ごときに謝ってなるものですか。


 って、王太子の悪妻?


 ちょっと素敵じゃない?


 その響きに感動を覚えた。


 そのとき、名も知らぬ侍女の舌打ちの音が背中にぶつかった。


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