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敵意溢れる侍女。名前は知らないんだけどね

 この寝台は当たりね。


 カーテンを開けっ放しにしていた為、朝の光がまともに顔にあたっていた。それで目が覚めてしまった。


 よく眠れたわ。久しぶりにまともな寝台で眠った気がする。


 起き上がってからテラスへと続くガラス扉を開けてみた。


 あらゆる情報がわたしを包み込む。


 朝の陽射し。小鳥たちのお喋り。庭園から漂ってくるバラの香り。朝の冷たい空気を含んだやさしい風。 

 全身が、それらに包み込まれた。


 両腕を空に思いっきり突き上げ、伸びをした。それから、深呼吸をした。


 寝間着を持っていないので、普段着がわりのシャツとズボンで眠った。


 そうだわ。どうせなんですもの、名ばかりの夫に寝間着やシャツやズボンを買わせようかしら。


 どうせダメでしょうけど、言ってみて損はないわね。


 そう決めた。その途端、お腹が悲鳴をあげはじめた。


 昨夜、婚儀の後のパーティーで何一つ口にすることが出来なかった。


 参加者全員が、わたしを見張っている気がしたからである。


 おそらく、わたし自身被害妄想が激しいか自意識過剰になっているんでしょうね。


 常にだれかの視線を感じた。それも、一人や二人じゃない。何十人単位だし、そのどれもがけっして友好的には感じられないものだった。


 そんな中では、何かをつまんだり飲んだりするのは難しいわよね。


 さあ、どうする?


 侍女は、いまだにやってこない。


 侍女だったら、フツーはわたしが起きていないかチェックをし、起きていたら挨拶に来て身繕いを手伝ったり、朝食はどうするかなんて尋ねるものよね。


 ああ、そうか。わたしの世話をする気がないのね。


 だったら、来るわけないわね。


 それなら、自分で何かしら食べ物を調達するしかないわ。


 というわけで、宮殿内を探検がてら食料を調達しに行くことにした。


 扉を開けたら、すぐ前に侍女が立っていた。


 昨日、挨拶っぽいことをしていたわたし専属の侍女に違いない。違いないというのは、彼女はずっとそっぽを向いていた。そのあからさまな態度に、わたしも視線を伏せたままにしていたからである。


 名前、なんだったっけ?


 それはともかく、彼女は扉の前に仁王立ちになり、わたしを無遠慮にながめまわしている。


 耳を扉にぴったりくっつけ、部屋の中の様子を窺っていたんでしょう。

 若く見せているつもりかしら?おさげが両肩上で踊っている。


 一瞬、その鷹みたいな目に怯みそうになった。だけど、心を奮い立たせた。



 これまでとは違う。おとなしく、従順にしていても虐げられ、バカにされてきた。「戦利品」として、より強き国の上流階級にたらいまわしにされてきたわたしだけど、一応人間ひとよ。


 少しだけでもちゃんと扱ってもらっても、バチは当たらないはずよ。


 いついつまでも泣き寝入りしていたくない。衣食住だけでもマシになるようにしなきゃ。その為には、強い心を持つのよ。


 最初が肝心よ。


 舐められちゃダメ。


 ガツンといくのよ。


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