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森で飢える

 大廊下から庭園へと出、大股で歩きつつ「よくやった」と自画自賛する。


 それにしても、最後の捨て台詞。あれは、小説に出てくる悪女そのものだったわ。


 陶酔してしまう。


 だけど、わめきすぎてよりいっそうお腹が減ってしまった。


 いずれにせよ、これで料理長が咎められたり責められたりはしないでしょう。


 すきっ腹を抱え、森の中のお気に入りの場所に行ってみた。


 大木の幹に背を預けて本を読みはじめたけど、お腹がすきすぎて気分が悪くなってきた。


 そうだわ。もっと奥へ行けば、もしかすると木の実とか果実とか何かあるかもしれない。ベリー類の茂みがあるかもしれない。


 決断したら即行動、がわたしのモットーである。


 本を閉じ、またそれらを抱えて森の奥へ向かった。


 薄暗い森の中をキョロキョロと見まわしつつ、奥へと入って行く。


 行けども行けども食料になるようなものは何もない。


 しかも、「どれだけ広いのよ」というくらいムダに広い。


 空腹も極限をこえると何も感じなくなってしまう。さすがに疲れてきた。


 ちょうどよさそうな陽だまりを見つけたので、そこで休憩をすることにした。


 ここでも木の幹に背中を預け、思いっきり伸びをした。


 膝上に置いている三冊の本は、とりあえずお尻の横に置いた。両足を前に投げ出し、もう一度伸びをした。


 瞼を閉じると、遠くや近くで小鳥たちがおしゃべりをしている。その囀りがまた、耳に心地よすぎる。


 まるで子守唄よね。




 ふわふわと漂っている感じは、まるで雲の上にいるよう。


 っていうよりかは、自分がふわふわ浮かんでいる。そうと気がついた瞬間、突風が起こった。飛ばされてしまう。


 どこか遠くの方に飛ばされ、そのまま戻れなくなる。なぜかそう直感し、同時に怖くなった。


 そのとき、何かがわたしの腕をつかんだ。手、である。一本の腕が伸びてきて、その手がわたしの腕をつかんだのだ。

 そのつかまれ方に覚えがある。どうしてかわからないけれど、そんな気がした。


 そう思っていると、腕がひっぱられた。わたしの体は、何かに包みこまれた。あたたかくてやわらかく、なによりやさしさに満ち溢れている。わたしを包み込んでいる物体は、そこだけ霧がかかったようにボーっとしていて何かわからない。


 それにしがみついてしまった。

 どこか遠くに飛ばされない為に。飛ばされて戻ってこれなくなったらイヤだから。


 そして、起こったときと同様突風は唐突に止んだ。


 体が地面にゆっくりと降りて行き、足が地を踏みしめた。


 そのときにはもう、わたしを抱きとめてくれた物体は消え去っていた。


 ハッと気がついた。


 眠っていた?


 穏やかな陽だまりが、いまでは赤く染まっている。


 ちょっと待ってよ。もしかして、夕方まで眠っていたってこと?


 愕然としてしまった。


 そのとき、左手に何かがあたった。そちらを見ると、バスケットが置いてある。上にかけてある布をとってみた。


 トマトと青りんご、それから白色のパンとバゲットが入っている。ご丁寧にパンにつけるジャムの瓶もある。さらには、水入りの瓶も入っている。


 レイだわ。


 すぐにわかった。


 ほぼ同時に、お尻のすぐ横に置いてある本と本の間にメモがはさんであることに気がついた。





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