表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/80

傲慢でオレ様って、いったい何様?

「殿下、不躾な視線だわ。ボロボロの服がそんなにめずらしいのかしら?失礼、こんな恰好で不快な思いをさせてしまったわね。なにせ寝込みを襲われたものだから、着替える暇もなかったの」


 いやらしい笑みを浮かべつつ、自分では嫌味を言ったつもりである。


 着替える暇もないっていうよりかは、まともな服がないから着替えたって見栄えはおなじだけど。


 わたしに嫌味を投げつけられても、彼の無表情さに変化はない。


 なんなの?

 さすがは「氷竜の貴公子」、と呼ばれるだけのことはあるわね。


 冷たい感じが半端じゃないわ。


「なぜそんなボロボロのシャツやズボンを着用している?」


 驚いた。彼は、そんなことを尋ねてきた。


「なにせ「戦利品妻」にすぎない存在で、契約妻にすらなれない女ですからね。つまり、買うお金がないのよ」


 情けない理由だけど、ムダにエラソーに胸を張って言ってみた。


 すこしは凄い理由みたいにきこえたかしら?


「なるほど。わかった」


 彼は一つうなずいた。


「理解した」

「はああああ?」


 もうううううっ!


 ほんと、いちいちムカつくのよ。


 傲慢だしオレ様だし、いったい何様?


 あ、ベシエール王国の王太子だったわね。


 自分で自分にツッコんでいる間に、彼は踵を返して歩きはじめた。扉へ向かって、である。


「ちょっ……」


 唖然としてしまった。


 わたしが固まっている中、彼はそのまま扉を開けて廊下へ出た。


 そして、それはゆっくり静かに閉じられた。


 はいいいい?


 いったいなに?

 

 わたしってば、彼の生霊でも見ていた?たったいまの訪問は、気のせいだったの?それとも、わたしは寝とぼけているの?


 いまのが実物だったとして、わたしに何の用事だったの?

 っていうか、そもそも何か用事があったわけ?


 それにしても、ほんっとにムカつく男ね。


 閉ざされた扉に向かって、親指を下に向けてしまった。



 その数日後、レリアが部屋の入り口に幾つもの箱を積んでいた。


 一瞬、危険物か何かかと身構えたが、そうではなかった。


 ドレスやシャツやブラウス、ズボンやスカートだった。それから、靴もあった。


 王太子から?

 夫であるはずの彼から、一応妻であるはずのわたしへの贈り物?


 ふーん。


 シンプルに驚いた。意外だと思った。


 が、残念なことにどれもこれもサイズが合わなかった。着用しようと思ったら、ほとんどが手直ししなければならない。


 靴にいたっては、ガバガバかきつきつだった。


 ガバガバは、何かを詰めればいいかもしれない。だけど、きつきつはどうしようもない。まさか、足の肉を削るわけにもいかないし。


 結論。


 これらは贈り物ではなく、嫌がらせのアイテムというわけね。


 その日から、夜なべ仕事が続いた。


 あー、もうっ。


 地味な嫌がらせはやめていただきたいわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ