表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/6

邂逅

99人が見向きもしなくても軽蔑しても、1人が喜んでくれればそれでいいので初投稿です。

涙と涎にまみれて震え苦しむ彼女は、一部の 性癖を持つものにはひどく刺さるあられもない有様であった。


決して、先程の魔力の行使による反動などというフィジカルでの脆弱さを抱えている訳では無い。ミレイアがメラと吐き捨てたのは 謙遜でもなくただの事実であり、彼女の労力としてはマッチに火をつける程度の些細なものである。


彼女、否、彼…ミレイアが、如月透であるが故の、拒絶反応。



「人の命を支えたかったはずなのに、なんで人を殺してるんだ…」




◆◆◆◆◆


「…農家!?」

「そうだよ(食い気味)」


あの時の智也の表情は今でも忘れられない。驚きの度合いで言ったら俺が異世界行くとか言い出した時よりもずっと大きかった。


それだけ、智也…含む大勢の人間にとって、農業というのが蔑まれた仕事だということだ。


「冗談だよね透。農業はお前じゃ役不足だって!もっとこう世の中を動かすような素敵なことができるはずだよ」

「智也…それは農業見下してるぜ?人間食べ物なきゃ死ぬんだよ?これより大切な仕事なんかあるか」

「そりゃそうだけどさ…」


智也がそう思うのも無理はない。他でもなく智也の実家が農家で、その苦しみを知っているからだ。自分たちの苦労努力を遥か下回る見返りと待遇、多くの街で働く人達は空調の効いた部屋でのびのびと仕事をして充実した生活を送る。

巷ではブラック企業だのサービス残業だの嘆く声も聞こえるが、そんなものは農業で生計を立てることに比べればほんの些細なことだ、ということも智也の家でよく畑の手伝いに行くから痛いほどよくわかる。


「じゃあ誰がやるのさ。お前は継がないんだろ?ほとんどの若者がそんな感じでほっぽり出してく…食べ物は輸入品があるから大丈夫って奴もいるけどさ、そうじゃないだろ」

「確かにそのとおりなんだけどさぁ…」

「そもそもさ、教育からしておかしいんだよ。例えば牧場体験とかあんな臭いところに連れてかれて、あんまりこうやりがい的ないい側面とか感じさせずに畜産への嫌悪感植え付けられるだろ?もうね、“農業なんて程度の低い、それしかすることの出来ない無能がさせられること”って扱いされてるみたいで腹立つんだよ」

「…それは……」

「否定できないよな?心当たりあるはずだから」


智也とて、農業に対して誇りを持っている部分もあるはずなんだ。

しかしそう思えない環境、そういう社会構成が成り立ってしまっている。

おやっさんだって本当は智也に継いでほしいに決まってる。けれどそれが智也の人生の妨げになってはならないと継ぐなと突き放している。こんな悲しいことってあるかよ。


「それにさ、智也の家のお米、本当に美味しんだよ。あんな素晴らしいものを育て上げるってほんとうに凄いことだよ」


「と…透……」


人の命を支えて、人を笑顔にできる。何よりも大切で尊い仕事。



「だから、俺は………」






◆◆◆◆◆



「欲するべきでないものを、欲してしまったから、罰があたったんだ」




農業スキルなどというものに頼ろうとしたから、命を育むということにズルをしようとしたから、命を奪う力《呪い》を得てしまったんだ。


きっと、醤油が1滴足りなかったのも、あの時女子学生が飛び出してきたのも、その結果7秒想定とずれて、異界の魔族の少女となってしまったのも、全て必然だったんだ。



求めすぎたから。



でも、後悔はしていない。

その破滅を含めて、これが俺の人生だ。

草ひとつ満足に育てられない、少しでも気を抜くと周囲の作物、生物が死に絶える、そんな存在自体が害悪…農家に最もふさわしくない農家の中の底辺、底辺の中の底辺。


それでいいじゃないか。


それでも、生きて、作物を育んで、収穫の有難みを味わって、それを施すことはできるのだから。




更地を歩いて数分、不自然に原型を留めている塹壕を見つけた。


感知される魔力反応から既に壊れているようだが、俺が遺した時計は最期まで役目を果たしてくれたみたいだ。


そして、その塹壕に潜んでいた人物…親愛なる幼馴染は、既に察知したかのように俺の目の前に現れた。



…が、流石に、先程のやり取りがあり情報的に俺だという判断材料があるとはいえ、それを体感として飲み込めるかは別の話のようである。


何せ智也の目の前にいる奴は、地球でも名が知れ渡っている有名人である…サタン的な方向性で




「た……ただいまー智也…あ…あははは」

「…は?…透……?」




そらこうなる。

というか咄嗟に透の名前が出てくる時点で相当すごい。


しかしそれも一瞬。

しばらく俺の顔色や仕草を見ているうちに、智也の記憶との辻褄が取れてきたようで、かつて俺によく向けていたやわらかい表情になった。


それからは、お互い自然に言葉が出た。





「おかえり、透」

「待たせて悪かったな。帰ろうか」

ここまでまともな女性キャラゼロ。ハーレム、ざまぁ、ストレスフリ要素無し。(これじゃあ見向きもされなくても)しょうがないね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ