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人間兵器、自由を願う  作者: 胡麻かるび
第1章「人間兵器、自由を願う」
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34話 五号ケア


 五号の意地悪さを復習したところで本題に戻る。

 他にも聞きたい事は山ほどあった。


「昔話は願ってもない事だが、それより俺は――」

「アークヴィランを探したいそうね」


 DBが言葉を被せてきた。


「マウラとの会話を聞いたわ」

「それなら話が早い。データベースは何処だ?」

「ここよ」


 DBは得意げに自分を指差した。


「はぁ?」

「私が、アークヴィランDB(データベース)

「マジで言ってんのか」

「だからDBって名乗っているの」


 わかりやすいでしょ、と不敵に笑うDB。

 元が治癒術師という役割だったのに今ではそんな経歴と一切関係ないことをしていた。謎めいたヤツだ。


「さ、知りたい情報は何?」

「待て。まず今の文明で、なぜお前みたいな個人でアークヴィランの情報を管理してんだ? 効率悪いな」


 DB構築の目的は魔族や精霊族をアークヴィランの脅威から守る為だと門番のマウラも言っていた。

 世界中のネットワークに繋げた方が利便性が高い。


「問題ない。私自身がネットワークに繋がっている」

「……なんだって?」


 人間兵器と揶揄された俺たちだ。

 しかし、その形態はいよいよ人間を辞めている。


「私はもう生身じゃない。もちろん私の記憶中枢はローカライズされているから保護されるけど、アークヴィランに関する情報は、いつでも世界中からロードできる」


 DBの背中からは紐が伸びて台座と繋がっていた。

 それがネットワークに繋げるケーブルか。

 視線に気づいたDBがケーブルを取った


「あぁこれ? これは昔の名残り。今は無線で繋がるから別にどこに出歩いても関係ないのだけどね」

「もはや人間兵器というより機械兵器だな……」

「ふふふふ」


 DBは邪悪そうな笑みを浮かべた。

 素顔が無垢なだけに笑い方が恐ろしく似合わない。


「貴方は昔から変わらないわね」

「どういう意味だ?」

「鈍感なところ。人間兵器をやめたのは、なにも私だけじゃない。他にもいるわ」


 七号(ヴェノム)はまだ普通だった。

 その存在意義は、勇者である当時と異なり、アークヴィランのハンターに成り代わっていたが。


 他はどうだろうか。

 二号(アーチェ)もアークヴィラン狩りをしているらしい。

 三号(シール)は行方不明。

 四号(パペット)六号(メイガス)は死んだ。


「この先も、思いがけない形で旧友と再会するかもしれない」

「今がまさにそれだぞ」

「光栄ね。再会は喜ばしいことよ」


 何が光栄だ。

 言葉の解釈がひねくれている。


「お前はシールの居場所を知らないか?」

「……」


 饒舌だったDBが一瞬、黙った。

 笑顔も消えた。


「やっぱり何か知ってるな?」


 DBは虚空を眺めている。

 目は俺に向けているのに焦点が合わない。

 何かに思いを巡らせているようだ。


「私が話すことを、彼女も望まない気がする……」

「……」


 それ以上は喋らなかった。

 不信感が募る。


「シールの肩を持つんだな?」

「一つ言えることは貴方が貴方らしく生きることを、彼女も望んでいるということ」

「……?」


 俺は単純にシールとの約束を果たしたいだけだ。

 あるいは、約束が果たされた(・・・・・)かどうか確認できればいい。

 このままじゃ心残りだから。  

 DB――ケアの言い方は、まるでシールが既に俺と接触して、何か目的をもって動いているような言い方だ。


「そんな事より、貴方は人を待たせてるのよね?」


 DBが気づいたように俺に視線を合わせた。

 話を逸らしやがった。


「よく気づいたな」

「橋までなら映像記録が頭に保存される仕様」

「……油断も隙もねえ」


 DBの言う通りだ。

 シズクから早く戻ってほしいとお願いされた。

 今でもマモルと一緒で嫌がってるかもしれない。


「まぁいい。他は、またここにくれば話せるか」

「その時を楽しみにしているわ」

「じゃあ、アークヴィランの事だが――」


 遠回りしたが、ようやくアークヴィランの話だ。

 セイレーンの新たな棲み処を作る為に、砂漠すら海に変えてしまうような能力を持つアークヴィラン。

 DBが該当する情報を持っていればいいな。



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