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人間兵器、自由を願う  作者: 胡麻かるび
第1章「人間兵器、自由を願う」
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32話 西区、大聖堂と旧騎士団


 ヒンダに教えてもらった待ち合わせ場所に向かう。

 人は多いが、王都のメインストリート中心の噴水と時計台がある分かりやすい場所だった。

 雑踏を眺めているとシズクとマモルがやってきた。


「二人とも悪かった」

「ソードさん、どちらに行っていたのですか?」

「都会の洗礼を受けていてな……」

「洗礼?」


 立ち話で話す気にもなれない。

 適当に誤魔化し、さぁ行こうぜ、と二人を促す。


「あれ? ヒンダは?」


 マモルが言った。


「ヒンダはグレイス座の劇場を見学したいんだと。さっきたまたま劇場の近くで会った」

「アークヴィラン・データベースはパスですか」

「まぁそういう事になる」

「そうですか……」


 シズクが残念そうな顔をしていた。


「なんか不都合でもあるのか?」

「いえ、特に。ただ……」


 シズクは俺の袖を引っ張って顔を近づけた。

 内緒話をしたいらしい。


「アークヴィランDBにはアクセス制限があります」

「そういう話だったな」

「ソードさんは多分、端末の場所へ入場できます。でも私は……」


 シズクはちらちらとマモルを見ている。

 この雰囲気でこの話を語るという事は――。


「なるほど。理解した」


 またマモルと二人きりになるのが嫌なようだ。

 ヒンダが居れば二人きりにはならなかった。

 そこまで機転が利かなかったな。


「手早く調べてすぐ戻る」

「お願いします」


 シズクは少し安心したようだった。

 ちょっとした事でも二人になるのは嫌なんだな。

 それもそれでマモルが可哀想に思う。



 シズクの案内に従い、王都の西区へ向かう。

 そこは中央区や南区のような人の賑わい、雑踏がなくなり、植生も目立つようになった。

 都会の一角に突然、森林や滝、川が現れた感じだ。

 清涼感がある。

 俺としてはこっちの方が居心地が良い。


「この西区というエリアは自然保護区に指定している為、なるべく景観は乱さず、植林にも積極的です」

「へぇ……」


 記憶にある王都も、こんな区画があった気がする。

 きょろきょろと周囲を見渡す俺にシズクが気を利かせてガイドを務めてくれた。しばらく道を進むと、森林区を抜けた先に河川と大きな橋が現れた。


 ――その先に白銀の塔と建物が目に飛び込む。



「そこにアークヴィランDBがあります。大聖堂です」

「タルトレア大聖堂……」


 覚えている。

 5000年前も何度か俺も立ち寄った。

 当時の聖堂よりも建物は肥大化していた。


「情報端末って聞いてたからイメージと違うな」

「アークヴィランDBは2000年以上前から旧聖堂騎士団が情報を集積しています。昔はアナログだったので、大聖堂に保管していたそうですよ。そのまま情報端末も設置されることになりました」


 さすが歴史オタクのシズク・タイム。

 詳しいな。


「シズクちゃん、すごいね。さすがて巫女の卵!」


 マモルも褒めたが、シズクは嫌そうに目を伏せた。

 巫女の卵という言葉が余計だったのかもしれない。

 俺と同じく自由を好むシズクにとって、運命を決められたような発言を嫌がるところがある。


 同じ男として、マモルにもそれとなく女の子に嫌がられない接し方を教えてやらなきゃな。

 無意識に想い人に嫌われるのは不憫だ。


「旧聖堂騎士団ってタルト聖堂騎士団のことか」

「はい。今では解体された騎士団ですが」


 やはり解体されていたか。

 現代にそぐわないもんな……。

 だとしたら、俺が目覚めさせた、あの巫女と神官を名乗る連中はフェイク。あいつらはわざわざ仮装して俺を騙したんだ。



「大聖堂はブロワール河川で隔離されていて、この大橋を渡らなければ入ることはできません。渡るときに検閲が入るのです」


 アクセス制限って物理的なものなのか。

 変な話だ。

 現代文明はまだ勉強中だが、それこそ情報端末なら何処に設置されても、認証キーでブロックすればいいんじゃないだろうか。

 物理的に遮ることで足を遠のかせる目的か?


「俺ならアクセスできるんだよな……」

「おそらく」


 プリマローズがいれば間違いなくアクセスできた。

 でも頑なに嫌がられたせいで、俺一人でも閲覧が認められるかどうかの確証がない。


「考えても仕方ない。行ってくる」

「お願いします」


 シズクはまたしてもその言葉を向けた。

 セイレーンを救うためのアークヴィラン探しだ。

 別にシズクからお願いされる事じゃないが、お願いします、と敢えて言ってきたのは「早く戻ってきてほしい」の念押しだ。



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