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人間兵器、自由を願う  作者: 胡麻かるび
第1章「人間兵器、自由を願う」
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28話 ゲーセンの誘惑


 ヒンダの道案内に従い、王都の道を歩いていく。


 人、人、人。とにかく人だらけ。

 雑踏と背の高い建物の合間を歩く。

 こんなに天気が悪いのに、よく出歩こうと思うな。


「ソード。田舎者丸出しな雰囲気はやめてよね」

「へいへい。これでいいか?」

「それと逸れたら置いてくから」


 ヒンダの嫌味を相変わらずだった。

 だが、色んなものに目移りしてしまうのは事実。

 注意も虚しく、珍しい店の数々に俺もつい足を止めていた。


 例えば、大量の薄い箱が置いてある店。

 ぱっと見、品物は本のようにも見える。

 でもページがなく何かのケースのようだ。

 表紙には色々な似顔絵が描かれ、絵本のような見た目でもある。


 店のポップに「新作ゲーム」と掲示されていた。

 これがプリマローズが大好きなゲームか。

 こんな薄っぺらさで、あんな画面に表示される電脳魔術の術式が組まれているのだから大したものだ。


 これを利用すれば洗脳魔術を内包させ、宣教テロでも起こせそうだが、その辺りは大丈夫だよな?

 これだけの数があるとありそうな気がするが。



 さらに隣の店はもっと意味がわからない。

 ゲームが実際にその場でできるような店だった。

 プリマローズがやっていた画面に映すようなゲームとはまた違う模型も設置された施設だ。


 体感型のゲーム施設なのか?

 店頭には人型の模型が腕を突き出して佇んでいる。

 模型の隣にはモニターもあり、点数が何点だとかプレイヤー名が何とかとか成績が羅列していた。


「なんだこりゃ」


 俺がフラフラ近づいていくと、店員のような男が盛大に拍手しながら出てきた。


「いらっしゃぁせえーーーい!」

「ん? なんだ?」

「お兄さん、この筐体に興味があるようですねぇ!」

「いや、何なのか分からなくて近寄っただけだ」

「いいでしょう。ご説明いたします!」


 店員は祭りのようなテンションで接してきた。

 俺の袖を引っ張り、機械の近くまで引き連れると、手で機械の場所とプレイ方法を示しながら意気揚々と喋る。


「こちらの筐体は『Go! Go! 鉄腕ゴーレム』と言います。この強靭な腕をご覧ください。ゴーレム君はその剛腕で、数多の挑戦者との腕相撲に勝利し続けてきました」


 腕相撲か。

 腕を組んで力比べするあのお遊びだな。

 それなら俺でも知っている。


「こちらのモニターに挑戦者の名前とスコアが並んでます。ゴーレム君に勝利した挑戦者は今までいませんが、その腕力を測ってランキングにしてます!」

「要するにこいつと腕相撲で戦う遊びってことか」

「その通りです。挑戦いたしますか?」


 店員は拡声器を突き出し、俺の返答を待っている。


 面白そうだ。

 俺の知る時代にはなかった。力比べも興味ある。

 腕っぷしには自信があるし。


「ちなみに、お客様がゴーレム君に勝利できた場合、賞金と、あの超一流ゲーム会社『メガティア』の新作オンラインゲーム『パンテオン・リベンジェス・オンライン』の特注装備が手に入ります」

「……ゲームは要らないけど金は欲しい」

「では挑戦していただけますね?」

「もちろんだ」


 拳をバキバキと鳴らして準備体操した。

 こんな模型に負ける気がしない。


 店員の指示に従って腕を組まされた。

 肘を立てる台座も踏ん張る為のハンドルもある。

 この条件なら十分に力を発揮できそうだ。



「それでは、レディ~~~~!」


 店員が大声をあげて筐体のスイッチを押した。

 すると、ゴーレム君と名付けられた模型の目が赤く光り輝き、魔物のような凶悪なオーラを放った。


「うぉ!?」


 ゴーレム君の全身に魔力が張り巡らされた。

 ただの人形のそれとは動力源が違う。


 直後――。


 物凄い力が俺の右腕にかかった。

 本領発揮か。


「なるほど」


 ナメていたが、子ども騙しの遊びじゃない。

 魔力を動力源とした"人形術"と"魔術"の併せ技。


「ガラクタが。元勇者の本気をなめんなよ」


 それなら本気で応えてやろう。



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