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七話 序章その七:生徒会長は高級肉がお好き

前回までの『おれ天』!!

KY。

 お久しぶりです。

 分かりませんか? 私です。神テトに仕事を押し付けられた、元ニートで人間の私です。

 私が死んで半年、つまり神の仕事を受け継いで半年となるわけですが、自分が置かれた状況にも少し慣れてきたところです。

 神テトの悪名は天界に轟くところを知らず、天使たちは「貴方は真面目で良かった」と口々にそう言います。

 ですが、その評価も束の間。

 私の仕事に少しずつ不備が生じてきたのです。

 数百人の天使たちが手伝ってくれるとは言え、所詮彼らは神の飛ばした指示に従って仕事をするだけ。世界200弱の国と80億弱の人間すべての一分一秒を神が設定しなければ世界は回らなかったのです。

 少しサボれば瞬く間に矛盾がはびこり世界の秩序が乱されてしまいます。

 『世界を創造し続ける』ことがこれほど緻密で膨大なものだったとは。

 そして、戸惑う私に天使たちは言うのです。


「テト様がどれだけ優れた神であったか」


「所詮は前世で何もなしえなかった人の身。神の真似事も出来ぬ」


 と。

 最初の数日は噂話程度でしたが、日を増すごとにそれは大きくなり神を受け継いで六日も経てば周囲はたちまち私への批判に溢れました。

 そして、七日目に私は耐えきれず、


「そこまで言うのなら貴方がたが神テトを探し出せば良いではありませんかッ!? ただ無いものをばかりを羨むだけではなく、それを手に入れんと自ら行動すればよろしい。それのためなら責務などを投げ出して構いません。さぁ、行くのですッ‼」


 何と皮肉なことか。

 神テトが休日とした新しい世界の七日目に、私は天使たちに命じたのです。

 約半数の天使たちが世界中に繰り出し、かつての主である神テトの捜索に向かいました。

 私が慣れたのは、賑わいが半分となった天界の寂しさなのです。




 *

 そして半年が経ち、私の故郷である日本で動きがありました。

 神テトが力を分けた最初の天使、カナフ・バックドラフトの戦闘を感知したのです。

 戦闘と一言で言っても、それはごく短時間でそれに対抗したのがはっきりしていなかったので、

 何かの誤りということになりましたが、天界で私だけが神テトの存在を確信していました。

 暫定的に私が現役の神であり半数の天使しか天界にいない以上、迂闊に降りるわけにもいきません。

 そこで、使者を送ることにしました。



「それで、あたしを呼びつけたわけですカ」


 場所は日本、高級焼肉店叙々苑のとある個室。

 いるのは店に場違いな少女だけ。


『ええそうです。何か疑問でも?』


「いヤ。なんであたしなのかなぁ、って思ってましテ。他にも優秀な天使もいるでしょうニ」


『単に件の土地に一番近かったのが貴女だったからですよ。いやだってなら別に良いんです。その代わりこれは食べられませんが。おいしいですよ、ここのお肉は。学生の時に一度行ったきりですが、一度食べたら癖になります』


 個室にいるのは少女だけ。

 ですが、そこには私の声も存在しています。

 テーブルの並べてある色とりどりの高級肉は独りでに網に飛びこみ、それぞれ最高のタイミングで焼き上がり少女の皿に盛りつけられてゆきます。

 それに釘付けになる少女の様子は、滑稽極まるものでした。


「神テトを欺くことへの報酬が、高級焼肉ですカ?」


 鼻声で肉にかぶりつきながらの一言。


『欺く? 人聞きの悪いことを。私は彼に報いを受けて欲しいのですよ』


「報イ?」


『そう。自らの責任を放り出し、右も左も分からぬ人間を自分の都合で後釜に仕立て上げた。その無責任に対して報いを受けて欲しいのです。いや、受けるべきなのです』


 私の話を聞きながら、少女はさらに乗せられる肉を次々に口の中へと放り込んでゆきます。


「そうは仰いますが、テト様は元とはいえ神。全知全能の力を持っているチートの権化でス。天使にもなれないあたしにどうしろとか言われてモ…………」


『何を自惚れてるんですか、貴女は。テトに文字通りの天罰を与えるのは私の仕事。貴女は実際テトがどんな力を持っているのかを示してくれればそれで良いのです』


「だから、テト様は全知全能と言ったでしょウ。あたしにはどうすることも、あーーーー! あたしのお肉!」


 少女は文句を垂れていましたが、目の前の高級役肉を取り上げればこの通り。さっきから肉しか見えていない無様な姿に早変わり。


『もちろん広範囲の催眠をかけて貴女の所属している高校にテトを通わせます。担当の天使にも気づかれない特別製のを、です。貴女はやれることをやるだけ。私に下ごしらえのすんだメインディッシュを運んできてくれると約束するのなら、残りのお肉をあげましょう』


「やりまス。この小鳥遊ヴァリ、全力で取り組ませていただきまス」


 残念。カッコ良い即答も、焦点が肉に向かっては絵にもなりません。


『それでは、あとはよろしく…………。すいません、一つ質問して良いですか?』


「えェ」


『その鼻声……、もし慢性の鼻炎持ちなら良い医者を紹介しましょうか? 何だったら薬なりティッシュなり用意しますが。その所為で何と言うか……、間抜けに見えますので』


「いエ。地声なんで、お構いなク」


『そうですか、ではよろしく。あぁ、成功すればまた叙々苑に招待しましょう。任務成功を祝って盛大に、ね』


「マジですカッ!? 頑張りまスッ!」


 そう言って少女、小鳥遊ヴァリという天使もどきは足軽に去ってゆくのでした。



 ――――そうして、物語(せかい)は動き出すのです。


最後まで読んでくれてありがとうございます! 

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